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権兵衛峠
 
ごんべえとうげ
 
木曽山脈を越えて伊那と木曽を結ぶ峠道
 
 
 
権兵衛峠
権兵衛峠 村境
 権兵衛(ごんべえ)峠とは現代人からすれば愛嬌のある名だ。昔、木曽に住んでいた権兵衛さんが、団子だか饅頭だかの大食い競争をしたところ、相手が死んでしまった。それを悔いて、みんなの為にと米が採れない木曽へ伊那から米を運べる様に切り開いたのが権兵衛街道だという昔話を聞いた覚えがある。 
 
 権兵衛街道は長野県上伊那群南箕輪村の飛地と木曽郡楢川村を繋ぐ街道で、標高1522mの峠は木曽山脈の北部、経ヶ岳と木曽駒ヶ岳の鞍部に位置する。 
 
 もとは鍋掛峠といい、元禄年間に古畑権兵衛らによって改修されたと峠の案内板に書き記してあった。しかし現在車で通れる権兵衛街道、国道361号は権兵衛さんの作った道とは大きく外れている。写真にある権兵衛峠も車道が越える村境で、残念ながら元の峠とは違うものである。
 
 日本列島を東の方から来て木曽福島辺りに木曽山脈を回り込むには、通常中央高速の恵那山トンネルを抜けて中津川市の方から国道19号を北上するか、または塩尻市の方から南下するかである。木曽街道は昔は良かったのだろうが、今では旧街道筋を外れ、車がスピードを出して走るバイパス路の国道19号となってしまった。しかしこの権兵衛街道を使えば、ずばり伊那谷から木曽谷に木曽山脈を越えられるのである。国道19号を長く走るよりずっと味わいがあるのだ。
 
 
 
 伊那側から峠に向かうには、中央高速の伊那インターチェンジで降りて北西に進み、県道203号、与地辰野線を辰野町方面に入ってすぐ左斜めに入る道を行く。地図では国道となっているが国道標識も見当たらず、非常にまごつく。実は木曽まで通じている現在の道は経ヶ岳林道を舗装したもので、本来の国道は更に南の方を峠まで繋ぐ予定のようだ。国道開通まで林道が代役している。

 道は最初穏やかな林の中を行く。夏などはアスファルトの上に涼しげな木陰を作っている。しかし間もなく狭く如何にも林道らしい道となる。展望は望めない。

 
 幾つものカーブを丹念に曲がって登って行く。やっと視界が開け稜線付近に出たと思うと間もなく展望所に着く。駐車スペースがあり、案内板や木の柵など作られていて、ちょっと洒落た観光地の雰囲気を出している。しかしここまで登って来た道は紛れもなく林道だった。1990年頃にはまだこの様な展望所は無かったと記憶している。 
展望所
展望所 1993年9月
 
駒ヶ岳
展望所からの眺め
 展望所からは南方に景色が広がり、木曽駒ヶ岳も眺められる。ここは峠ではないが現在の車道の最高所ではないかと思う。 
 
 展望所を後にしばらく稜線伝いに進み、少し下った所に村境がある。車やバイクで越える時はここを峠と呼ばざるを得ない。道の両端が広場になり、明るく開けている。ちょっと昼寝でもするにはもってこいである。夏などの時期によっては露店の茶店が出ていることがある。 
 
 
 
 木曽側に下る。伊那側に比べ道は走り易い。途中左に鋭角に曲がる未舗装の林道がある。行ってみるとその先に栃洞(とちぼら)キャンプ場というのがあり、道はそこでゲート止めとなる。 
 
 左に並んで走る奈良井川の川幅が広くなったと思うと奈良井ダムに着く。細長いダム湖だ。ダムを過ぎて下ると左に川を渡る道と二股に分かれる。どちらを行っても国道19号の新鳥居トンネル入口直前に出る。 
奈良井ダム
奈良井ダム
 
 橋を渡ると更に左に川を溯る道が分岐している。ダムの下のダム公園に出る道だ。またその途中旧鳥居トンネルに行く道がある。現在の新鳥居トンネルを抜ける国道19号の1世代前の道なのだ。鉄製のゲートで閉じられているが、カギが掛かっていない(1995年5月)。その先にはコンクリートで塞がれた旧鳥居トンネルの入口がひっそり佇んでいる。トンネルの入口上には横書きで右から左に鳥居隧道(ずいどう)とある。
 
鳥居トンネルへの旧道
旧鳥居トンネルへの入口
旧鳥居トンネル
旧鳥居トンネル
今はコンクリートで塞がれている
旧鳥居トンネル
旧鳥居トンネル
 
 現在の木曽路、国道19号は車がひっきりなしに猛スピードで流れている。権兵衛街道をのんびりトコトコやって来た者には別世界の感がある。国道に乗ったら否応無くその流れに自分も飲み込まれてしまう。
<制作 1997/ 6/23><著作 蓑上誠一>
 
 
 
 権兵衛峠(Part2)
 
 
  
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