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落合峠  東祖谷山村の中の峠
(掲載 1998. 1.25)

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関連ページ → 棧敷峠 (掲載 2015. 8. 6)


落合側入口
落合側入口 道標には直進に「落合峠」とある
左にカーブするのは国道439号で京柱峠に通じる

 四国の徳島県三好郡東祖谷山(ひがしいややま)村には高知県との県境に京柱峠や矢筈峠があり、またその他の隣り合う町村との境にも軒並み峠を有している。峠を越えずに行き来できるのは西隣の西祖谷山村くらいなもので、それ以外は必ず峠を越えなければ東祖谷山村に入る事も出る事もできず、全く楽しい村である。しかも村の中にも峠があるのだ。落合峠だ。標高も1519mと半端ではない。

 落合峠は東祖谷山村の落合と深渕(みぶち 深淵?)を結ぶ。落合は国道439号の近くにある集落で、国道を見ノ越(剣山の近く)から京柱峠へと、東から西に進む途中に注意していると道路標識が出ている。最初「落合」と書いた分岐が現れるが、その少し先に「落合峠」と書かれた分岐があり、峠へはこちらを進む。

 ところでそれらの道路標識は逆方向の京柱峠より来ると出ていない。また道路標識では国道をそのまま進む方向には「大歩危、かずらばし」とか「池田、かずら橋」などと書かれている。国道を行けば京柱峠を越えて高知県に出るのであってかずら橋などない。大歩危やかずら橋がある西祖谷山村には途中で県道に分岐するのだ。池田町は西祖谷山村を抜けたさらに先にある。京柱峠がある国道より、観光名所に通じる県道が優遇されているのだ。大歩危の景観もかずら橋の歴史資産も確かに一見の価値はあるのだが、京柱峠からの眺めも決して引けを取るものではない。ただしそこまでの道程を考えると一般向けではないのも確かだ。

 初めて落合峠を訪れた時は京柱峠の方から(正確には矢筈峠を越えて)来た。地図によると峠の道は深渕落合林道とあり、未舗装のようだ。そんな道への道路標識など無いとはなから諦めていたので、感を働かせてここと思しき道に入り込んだが間違えた。四国の東や西の祖谷山村といった山深いところでは山の上の方にも人家が点在している。それは遠くから眺めているぶんには壮観なのだが、そんな所に車で入り込むと大変である。世間一般に言われる悪路などとは比べ物にならない。異常なほどの道の狭さ。尋常でない急カーブ。狂暴なほどの急坂。鋭い崖にガードレール無し。それがいっぺんに来たひにゃ生きた心地がしない。峠道の旅で出会う悪路など子供だましである。間違いに気付いてもおいそれとは引き返せない。下手に車を止めればブレーキペダルを踏み込んだ右足を2度と離すことができなくなる。サイドブレーキなどでは車を制止できない急勾配だからだ。そんな道を慣れているとはいっても地元の人は普段の生活路としているのだから驚く。

 迷い道から無事生還し、やっと目的の道に進む。しばし落合谷川を右に見ながら遡ると、前方の山肌につづら折りが幾重にも見えてきた。思わず嬉しくなってくる。峠道らしい峠道の始まりだ。つづら折りのカーブをひとつひとつ丁寧にクリアしていく。ひとカーブごとに増していく標高と眺めのよさを噛み締めながら上る。

 急いでいる時のこんな山道はうんざりして、いくら車を飛ばしても時間ばかり掛かる気がするが、楽しみながらゆっくり走っていると、あっと言う間に峠に着いてしまう。かえって物足りないくらいだ。安全運転の為にも時間に余裕をもって、ちょっとした事でも面白がり道草して旅したいものだ。

急登
落合谷川上流
前方につづら折りが立ちはだかる

ダート
落合側に僅かにダートを残す

 ひとつ残念なのは地図の記述とは異なり道は峠まで舗装が続いていた。峠は切り通しではなく、土をむき出した広い平地にあり、広々としている。右に林道が分岐していたがその先は確認していない。峠まで1台の車ともすれ違わなかったが、峠近くには何台かのオフロード車が止められ、やや俗っぽい。峠の写真も撮らずにそそくさと深淵側に下り出したが、後になって峠の写真がないのはやはり惜しまれた。

 深渕側は深渕落合林道の名に恥じないダートであった。展望もよく落合側とはまた違った楽しさの道である。

 道の途中のどこであったか覚えがないが(多分峠)、右の写真の句碑がある。山並みの景色をバックにしたその石の句碑には次の様にある。

「落人もこの坂こえて杖を置く」 落合 伏平

 そういえばこの辺りは落人で有名なところである。落ち武者が逃げ延びて隠れ住んだだけあって、山深いわけである。

句碑
「落人も・・・」の句碑

桟敷峠
棧敷峠 右へ「風呂塔キャンプ場3Km」

 深渕集落辺りで未舗装は途切れる。しかし集落らしい集落があったような記憶はない。また深渕キャンプ場と地図にはあったが、判然としなかった。

 深渕を過ぎると北隣の三加茂町との境の棧敷峠(1030m)に出る。峠の先がT字路になっていて、そこから三加茂町側の景色が遮る物無く広がる。 T字路を右へは「風呂塔キャンプ場3Km」と看板にある。左に下れば三加茂町市街の国道192号に繋がるが、道程はまだ多く残している。 しかしこれより他に道がないからしょうがない。

落合峠(再訪) (掲載 2015. 8.17)
 
棧敷峠 (掲載 2015. 8. 6)


 峠道状況(1993年5月)

 訪れたのは1993年5月のことで今となってはあまり役に立たない。最近の地図を見ると深渕より県道三加茂東祖谷山線が峠に向かって延びていて、未舗装路を侵食しているようで、けしからんことだ。1997年9月に落合側の入口を通過したが、特に工事の看板などは出ていなかった。


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