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三森峠(隧道)  隧道は漏水で通行止だった


<掲載 1998/ 8/ 2> 今月の峠 1998年 8月

三森隧道
三森隧道 郡山市街地側坑口

 峠に新しいトンネルができて、古い峠道が昔のままで残されるのは嬉しい。人は皆便利な新道に流れ、旧道は誰にも邪魔されずにのんびり旅ができるさびれた峠道となるからだ。しかしあまり何の補修もされずにほっておかれると、旧道は徐々に廃道化が進む。廃道同然の道もそれはそれで楽しいのだが、遂には通れなくなってしまうと元も子もない。この峠もその運命であった。

旧道入口
旧道入口 郡山市街地側

旧道
旧道はやはり荒れていた

 福島県郡山市の市街地と猪苗代湖の湖南地区を結ぶ主要地方道6号、郡山湖南線は途中に三森(さんもり)と言う峠があり、現在はそこを立派な三森トンネルで抜けている。 旧道があるのだが今では通行止で、どちらからの入口も一見厳重そうなガードレールで塞がれている。しかしよく見ると車でもそのガードレールをすり抜けるのはたやすい様になっている。通行止の標識によると峠の隧道が漏水で通行できないらしい。眺めは郡山市街地側の方がよさそうなので、そちら側からとにかく行ける所まで行くことにした。

 通行止とあるのを無理に入り込んだ手前もあり、慎重に運転する。雨が降った直後なので、勢いよく側溝から溢れ出た水が路面を洗い流している箇所もあり、荒れていることは確かだが、それ程危険な箇所もなく峠に着いた。

隧道
三森隧道 土塁で通行止
以前は観光客の車も通ったトンネルだろうに

隧道標識
「三森隧道 昭和三十七年六月竣功」

 この峠道は江戸期は会津藩の廻米路の一つで、明治10年代には新道開削計画が立てられ昭和7年に起工されたが、度々工事は中断され「雨だれ道路」と呼ばれたそうである。昭和24年に本格的な工事が再開され、結局峠に隧道(300m)が開通したのは昭和37年ということである。生活道路としてだけではなく、観光道路としても使われたそうだが、その「雨だれ道路」は今は隧道の雨漏りの目に遭っている。隧道入口は土が盛られ、車では入り込めない。昔は観光客の車も行き来したえであろう隧道の中は、苔むして暗くひっそりしていた。

隧道の上
隧道の上は元茶店の駐車場

隧道の上より
隧道の上より

 隧道に向かって左手に茶店の残骸がある。看板に「上の駐車場」とあるので何の事だろうと茶店の前の狭い坂を登ると隧道の上に出られた。そこはちょっとした広場になっているが、今は草が伸び放題である。

 広場の片隅から遊歩道が始まっていた。「東北自然歩道(新奥の細道)古代の村から分水嶺を歩くみち」と題した看板も立っている。この三森峠から御霊櫃(ごれいびつ)峠を経て夏出の薬師堂に至るコースの説明が載っている。「古代の村」とあるのはこの峠の付近で縄文時代の住居跡が見つかっていることを指しているのだろう。

茶店
茶店の外観
「熊よけ」と称して金網などで覆われている

茶店の中
茶店の中 まだ生々しい

 観光道路であった名残である茶屋の中を覗いてみた。まだ椅子やテーブルが並べられたままで、生々しい感じを受ける。新道ができてからも営業していたのであろうか。どちらにしろ旧道がこの有り様ではもう商売は立ち行かない。

郡山盆地の眺め
峠より郡山盆地を望む

 隧道の上に登ったり茶屋の中を覗いたりと、峠でひとしきり遊んだ後は、また元来た道を引返す外に道はない。最後に新道からは眺められない郡山盆地の景色を写真に納めて峠を下ることとする。


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