サラリーマン野宿旅

旅で出くわす動物

 
 普段は人間以外の動物に接する機会がほとんどない。犬や猫、その他なんのペットも飼っていないし(ゴキブリやクモは勝手に住み着いているが)、動物園などもこの十年くらい行ったことがない。全く動物に関心がない(人間の♀は別)生活をしているが、野宿旅に出掛けている時は否応無しに関わりを持つことがある。
<初掲載 1997.11.10> <修正 2001. 3. 4>
 
目 次
 
野良犬      きつね      その他
 
 


 
 
野良犬
 
 町中では散歩をさせてもらっている従順な犬を見掛けるが、山中で出くわす野良犬は野生的である。
 
 
黒犬 何か黒いものがいる!!
びっくりして窓の外を見るとこいつがいた。不細工だが愛嬌がある。

 ある旅の途中、コンビニで昼食の弁当を買い、どこか景色のいい所で食べようと車を走らせながら適当な場所を物色していた。やっと前沢ダム湖(岐阜県御嵩町)の標識が目に止まり、湖面が見渡せる岸辺に車を停めた時は、チンしてもらった弁当も冷え切っていた。フロントガラス越しの景色を眺めながら箸を取る。

 暫くして全開にした窓の直ぐ側にいつのまにか黒い物体がいるのに気付き、驚いてシートの上で飛び上がってしまった。よく見るとただの黒い犬である。弁当を食べているこちらをじっと見つめている。仕方がないので弁当のおかずを少し落としてやると、ぺろりと食べて尚もまたじっと見上げている。これ以上弁当はやれない。カバンの中を漁って食べかけの菓子を今度は遠くに放り投げる。それを取りに行っている間に弁当を食べる。またやって来たらまた菓子を放り投げ、それを繰り返した。やたらとせわしない昼食であった。

 弁当が済み、湖畔を出発する時にしばしこちらを眺めていたが、礼も言わずぷいと何処かへ去っていった。

白犬 この白犬はやや人間不信。手から餌を取ろうとはしなかった。

 四国には私の経験上野良犬が多い。あちこちで見掛ける。

 徳島県鳴門市鳴門道路(以前は有料だった。これからはただでいい眺めが見られる)を走行中、ちょっと電話を掛けようと電話ボックスの脇に車を停めて電話番号を調べていると、何処からともなく白犬が近付いて来た。しかし2〜3m以内には絶対に近寄ろうとはしない。少し離れた所からこちらをうかがっている。ソーセージのビニール包装をむいて窓から差し出す。関心を示すが取ろうとはしない。放り投げると拾ってわざわざ遠くに持っていって食べる。全く可愛げがない。かなり人間不信に陥っているようだ。人からいやな目に合わされたことがあるのだろうか。しかしこんな町中では餌を人間に依存しなければ生きていけない。哀れである。

子犬 生まれて以来、人間に馴れたことがない子犬。
目立たない所に隠れている。どうやって餌を得ているのだろうか。

 こちらも四国は香川県白鳥町国道318号の鵜の田尾トンネル手前に駐車場がある。ここより旧道の鵜峠への道が分岐している。この駐車場を母子の野良犬が溜まり場としていた。母犬は人に飼われたことがあるのだろうか人によくなついていて、ソーセージ(常温で保存がきくのでソーセージは常備している。しかし自分で食べるより野良犬の餌になることが多い)のビニール包装を取ろうとしている横から口を出して来て食べようとする。一方小犬は建物の陰に隠れて寄ってこようとはしない。こちらから近づくと建物の反対側に逃げていってしまった。尚も追いかけると唸り声を上げて威嚇の態勢をとる。全く人間に慣れていない。仕方なく餌を小犬が元いた場所に置いたが、それも母犬がやってきて食べてしまった。自分の子の餌まで食べるとは不届きな親である。生まれてこのかた人間に慣れたことがない小犬の将来が思いやられる。

 野良犬のなかでも完全に野性化してしまったいわゆる野犬は恐ろしい。

 これも四国は愛媛県伊予三島市で猿田白髪林道を目指す途中に日が傾き、その日の野宿場所を求めて名も知らぬ行止りの林道に入り込んだ。暫くして道の脇から5〜6匹の犬の集団が現われ、車を取り囲んで追い始めた。黒や白や、大小まちまちの犬たちである。しかし車を停めてソーセージを差し出そうなどという気は起きなかった。とにかくすごい形相で追いかけて来るのだ。牙をむき出してしきりに吠え立てる。車に乗っているからよいものの、歩いていて襲われたらたまったものではない。どうにか振り切ったがその晩その近くで野宿するわけにはいかない。ずっと離れたところに野宿地を探す羽目になった。

 夜中にテントのなかで聞く野犬の遠吠えは何度聞いても気持ちの良いものではない。隣近所の飼い犬が吠えているのとは訳が違う。 

 
 
 

