ホームページ★峠と旅  

堀越峠  未舗装で残る旧道の峠道


堀越峠
堀越峠 奥が福井県名田庄村
 国道162号線は福井県小浜市と京都を結んでいる道である。近年小浜市と三方町(現若狭町)の境である獅子ヶ崎のある半島に食見(きしみ)トンネルが開通し、寸断されていた道は三方町まで通じる様になった。よって正確には162号は三方町から京都までの国道ということになるが、小浜市と三方町の間は取って付けた感がある。海岸沿に狭い道が残っていたり、1997年現在一部でトンネル工事も行われていて、まだ一人前の国道という気がしない。また利用する状況を考えても三方町と小浜市の間、小浜市と京都の間ではそれぞれ別に使われるのではないだろうか。 
 
 そこで国道162号線は福井県小浜市と京都を結んでいると言っても過言ではないと思う。 
 福井と京都の県境は昭和49年(1974年)に堀越トンネルが出来て快適となったが、旧道の堀越峠を越える道が全線未舗装のままそっくり残っている。旧道は同じく国道162号上の深見峠のトンネル開通に関係して昭和26年(1951年)に車道として完成したものだ。そしてその道を使って昭和30年(1955年)ごろには小浜市と京都間を国鉄の定期バスが運行していたという。 

 しかし堀越峠の旧道を走ったことがある者ならあの道をバスが走れる訳はないと思う。なにしろ軽自動車でも狭いのだ。他に道があっとしか考えようがない。 

堀越トンネル
堀越トンネル 福井県側入り口
旧道入口
名田庄村側の国道 手前が堀越トンネルへ
左に旧道入口 右に名田庄の看板
 堀越峠の道は福井県遠敷(おにゅう)郡名田庄(なたしょう)村納田終(のたおい)と京都府北桑田群美山町鶴ヶ岡を結んだ峠道である。 

 名田庄村の国道を堀越トンネルに向けて上って来ると、旧道は右後方に見当外れに分岐している。国道を挟んで旧道入口と反対側に「名田庄」と書かれた青色の大きく細長い柱の看板が立っているので、知っていればそれが旧道のいい目印になる。しかしそれ以外旧道と分かる道路標識も何も無いので、知らなければただただうさん臭い林道の分岐としか思われない。念の為国道をそのまま進むとトンネルまで他に分岐が無いので、やっぱりあれがそうだったのかと思い知らされる羽目になる。 

 旧道が現在の国道とはあらぬ方に向いていたのは、後から出来た国道が旧道とは尾根一つ隔てて東側の谷に作られたからだ。旧道の入口を入ると直ぐに尾根を回り込んで西側の谷に出る。急な崖にへばりついた道でますますうさん臭い。ほとうに峠を越えられるのかと不安になる。それにとにかく高度感がある。峠そのものは標高約510mでたいして高くない峠道なのだが、狭く荒れた砂利道の路肩がストンと切り落ちている。覗けば深い谷だ。少々高所恐怖症気味なので膝の力が抜ける様な恐怖を感じる。そんな崖沿いの険しい道が先に伸びているのが見渡せ、その眺めはいいのだが写真を撮ろうなどという余裕はない。早くこの場を無事に抜け出したいという気持ちでいっぱいだ。高所恐怖症なくせにわざわざこんな林道に入り込んで怖がっている。いわゆる怖い物見たさである。しばし緊張した運転が続き、気疲れする。 

 開けた谷を過ぎると道は林の中に入り、展望は無くなる。しかし安心はできない。路肩の切り落ちは相変わらず激しいので、道の直ぐ側に立つ木でさえも下の方が見えず、途中から上が並んで立つ様に見えるのだ。不気味な光景である。直角に近い角を曲がった折り、ふと窓の下を見ると路傍の草の途切れたところに地面はなく、ぽっかり崖が口を開けていた。全く油断ならない。 

  

名田庄村側の林道
名田庄村側の林道
峠に近づきやっと安定した道になった
峠
堀越峠 左の道は名田庄村へ
上りはNTT無線局へ
 そろそろ峠も近いと思う頃になってやっと路肩の様子がはっきり見て取れる安心して走れる林道となる。しかし見通しが利かないのでどこが峠だろうかと見当が付かないでいると、急に左に分岐が現れた。NTTの無線局へ上る道であることが道脇にぽつんとある看板で分かる。分岐の先がこの峠道の最高所となっているのでそこが峠と思われる。県境なのに何の標識もない。全般にこの旧道沿いには標識らしい標識は皆無だ。ただただガードレールもない粗削りの道が通じているだけである。こんなところをバスが走っていたはずはない。 
 京都府美山町側の道は打って変わって道幅が広く、よく整備もされている。名田庄側の様に崖っぷちの経路でないので走っていても安心感がある。誤って路肩を脱輪しても谷底まで落ちていく心配はなく、鼻歌まじりで大丈夫だ。 

 こうなると現金なものでこんどは少し物足りなく感じる。もっと険しくなしと峠道を旅している気分が出てこないと不満だ。展望も名田庄側のあの谷の景色に比べるとおとなしいもので、ただただ走りに没頭するしかない。 

京都側の林道
京都府美山町側の林道
美山町側は全般的に走り易い
美山町側の旧道分岐
京都側の入口
 道がいいのであっと言う間に下ってきてしまう。美山町側の旧道入口は比較的分かり易い。如何にも旧道が分岐していますといった感じだ。入口脇に茶色の看板が目に付くが、やはりここにも旧道に関する記述はなかった。 

 美山町からだと峠までは難なく行けるが、後半の名田庄村側で驚く羽目になる。峠を越えるなら名田庄村から越えた方が気分的には楽だ。 


 峠道状況(1997年9月)

 完成から46年以上経っても全線完璧な未舗装のままで、今も舗装される気配など全くない。いつでも安心してオフロード走行が楽しめる峠道だ(保証はしない)。路面は福井県名田庄村側の荒れが目立つが、大きな轍や亀裂などはない。ただ車の場合路肩には十分注意が必要で、大型のオフロード車では緊張を強いられることになる。まったく好きでないとこんな道は誰も通らない(ただし山仕事のおっさんの軽トラックは身軽にひょこひょこ走っている)。 


峠と旅        峠リスト