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道谷峠  のどかな林道の峠道


道谷峠
峠  奥が波賀町道谷側

 兵庫県宍粟群一宮町三方(志倉)と波賀町道谷(どうだに)を結ぶ道の町堺の峠は名前もなく、なさして重要でもなさそうな峠である。一宮町側から行くとところどころにある道路標識の行き先が「道谷」となっているので、ここでは峠の名前を仮に道谷峠と呼ぶことにする。尚、道谷とは「幾つかの道が集まった谷」とでも言う意味だそうだ。

 道路名は県道521号道谷三方線で、名前からすると波賀町の道谷と一宮町の三方までの全線を示すものと思われる。距離は15Kmから長くとも20Km以下と短いものだ。峠前後は未舗装の完璧な林道で、古いツーリングマップには県道名の代わりに「志倉道谷林道」という記述がある。

溝谷分岐
左へ溝谷を分岐
手作りの道案内の看板がある(左隅の電信柱)

溝谷分岐の看板
道案内の看板
左:「こちらわ溝谷です 行き止り」
右:「至道谷小原です 国道29号線方面」

 一宮町側の県道道谷三方線は国道429号より分岐して始まり、揖保川の支流の一つ公文川に沿って北上する。ここに訪れた時は春の穏やかな晴天の昼間で、交通量が殆どない田舎道はのどかそのものである。主だった集落を過ぎ、道からは人家が見えなくなった頃にYの字の分岐が現れる。峠に通じる道は右に橋を渡って公文川の左岸を行く。道幅などからひと目で右が本線と分かるが、こうしたところで道を間違いたくないものだ。見ると二股の間にある電信柱に道案内の看板がくくり付けてある。全くのお手製で簡単な物だが、分かり易く非常に助かる。

 辺ぴな峠道の旅では訳の分からない分岐によく出くわす。もともとあまり一般車が通行する事を前提としていないような道を走っているので文句を言うこともできないが、道路標識の不備にはしばしば泣かされる。木の柱一本でも、小さな板切れ一枚でもいいから行き先が示された看板や何か参考になる物はないかと、分岐の周辺の草木をあちこち掻き分けたりして探すこともある。もとから分岐など記されていないツーリングマップをにらんでうんうん唸ったりもする。周囲の地形や道が伸びている方角などいろいろ考え迷った末、結局間違った道を選んで散々走って行き止りということが何度もあった。単なる時間のロスということだけではなく、間違った道を走っているのではないかと不安になり、旅が楽しめなくなるのが困る。しかし迷い道も時間と精神的な余裕があれば楽しみに変えられるのではあるが。

 Y字路の看板によると左は溝谷への行き止りの道である。昭文社の古いツーリングマップにはその分岐と溝谷の集落が記されているが、最近のツーリングマップルからは分岐も集落名も消えている。多分集落は実際にもなくなっているのだろうが、ついでに分岐まで削除されてしまうのは考えものだ。

林道分岐
62林班への分岐

林道分岐の看板
左:「62林班 2Km」
右:「道谷 7Km」

 舗装の田舎道は未舗装の林道へと変わり、また分岐が現れた。右が本線、左が62林班へのT字に近い分岐である。ここにも手作りの木彫りの看板があり迷うことはない。ツーリングマップによるとこのあたりに志倉道谷林道の名前にもなっている志倉の集落があったことになっている。今ではどこがその跡なのかも分からなかった。もちろん新しいツーリングマップルには志倉の文字さえ何処にも見当たらない。最近、最新のツーリングマップルを買い揃えたが、これからも古いツーリングマップを手放す訳にはいかないのである。

 林道になっても穏やかさには変わりがなく、のんびりした峠道の旅が続く。

林道
穏やかな林道の旅

峠を望む
前方に峠付近の道筋を望む

 峠に近づき高度を上げ始めると、さすがに急斜面に沿った険しさを少し見せる道となる。前方に樹木が切られて裸になった山肌に道筋が望める。わくわくする眺めである。遠くより道を見上げ、その道を通る時のことを想像する。どんな気分だろうか、そこからどんな眺めを楽しめるだろうかと。

 道の様相はやや厳しくとも、春ののどかな陽気に気分はゆったりしている。車もゆっくりカメの歩みのように進める。そうすれば険しい道も何の危険も感じないやさしい道となる。

 のんびり走っても峠まで数Kmの林道走行では物足りないのは仕方がない。峠からは今来た一宮町方面の眺めがいい。遠くに山並みがそびえ立つ。

 峠は狭い林道がそのまま抜けていて、何の標識も看板もなく、あっけないものだ。この峠道は全長も短く峠越えの感動は薄い。辛うじて峠前後が未舗装の林道なのが唯一の救いである。これが全線舗装の県道となってしまったら、わざわざ越える為にやって来るだけの魅力はなくなるだろう。

峠からの眺め
峠より一宮町方面を望む

道谷側の林道
波賀町道谷側の林道  やや荒れている

 峠より波賀町道谷側に下りだす。路面がやや荒れた感じを受けるが、大した事はない。谷を左に見下ろしながら下り、やや高度感がある。持病の高所恐怖症が少しうずく。

 峠道はそのまま大きな集落を通ることもなく県道48号大屋波賀線に突き当たって尽きる。県道に出る手前は畑のただ中を通る道で、ますますのんびりとした雰囲気だ。小さな子供を連れた家族連れが散策していた。驚かさない様にクラクションを鳴らすこともなくゆっくり近づくと、こちらに気が付いて狭い道の端によけてくれた。ゆっくり追い越す。

 県道に出た所には道路標識のようなものはなかったと記憶している。道谷側からはこの峠道は発見しにくいかもしれない。よくある農作業用の行き止りの道と見間違いそうだからだ。


 峠道状況(1997年4月)

 峠前後が狭い未舗装林道だが、深い轍などはなく路面は比較的安定している。2輪駆動でも通行ができるかもしれない。気候がよければほんとに散歩がてらの、のどかな峠越えが楽しめる。時間があれば分岐する枝道に寄ってみるのもいい。


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