猿 この猿は人を見てもあまり驚かなかった。
しばしこちらをうかがっていたので写真を撮る暇があった。

 猿(日本猿)は案外よく見かける。東京近郊でも例えば五日市町(現あきる野市)の盆堀林道の頂上、入山峠近くでオスの立派な猿が堂々と林道を歩いているのに出くわしたことがある。車でのんびりゆっくり走っていると、あまり音を立てずに済むので、猿が逃げずにいるから見掛ける率が高くなるのだ。オートバイで大きなエンジン音を上げてかっ飛ばしていてはみんな逃げてしまう。

 猿だけではない。シカやたぬきなども静かに林道を走っていれば、曲がり角の先で待っていてくれるものだ。

 
 
 
きつね

キタキツネ 人に馴れ過ぎたキタキツネ。赤岳銀泉台にて。

 北海道は自然の宝庫である。北海道に行ってまず見つけるのはキタキツネである。初めて見る時は感激するが、案外何処にもいるのでその内珍しいとは思わなくなる。

 こんなによく見掛けるのは観光客が餌を与えてしまった為のようだ。餌を目的にわざわざ人が集まる所まで山を下りて来る。その弊害が出ている。キタキツネを発見しても眺めるだけで餌を与えることはしないようにしている。

 
 
 

熊 「熊だ!あぶないぞーッ」
あまり緊迫感のない看板。富山県利賀村にて。

 一般人には熊などほとんど縁がない。パンダや白くまならまだしも、動物園に行ってもただの熊など子供たちにはあまり人気がない。ところが野宿旅をしていると出くわすのである。これまで3度遭遇した。

 その一つは奈良県であった。1993年3月27日、下北山村の池郷林道を野宿地を求めて走行していた。いい場所がなく、隣りの十津川村との境まで来てしまった。ちょっと休憩と思い、車を降りて景色を眺めようと崖に近付いた。すると崖のすぐ下で岩が転がる音がする。随分唐突な落石だなと思って下をのぞくと、黒い毛皮が波を打って走り去っていくではないか。こちらも慌てて車の中に戻る。こんな所では安心して野宿などできたものではない。暗くなる林道を結局国道425号に合流する所まで走り続け、その日は国道脇で野宿した。その時ばかりはなるべく人気が多いほうがいいと思った。

 自然の動物を目にするのは野宿旅の楽しみの一つなのだが、熊だけは勘弁して欲しい。静かに走る林道の角を曲がった先に熊が居たというのでは困るのだ。これまでは熊の方で逃げてくれて無事だったが、車の中にいても熊が襲って来たらどうなるか分からない。ましてやテントなどの布切れでは何の役にも立たない。真夜中、テントの中で熊に脅えて夜明けを待つのは辛いものがある。

 そこで実際に熊を見掛けた場合は言うに及ばず、熊注意とか最近熊が出没しましたなどという看板を見ただけで、その近辺の野宿は断念することにしている。特に北海道は本州側のツキノワグマより狂暴なヒグマが多く棲息している。その為、北海道ではありきたりなキャンプ場を仕方なく使うことが多い。

 本を買って調べてみると、ヒグマは北海道のほとんど全般に棲息していて、北海道は何処にいても油断ならない。しかしツキノワグマは九州では残念ながら絶滅したと思われており、よって九州は野宿に関しては安全な地域だ。四国も徳島と高知の県境の剣山周辺以外は(野犬を除けば)安全と思っていいようだ。それ以外は運が好ければ(悪ければ?)熊に会えるかも知れない。
 

参考  ☆くま、熊、クマ  野宿の自己流クマ対策
  
  
 
その他
 
 ニホンカモシカに出会った話は「サラリーマンと旅」に書いた。他にもエゾシカやたぬき、シマリスといろいろ見掛ける。ほんの僅かな出会いなので写真に収める暇などなかったがいい思い出だ。また野鳥なども沢山見掛ける。しかし鳥に関してもオンチなので何の鳥だかさっぱり分からない(鷲と鷹の区別もつかん)。森の中でテントを張り、周りじゅうからいろいろな鳥の鳴き声が聞こえて来ても、私には宝の持ち腐れだ。

 ところで夜中に「ギャー、ギャー」と大きな薄気味悪い鳴き声で鳴く鳥がいる。初めて聞いた時は何か動物の鳴き声かとも思われ、恐ろしくて眠れなかった。赤んぼの鳴き声の様にも聞こえるこの鳥の正体をご存知の方がいたら、教えて欲しい。

 夜中にテントの中で聞く動物の鳴き声は、それが鳥と分かっていればまだよいが、得体の知れない生き物の唸り声や走り回る音だと精神安定上非常によろしくない。ただでさえ繊細な上に夜は神経が研ぎ澄まされていて、ちょっとした音でも敏感に反応してしまうのだ。恐くてシュラフの中の体が硬直して汗びっしょりになってしまったこともある。外に出て確かめる訳にもいかず、まんじりともせず夜明けを待ったりした。
 こうしたことに何の手だても打たないのは能がないと思い、唐突ながら鉈(なた)を買った。薪作りにも使える。その鉈を枕元に置いて寝るのだ。夜中に私のテントに近づく者は鉈が飛んで来ないように注意したほうがいい。

  
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