サラリーマンのちょっと一言
 
車の乗り換え顛末記(その2) 新車選び
 <掲載 2002. 7.25>
 
 ジムニーが不調になったので、新車に乗り換えることに決断した。さて、次はどんな車に乗ろうか。今までは一人旅が多かったが、これからは親しい友人や両親を連れての旅行などもしてみたい。それにはこれまでのジムニーのような狭い車ではなく、ある程度の居住性が欲しい。2、3人の同乗者を乗せてエアコンをつけ、アップダウンの多い中央高速を走ってもパワー不足のないそこそこのエンジンを搭載し、そこそこの大きさの車である。それに人を同乗させるのであれば、それなりに安全性にも配慮したいものだ。衝突事故などを考えた場合、やはり車体が大きい方が有利である。

 かといって、これまでのような未舗装林道や険しい峠道などを訪れる旅を、やめるという訳にはいかない。世の中には大きな4WD車が多く走っているが、あれで日本の林道が走れるのだろうか。思い起こせば、ジムニーでなければ帰って来れなかったのではないかという経験がいくつかある。狭く険しい道で突如行き止りとなり、回転を余儀なくされる。そんな時、小さなジムニーでよかったと何度思ったことか。
 
 居住性と林道走行。二律背反の希望が交錯し、なかなか車のイメージを絞り込めない。いろいろ考えた末、車選びの基準として次に示す「車選び6か条」を定めるに至ったのだった。

 
第一条 車長は4m未満であること
 
 あまり大きいと取り回しが悪い。かといってこれまでの軽自動車の規格3.6m以下(ちょっと前までは3.5m以下)と大して変わらないのでは詰まらない。そこで目安として「車長は4m未満」ということにした。
 この数値には理由がある。4mを境にフェリー料金が異なるのである。どのフェリー会社も4m未満と5m未満などのクラス設定があり、4m未満の車は5m未満より約2割程度、航送料金が安くなっている。4m未満と言えば当然軽自動車も含まれる訳で、軽自動車と同じ料金というのは魅力的ではないか。フェリーなど、そうちょくちょく使う物ではなく、実質的にはあまり節約にはならないかもしれない。しかし、車選びの判断基準として、「4m未満」ということにしたのだ。
 
第ニ条 4ドアであること
 
 これまではほとんど自分1人か、非常にたまに助手席に人を乗せる程度だった。それなら2ドアで充分だ。しかし、これからは年老いた両親を乗せてのんびりと旅行にでも連れて行き、親孝行の真似事でもしようかと、柄にもなく殊勝なことを考えているのだ。それには乗り降りなどの点で断然4ドアが便利である。また、4ドアともなれば後部座席の余裕も十分とってある筈だ。前項の約4mという車長と合わせて、3人程度がまあまあゆったり乗れ、且つ、その人数分の旅行カバンなどが積めるスペースを期待しているのだ。
 
第三条 排気量は1,500cc以下であること
 
 1,500ccを境に税金が僅かだが違う。燃費も気になるところ。2,000cc以上の3ナンバークラスなんて一生乗るもんじゃないと思っている。これまで660ccだったんだから、その倍の1,300程度もあれば十分であろう。
 
第四条 スペアタイヤをバックドアに装備していること
 
 最近の車のスペアタイヤはトランクの下の方に緊急用タイヤをこっそり忍ばせているケースが多いらしい。長い旅に出掛けると、その最中でのパンクはつきものだ。そんな時にあの幅の細い緊急用タイヤで旅を続けるのは、いかにも心細い話しである。
 
 ジムニーの場合は正規のスペアタイヤが1本、バックドアの外に付いている。更にその上に、パンクのリペアキットと瞬間パンク修理材を数本、常に積んでおいた。
 それだけでも心配なので、一時期はホイールを外したタイヤを荷室に積んで旅に出掛けたことがある。ジムニーが履いているタイヤは、175/80R16というちょっと特殊なサイズだ。ジムニー以外の車種では使われていないのではないかと思う。その為、一般的な自動車修理工場やオートバックスなどの車用品店にはまず在庫していない。旅先で直ぐに手に入れようとしても困難なのである。そこでホイールなしのタイヤを用意したのだ。
 しかし、さすがにタイヤ一本荷室につむと、狭いジムニーが尚更狭くてしょうがない。それにゴムのにおいが車内に立ち込めて臭いのだ。これは直ぐにやめた。
 
 車屋にいろいろ聞いてみたが、正規のタイヤをスペアとして積んでいるのは、バックドアの外側に取り付けるタイプがほとんどのようである。今までのジムニーもそうだったので、その方が使い慣れてもいる。
 
