サラリーマン野宿旅
林道はあまり車は通らない。未舗装の林道なら尚更である。ましてや何処にも通じていない行き止まりの林道なら、だーれも来ない。野宿地を探すのなら、まずそうした行き止まりの林道を探すのだ。
8月15日、岐阜県は春日村を徘徊していた。春日村は滋賀県との県境を成す村で極めて山深い。東の揖斐川町より粕川沿いの県道で来るか、南の関ヶ原町より岩手峠を越えて来るかの2通りしか春日村へ入る手段はない。
この山深い村でどこか良い野宿地を探そうとしていた。むらの中心地美束よる北へ向かって進む。この先はどの道を行っても行き止まりである。適当に道を選ぶ。やや焦っていた。もうキャンプ場でもあればそこでよいと思っていた。
ところがこういう時に限ってうまく出くわさない。その内遂に行き止まりとなった。険しい林道の行き止まりならまだよいのだが、りっぱな舗装路のバリケードによる行き止まりである。途中にめぼしい林道も分岐していなかった。延々と引き返す。
今度は逆に南へ向かった。どうせ通る積りでいた岩手峠を目指した。川合より粕川の支流、長谷川沿いの道を溯る。道は川の横にぴったり張り付いたやたらと狭く寂しい道となる。日は山陰に隠れ辺りは暗く心細いかぎりだ。このまま峠を越えてしまうのかと思っていると、峠の数Km手前右に林道が分岐している。起点から既に未舗装だ。地図を調べても載っていない。当然何処にも通じていない行き止まりの林道である。
しかし林道沿いにいい場所がない。林道はあっけなく赤いゲートで通行止となった。ゲート前は車がUターンするだけのスペースがある。そこにテントを張った。今夜はゲートとテントが通行止をする。
名も知らぬ林道の一夜は明けた。空が明るくなっても谷には直ぐには日は差さない。最初西の山際にあたっていた日が、暫くしてようやく谷まで下りて来た。その中でのんびり旅支度をする。日の光は有り難いものだ。これから林道を後に岩手峠を越えて一路関ヶ原町を目指すとする。