サラリーマン野宿旅
旅の小道具 Part3

 初掲載 1999/10/ 4 旅の小道具 旅の小道具 Part2 の続きです。時には使えない物もあります。
  
ナイフ
万能ナイフ
 アウトドアらしい道具がナイフである。
 ナイフと言えばビクトリノックスとかいう有名な万能ナイフなどを持っている人も居ることだろう。私もそのマガイモノを何かの景品でもらって持っている。でも私の野宿旅ではあまり活躍しないのだ。缶詰を開けたりビールの栓を抜くことなど全くない。野宿旅の食事は専ら安い即席やレトルト食品と決まっているから、せいぜい食品の包装を切るのに使う程度だ。
 でも野宿旅を始めた当初、うっかりナイフを買ってしまった。何となくあった方がいいだろうと思ったのだ。ナイフケースに方位磁石が付いているタイプだ。でも魚肉ソーセージの包装を切るには、小さなカッターナイフの方がよっぽど使い易いのであった。またケースの方位磁石は、中にナイフが入っているとその金属が邪魔をして正確な方位を示さない。使う時はいちいちナイフを抜かなければならないことが後で分かった。
 そのナイフはほとんど用をなさないが、野宿道具を入れるバッグには入れっぱなしにしている。ある野宿の晩、いつものようにラーメン鍋でレトルト食品を暖めていると、その時になってようやく箸を持ってこなかったのに気がついた。単なる2本の細い木の棒なのだが、それがないと日本人は非常に困るのだ。そこでナイフを取り出し、細い枯れ枝を削って箸を作ることにした。最初は子供の頃の工作気分で楽しく削っていたが、たった2本の棒を削るだけでも、案外大変である。その内指が疲れてきて、結局不恰好な物しかできなかった。
 キャンプサイトで男が一人、ナイフを使って木を削り、ちょっとした置物や飾りを造るところを想像していた。優雅に時間を過ごしている姿が如何にもかっこがいい。そんな積もりで買ったナイフだが、全く当てが外れたのだった。

 

ナタ
 ナイフ以上にナタなんかが活躍する場面は尚更ない。
 まず考えるのは薪作りである。しかし片手で持つ程度のナタ一本で、大きな丸太から薪を作るなんて出来るわけはない。子供の頃、実際に風呂焚き用の薪作りを経験した者だから断言できる。柄の長い大きな斧がなければ無理だ。またちょっとした枝を切り落とすだけでもかなりの腕力がいる。ナタだけではなく、ノコギリも持ち合わせなければならない。それに薪にできる枯れ木や枯れ枝があるところには、ナタなど使わなくても探しまわればいくらでも手ごろな薪が見付かる。逆に全然ないところは、ナタを持って来てもどうにもならない場合が多いのだ。そこらに立っている生木にナタをたてるわけにもいかない。
 しかし手遅れである。もうナタも買ってしまった。家に置いてあったら尚更役に立たないので、いつも車の中に入っている。サラリーマン生活のどこにも活躍の場は見出せはしない。
 仕方がないから護身用に野宿の枕元に置いておく時もある。熊や野犬にでも襲われたら、それで立ち向かおうというのだ。夜中に私のテントに不用意に近付くと、ナタが飛んでいくので注意が必要である。

 

ラジオ
ラジカセ
 野宿の夜は寂しい。何か音が欲しいものである。しかし一般に野宿地には電波は届きにくいことになっている。ラジオと懐中電灯付きの目覚し時計(ラジオと目覚し時計付きの懐中電灯か?)なる安物を持っているが、それに付いているラジオなど感度が悪くて使えたものじゃなかった。
 電波がダメならテープを聞こうと、2千円以下の特価品のラジカセをその為に買ったが、ラジカセは乾電池を沢山使う。「消耗」とう言葉が大っ嫌いなので、結局最初に買った電池が切れてから使っていない。また野宿ではラジカセなど大きな物は邪魔になるだけだった。
 でも音楽は熊よけにはなるので、また北海道にでも行く時には、電池を買って持って行こうかとも思う。問題は安物なのでオートリバース機能がなかったのだ。寝ている間に止まってしまっては、熊よけにならないではないか。

 

バスタオル
 旅で温泉に入る時にでも使うタオルのことではない。古くなって雑巾にでもするしかないようなバスタオルを、一本車に積んでおくとなかなか役に立つのだ。
 例えば野宿では夜露が付き物だ。朝になるとテントがびっしょり濡れていることがある。そのまま車に仕舞う訳にもいかない。そこでバスタオルで拭くのだ。小さな雑巾などでは到底間に合わない。同じく車のウインドウにも水滴がいっぱいで、そのままでは運転もできない有様だ。ウインドウを拭いたり、ついでに汚れたボディーも洗うのだ。
 私のご愛用は10年以上も前に北海道ツーリングをした時にホテルから拝借してきたバスタオルだ。よくある例のオレンジ色のやつだ。その9月の北海道は想像以上に寒く、雨も降らないのにカッパを着てバイクを走らせた。それでも寒いので、いけない事とは知りつつも、泊まったホテルのバスタオルを持ってきて、マフラー代わりに首に巻いて使ったのだ。それ以来の付き合いである。これだけ使えばそのバスタオルも本望であろう。

 

軍手
 あんなに安いものはない。1ダースでも数百円だ。車には2、3セット必ず入っている。普段の会社ではパソコンのキーボードしかさわらない(うそ)デリケートな手を守るには最適である。テントの設営用などの汚れていいものと、食事の時に熱い鍋を持つ時のきれいなものとを使い分けている。
 また、万が一の車のトラブルの時も、慌てず騒がず、まず軍手をはめる。その行為が落ち着きを取り戻してくれる。その上でパンクなどの修理にかかればいい。車に積んだ修理道具の中にはちゃんと軍手が一本含まれているのだ。

 

カッパ
 何かの用心の為に使える物だ。土砂降りの雨の中のパンク修理に使ったこともある。寒い野宿に着込んだこともある。大雨の夜にテントを撤収した時にも活躍した。野宿旅では体が資本。それを守る大事な一手段である。

 

目覚まし時計
 サラリーマンの性(さが)か、野宿でも目覚し時計を使っている。自然に起きればいいのにと思うが、やはり寝坊が怖いのだ。早く起きて、誰にも気付かれない前に野宿地を立ち去りたいのだ。
 それには例のラジオと懐中電灯付きの目覚し時計が活躍している。それを枕元に置いて寝ているのだ。時々夜中に目覚めて時計を見たいと思う。折角懐中電灯がついているが、それを点けてみるが、自分自信の時計を照らすことが出来ないのが難点である。
 しかし野宿の朝にあのピコピコという音で目覚めるのも味気ない話だ。

 

温度計
 小さなコンパクトのような形状で、開くと方位磁石が入っていて、蓋側が温度計になっている。
 気温を知っても役に立つ訳ではない。体が寒いと感じれば何かを着たり、シュラフにもぐり込む、暑ければ着ている物を脱げばいい。いちいち温度を測ってどうこうするというものではない。
 でも観測することは面白い。標高が200m上がると、気温は1℃下がると聞く。それが実際にもほぼ当っているのだ。テントの中と外でどれだけ気温が違うものだろうか。どの程度の気温まで野宿ができるだろうか。いろいろ経験の裏付けにもなるのだ。

 


☆サラリーマン野宿旅