第五条 オートマで4WDであること
 
 この条件だけなら、RV的な車なら必ずマッチしたグレードを揃えている筈だ。長年マニュアルに親しんできたが、ここらでオートマに乗り換えて楽をしようと思うのである。それにオートマしか運転できない友人に、運転を代わってもらうこともできるという訳だ。
 
 これまでのジムニーは、一般のマニュアル車が乗りこなせる者でも、乗り慣れないと非常に操り難い車だった。私でもまともにローギヤから発進させるとギクシャクした挙動になる。2速発進で半クラッチをうまく使った方が、よっぽど滑らかなスタートができるのだ。こうした勘所を知らない者にハンドルを預けると、体が前後に大きく揺らされてしまう。疲れていても自分で運転した方がいいくらいなものある。そこで、誰でも間違いなく運転できるオートマチック・トランスミッションにしようと思う。
 
 それと、やっぱり4WDは欠かせない。パートタイムでもフルタイムでもかまわない。未舗装林道などを走るのに、必ず4WDが必要かと言うと、全然そうではない。これまでの経験では、ゆっくり走っている限り、4WDの必要性を感じることなどほとんどないのだ。しかし、時々現れるぬかるみや特に雪道では4WDは頼りになる。これからも険しい道は走り続けたいので4WDは必須となる。
 
第六条 最低地上高が200mm程度あること
 
 4WDであるのと同時に悪路走破性に大きく影響するのは、この最低地上高がどれだけあるかである。エンジンパワーなどは全く必要ない。ジムニーはターボエンジンを積んでいるが、それが役立つのは高速道路などでのことで、未舗装林道なんかではエンジン回転2,000rpmちょっとの低速で回して、のんびり走ればそれで十分なのだ。
 
 それに対し最低地上高は重要である。深い溝が掘れた道や大きな石がゴロゴロした道、段差のある道。人間なら子供でも簡単に超えられるような障害でも、車にとっては難関になるのだ。そのハードルを少しでも低くするには、相対的に車が高くなればいいのである。
 
 最低地上高と関係し、アプローチアングルやランプブレークオーバーアングル、デパーチャアングルなども考慮すべき点ではあるが、あまり数値が多すぎて覚えられない。
 
 さて、方向性は決まったが、世の中に星の数ほどある車の中から、どうやって上記の仕様にマッチした車を見つけるかだ。ジムニーについてだけはあれこれいろいろと詳しい積りだが、世間にどんな車が走っているのか、今どんな車が人気なのかといったことには無頓着なのである。旅の道具として自分の車を使いこなそうと思いはするが、車そのものには全然関心がないのだ。
 
 雑誌やその他のメディアを使った車選びの方法はあるだろうが、まず手っ取り早く街中などで見掛けた車の見た目の外観から候補を選ぶことにした。これなんかどうかと思う車を見掛けたら、そのメーカーと車種を覚えておく。ただ、あまり目が良くないので、なかなか覚えられない。駐車場に停まっている車など、近寄ってじろじろ見ると、あやしい人物と間違われかねない。慎重に人目を避けて見るようにした(尚更、あやしい)。その結果、次の車に白羽の矢が立った。
 
 〇ホンダのHR-VとCR-V
 〇トヨタのRAV4
 〇三菱のパジェロイオ
 
 幸い会社帰りの道沿いには、各自動車会社のディーラーが軒を連ねているので、カタログの入手は容易であった。カタログのデータをチェックしたり、ディーラーで現物を見たり触ったり座ったりした。
 
 HR-Vは全長3,995と仕様ぴったりである。しかし、後ろにスペアタイヤが付いてない。
 
 CR-Vは最低地上高205mmと最強である。しかし、運転席に座って後ろを振り返ったら、リアウインドが遥か彼方に見えるのだ。こんなでかい車運転できる訳がない。しかも、3ナンバーという。とんでもない話しだ。
 
 RAV4の5ドアはかなりいい線をいっている。しかし、全長4,145mと僅かに4mをオーバーしているのが悔やまれる。
 
 パジェロイオは三菱だけあってオフロード性能を高々に謳っている。全く申し分ない。全長も3,975と願ったり叶ったりだ。勿論、バックドアにタイヤを背負っている。何から何までぴったりなのである。ただ、排気量が2,000ccである。車重も1390Kgあり、ちょっと大きいかなという気がする。他の候補に比べれば、断然パジェロイオなのだが、いまいち決断がつかない。
 
 頭を悩ましている折、友人が「キャミ」ではどうかと言う。近所にその車に乗っている者がいるらしく、よく駐車場で見掛けるそうだ。どうもトヨタの車らしいが、そんな車聞いたことがないし、街中で見かけこともない。一体「キャミ」とはどんな車なんだ。
 
 (つづく)
 
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