ホームページ★峠と旅  

宝蔵峠  アプローチのながーい峠道


宝蔵峠
宝蔵峠

 宝蔵(ほうぞう)峠は高知県安芸市の奥の方にある。土佐湾に面した安芸市街から安芸川沿いを北に溯る。途中張川沿いの張川林道に分岐し更に北上する。川を詰めてから宝蔵峠で山を越えて東側の伊尾木川の谷に下りる。そして伊尾木川沿いを延々と南下し再び安芸市街に戻る。

 どちらの側から行くにしろ、同じ安芸市内の川の上流まで行って戻ってくる、かなり虚しい峠旅である。

 なるべく虚しくならない様にとコースを考えた。香我美町の山奥、舞川より弓木隧道で安芸市に入り、安芸川の源流畑山川の上流より下ることにする。張川林道の分岐まで来て問題が起こった。林道入口から道路工事が始まっており、100m程入った所で工事車輌が道を塞いでいた。入口には通行止とは出ていなかったが通してもらえるのだろうか。すぐ脇で工事作業をしているおばちゃんに尋ねると「おーい車が来たよー」と工事車輌の方に声を掛けてくれた。トラック1台とユンボ1台がわざわざ作業を中断して林道入口まで待避してくれる。こちらは別に何の用もなく、単なる遊びで通るだけなので申し訳ない。

 張川林道は工事中とはいえ、今現在はまだ100%未舗装である。張川に沿って整備された走り易いダートが続く。本来なら喜ぶべきところなのだが、もったいない事に飽きてしまうのだ。川沿いの為、上りも下りもしない単調さが続く。川の蛇行に合わせて道もくねくね曲がるが、谷間の景色は一向に変わらない。飛ばさないのでやたらと時間が掛かる。仕方がない、丁度昼時なので道脇の空き地で食事を取ることにする。レトルトだがカレーライスとスープの昼食をゆっくり味わい、気を取り直してまた走り出す。

 張川の上流を突き詰めた所で橋で左岸に渡る。ここからいよいよ本格的な上りが始まる。

張川側の上り
急なヘアピン

張川側の険しい道
険しい崖沿いの道

 道は荒れた。高度を上げるに従って谷間の景色が広がる。きつい上りに急なヘアピン。断崖絶壁にガードレールは皆無。景色を楽しみたいのだが、あまりよそ見などしていられない。

 峠道はやはりこうでなければいけない。適度な緊張感があり、それでいて周りは素晴らしい山また山のロケーション。退屈などする暇はない。谷を回り込むたびに山肌に沿った新しい道筋が現われ、新しい展望がダイナミックに広がる。

 かなり上った所で道は左折する。直進は仙谷林道で行止りと思われる。そこからますます路面は荒れた。

 しかし分岐より1Km足らずで峠に出た。峠手前、左に張川林道52支線林道が分岐する。その先は杉ノ谷治山工事現場で行止りと思われる。轍はその支線へ行く方が多い。峠に居る間も一台の工事車輌がそこから現われ、伊尾木川の方へ下って行った。

52支線分岐
左に52支線分岐 右が峠

峠の看板
峠にある「宝蔵峠」の看板

 峠には木で出来た「宝蔵峠」の看板がある。この様な林道の峠にある看板としては立派な物だ。峠越えを旅の目的の一つにしている者にとって、峠名が記してあるのは嬉しい。観光地化された様な峠にある看板では有り難味がないが、こんな一般者が来ない峠にある看板は大歓迎である。

 看板には「昭和46年3月31日開通」とあった。

 峠からは張川側、伊尾木川側とも展望がある。特に伊尾木川が流れる谷が見下ろせ、土佐湾の方に向けて山が幾重にも連なっている。それは眺めるだけならよいのだが、これからその谷間を延々と走らなければならないのだ。

 峠を下る。大型の工事車輌も通れる様に道幅は広く、しっかり踏み締められた路面は非常に走り易い。あまり展望もないのでよそ見をすることもなく、どんどん先に進む。

峠からの眺望
峠より伊尾木川方面を望む

伊尾木川での分岐
伊尾木川沿いの道に出る
左折が宝蔵峠、直進は駒背峠

 下り終わると橋を渡って伊尾木川沿いの舗装路に出る。そこには赤錆びた林道標識が立っている。辛うじて「張川林道」の文字だけが読める。また「一般車通行止」の古い看板も目に付いた。張川側には何もなかったので、まあいいことにする。
 実はそこから伊尾木川を上流に溯れば、東川千本谷林道で県境の駒背峠を越えて徳島県の木頭村へ出られる可能性がある。数年前に木頭村より駒背峠を越えようとして通行止で敢無く断念した覚えがある。今回通行止の標識は見当たらない。勇んで向かった。

 しかし川沿いを上り詰めるだけ上り詰め、最後の集落を過ぎ、橋を渡り、いよいよ急登と思った所で通行止の看板が立っていた。道路改修工事とある。しかしここまで来て通行止はちょっとひどい。強硬に進もうかと暫く考えていると、工事の大型トラックが道幅いっぱいに下りて来た。慌ててバックし待避所でやり過ごす。こんなのと時々行き違うのかと思うとうんざりした。また相手に迷惑もかける。諦めて引き返すこととした。
 結局伊尾木川沿い走行が長くなるだけとなった。土佐湾沿いの国道55号に出るまでの気の遠くなる走行は、通行止で追い返されたこともあり、あまり楽しむ気になれなかった。


 峠道状況(1997年9月)
 張川林道は全線未舗装で荒れた部分もあり、4WDはほぼ必至。張川側の上りは崖が多く、慎重な運転が必要。たまに大きな工事車輌や木材運搬トラックが通るので注意。
 また張川沿いは工事中で場合によって通行止になるかもしれない(不確定要素)。
 尚、駒背峠への道の通行止標識には「市道古井別役線、安芸市別役、四輪車以上、平成9月8日8時〜11月30日17時、道路改修工事の為」とある。


峠と旅        峠リスト