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鍋越峠  「今月の峠」1998/ 6/20 掲載


鍋越峠
鍋越峠   奥が山形県尾花沢市側
左脇に小首をかしげた国道標識が立つ
国道標識の後ろを左に市営宝栄牧場への道を分岐する

 鍋越峠もよくある旧道の峠だ。国道347号の山形県尾花沢市と宮城県小野田町の境は、現在は立派な鍋越トンネルで繋がっている。トンネル前後の道も幅の広い2車線路で、全線に渡って快適そのものだ。これぞ国道といった感じである。旧道は丁度そのトンネルの区間のみを残している。

山形県側
山形県側  前方に鍋越トンネル、左に峠への旧道が分岐
分岐近くの看板には「またどうぞ山形へ」とある

 尾花沢市より国道をやってくると、トンネルの少し手前で大きく道路標識が掲げてあり、「鍋越峠」への道が左に分岐しているのが、一目瞭然である。トンネルを通らず、わざわざ峠を越えて行く必要がある人がそんなにいるとは思われず、立派すぎる道標だ。普通なら旧道を示す小さな木の標識でもあればいい方だ。いつも旧道探しに苦労させられるので、ちょっと拍子抜けである。

 随分昔にやはり山形県側から宮城県側へこの国道をオートバイで走り抜けた。東北地方のツーリングはその時が初めてで、またバイクによるロングツーリングにも不慣れな時だ。ただただ走るのが精一杯で、あまり旅を楽しむ余裕もない。あいにく峠道に差し掛かかった頃には空が真っ黒に曇り、今にも大粒の雨が落ちてきそうである。いつでも直ぐに着られる様にと、合羽を出して荷台のツーリングネットに挟み込んで走る。天候の不安を抱え、あまり険しい道でなければよいと思った。しかし道は意外な程に快適で天候も大きく崩れることなく、無事に古川を抜け太平洋側に出た。その時は鍋越トンネルに旧道があることなど全く気付かなかった。よそ見をする余裕がなかったのだ。それに比べ最近は現れる細い分岐がいちいち気になってしょうがない。険しそうな道だとますます寄り道したくなる。こうしてなかなか旅が先に進まないのも困りものだ。

柱の標識
峠にある木の柱の標識  「古川尾花沢線(管理境界)」

 旧道区間は距離が短く、また国道として使われていた時期もある為、狭いながらも完全舗装で走り易く、何を楽しむでもなく、峠にはあっという間に着いてしまう。峠からは右手に道が一本分岐する。その道の入口に「市営 宝栄牧場入口」なる看板が掛かっている。また「至宝栄牧場、銀山」と木の柱に書かれているところを見ると、地図にはないが、もとの尾花沢市街の方に抜けられる道のようだ。旧道入口に大きな道標があったのも、この牧場がある為かも知れない。

 峠には折れ曲がった国道標識があり、この道が旧国道であることを示している。その国道標識の脇に並んで立つ木の柱に「古川尾花沢線(管理境界)」とある。その木の標識はかなり古そうだ。それに国道のことを「古川尾花沢線」などとは呼ばない。これはこの道が国道になる前からある物かも知れない。

宮城県側
宮城県側  正面に鍋越トンネル、右より旧道が合流
旧道出口付近で何やら工事中

 峠を下るとトンネルの出口のすぐ前に出た。まったくトンネルをくぐればすぐのところを、わざわざ細い道で峠を越えて来た訳だ。こんなことばかりしているので、この頃の旅は時間が掛かって仕方がない。なるべくよそ見をしない様にしなくては、休みがいくらあっても足りない。 


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