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高倉峠  豪快な山岳道路の峠道


高倉峠
高倉峠  峠の名前を記した石碑がある

 岐阜県の北西のどん詰まりを福井県に抜けるのがこの高倉峠だ。岐阜県藤橋村と福井県今庄町を結ぶ塚林道の県境の峠である。近くに同じく藤橋村から福井県の池田町に通じる冠山林道の冠山峠があり、また県境をさらに東に目を移すとあの温見峠がある。全くこの辺りは目が離せない楽しい地域である。

 高倉、冠山、温見の3峠はそれぞれ個性があり、違った味わいが楽しめる。中でもこの高倉峠の道は唯一未舗装区間を残し(1995年5月現在)、如何にも山岳道路といった豪快さが魅力である。

 岐阜県側からは揖斐川沿いを走る国道303号と417号の併用国道を遡る。303号は途中左に横山ダムの堰堤を渡って分岐し、その先の八草峠に通じている。そちらも非常に魅力的で迷うところだが、どちらの峠道もその道程は長く、一度にあっちもこっちもとはいかない。ここはよそ見をせずに真っ直ぐ国道417号を直進する。

 道はその先で徳山ダムの建設現場を抜ける。1997年4月に国道を逆に下ってきた時は名前や住所を記入すると通してくれた。大きく不気味なトンネルを通過する。

揖斐川沿い国道417号
揖斐川沿いの寂しい国道417号

冠山林道分岐
右に冠山林道を分岐

 ダム現場を過ぎると直ぐに右より馬坂峠(トンネル)を越えて来た県道270号藤橋根尾線が合流する。この根尾村経由の道でアプローチするのもいい。

 国道417号は尚も揖斐川の左岸に沿って北西に進み、徐々に寂しい道となっていく。そして遂には何処からとも知れずに国道とは呼ばれない道となる。 地図では塚と呼ばれる集落の先で国道を意味する赤い色が途切れている。

 道より川面が望めなくなると間もなくY字路に出くわす。 右が冠山峠を越えて行く冠山林道である。 この道は国道417号の未開通区間を繋ぐ林道で、その意味では右が本線で、高倉峠を越える左の道の方が分岐である。しかし冠山林道は路肩決壊などでよく通行止になっていた。やっと1996年8月に通行できた時は残念ながら全線舗装であった。

<ウソ峠>
 分岐より先はいよいよ塚林道の本領発揮だ。まだ舗装路は続いているが、周りの景色は正しく林道のそれである。暫くすると前方に峠の切り通しの様な景色が見えてきて、もう峠かと思わせる。しかしご安心あれ。それは偽物で高倉峠はまだまだ先だ。そして林道走行もまだまだ楽しめる。

 途中、左に行き止り(未確認)の林道や廃道の様な道を分岐した後、塚林道は未舗装と変わり、豪快な山岳道路が展開される。待ってました!!!。

塚林道
塚林道途中  前方に見えるのは峠ではない

塚林道
豪快な山岳道路
5月初旬はまだ山肌に僅かだが残雪が眺められる

峠の碑文
峠にある石碑の碑文(裏側)

 土を固めた路面がきれいな舗装に変わったと思うとそこが峠だ。ちょっとした広い敷地となっていて、その一画に石碑が建てられている。日頃の行いに問題はないはずだが、高倉峠は今までいつもガスっていて、私には何の景色も見せてくれてはいない。仕方がないから峠の石碑の裏に記された碑文でも読む。

「高倉峠は往古木地師等の往来したところで、その後越前国と美濃国とを結ぶ間道として歴史に秘められた道である」 昭和五十五年五月二十一日 今庄町長

 峠より福井県側はしばし谷が深く、ガスにかすれて、ちょっと厳しさを見せる道となる。岐阜県側が豪快ながらもどこか穏やかさがあるのに対して対照的だ。しかし峠からの舗装はそのまま続き、走行が危険というわけではない。

 峠もかなり下ったところからまたもダートが始まり、芋ヶ平集落跡まで続く。ツーリングマップには未だに芋ヶ平に廃屋が残ると記されているが、1992年10月にそこを通過した時には既に整地されて、芋ヶ平集落跡はただの広い空き地となっていた。

福井県側の下り
峠より福井県側を下る  道は厳しい様相を呈する

芋ヶ平
芋ヶ平集落跡  今は広い空き地

 芋ヶ平には山に少し入ったところに蓮如上人の遺跡があることになっているのだが、そこまで行く代わりに道路脇にある碑文を読んで済ますことにする。

 「概説 文明三年(一四七一年)初夏中旬頃、本願寺破却の際蓮如上人は叡山の僧徒に追われ、芋ヶ平まで難を逃れた。この時畑仕事をしていた老婆に導かれ岩穴の中に一時身を隠され老婆に三度の食事の世話を受けた。やがて上人ご出立の際、老婆に対し、『汝はわがための命の親なり よい形見を得させん』と六字の名号を与えられた。これを岩屋の名号と称し今に伝えられている。」

 芋ヶ平を過ぎた後は途中より国道476号に合流して、今庄町の中心地である国道365号に繋がる。その間の道はさして興味を引く物はなく、車を止めることも当然写真を撮ることもない。こうした峠道の残りの道はただ消化するだけで、あとには殆ど記憶に残らない。

芋ヶ平
芋ヶ平  蓮如上人の碑


 峠道状況(1995年5月)

 塚林道は本文に示す様に峠前後に未舗装区間を残していたが、今はどうなったであろうか。道幅は全線に渡って比較的広くあまり狭苦しさは感じない。気になるのは岐阜県側の徳山ダムの工事で、常に通行できる状態が維持されているかが問題だ。


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