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ヤレヤレ峠  ひこじいのトンネルがある峠道


奥谷トンネル
ヤレヤレ峠 奥谷トンネル海南町側入口

 四国は徳島県、海南町と牟岐町を結ぶ玉笠林道の峠、ヤレヤレ峠の峠道は距離も短く、峠の標高も約280mと規模が小さい。また林道とは名ばかりで、たいして険しくもない舗装路が全線に渡って続き、特に牟岐町側は近年改修工事がなされた様で、そのほとんどが有り触れた県道となってしまっている。

 しかし「ヤレヤレ」という峠の名が面白く、また峠で見つけた小さな「ひこじいのトンネル」の碑が印象に残っていて、忘れることが出来ない峠のひとつである。

 「ヤレヤレ」の由来は何なのか。昔は越えるのが大変な峠道で、峠まで辿り着いて「ヤレヤレ」と思ったのだろうか。また峠にある奥谷トンネルがなぜ「ひこじいのトンネル」と呼ばれるのだろうか。

 四国を東に向かって旅してた途中だったので、峠道は海南町より入ることとした。国道193号を北上しながら、右への分岐を探す。そろそろと思っていた時にちょうど十字路が現れ、何の標識もなかったが右折して入ってみた。ところが間もなく工事で行き止まり。後から地図で調べるとそこは神野前という集落への道だった。その時は知らないものだから、半信半疑ながらその分岐の写真などわざわざ車を止めて写したりしてしまった。

 本命の分岐はその2Km先に、道路標識完備であった。

玉笠林道入口
海南町側 玉笠林道入り口
道標に→牟岐(むぎ)とある

橋と林道記念碑
橋と林道開通碑の柱(車のドアミラーの上)

 国道を離れると直ぐに海部川に架かる橋を渡る。橋脚は低く川面が近くに見え、僅かな背丈の石の欄干、手前の土手のガードレールは錆びて曲がり、路傍には草が生えてまことにみすぼらしい。それが国道走行から逃れられたという落ち着きを取り戻させてくれる。周りを取り巻く自然がすぐそこに手が届く近さで感じられるのだ。またそのわびしい雰囲気はこれからの峠道の助走として期待を膨らませてくれる。

 橋の手前左、ガードレールの直ぐ脇に玉笠林道の開通記念碑の柱が立っている。これもなかなか旅心をそそられる。

 道は海部川の支流、玉笠谷に沿って進む。全線舗装とはいえ、海南町側はそれでも林道の雰囲気を残し、道幅は狭く暗い感じで、あまり使われる道ではないことは確かだ。こうした通行量がほとんど無い道なら、後続車に急き立てられることもなく、自分の好きなペースで行けるのがいい。ただ終始谷底を走る道で展望は全く無い。

 少し上ったかと思ったら早くもトンネルが現れた。ヤレヤレ峠隧道とある。しかし地図からするとここはまだ町境の峠ではないらしい。トンネル出口右に大山林道が分岐していた。行ったことはないが、この林道は海南町の大山を経て海沿いの国道55号に出られるようだ。見た限りでは未舗装である。

 

ヤレヤレ峠隧道
ヤレヤレ峠隧道

ひこじいのトンネルの碑
「ひこじいのトンネル」の碑

 道はトンネルの先でやや下る。どうも峠がはっきりしないと首をかしげている内に直ぐにまたトンネル。奥谷トンネルとある。地図では峠にトンネルの印があるので、この奥谷トンネルがヤレヤレ峠ということになるのだろうか。標識などがないので現場では確認できなかった。また峠の名の由来が分かるような立て札も残念ながら見つからなかった。

 奥谷トンネルを出た左に小さなものだが、「ひこじいのトンネル」と書かれた碑が立っている。碑の表にただそう記してあるだけで、これも何のことだかよく分からない。

 

 

 峠を過ぎて牟岐町側はやや眺めがよくなる。しかし同時に道もよくなった。途中から2車線の快適な道路となって下って行く。よく見るとその道路の所々に旧道の名残が残っている。昔は海南町側の林道とたいして変わりがない道であったようだ。今もこうして残骸があるところをみると、2車線路となった改修工事は比較的最近行われたものと思われる。

 海南町側の林道は昔とあまり変わらぬまま現役で、今も走って楽しいが、牟岐町側の新しい県道の脇に追いやられた旧道のかけらは、ただ昔を懐かしむだけで通ることも出来ず、寂しいかぎりである。

眺め
牟岐町側の眺め

牟岐町側の道
牟岐町側の道 2車線の県道

 県道を下り終え国道55号に出た所では、ちょうど国道に架かる橋の架け替え工事の真っ最中だった。ここでも古い道と新しい道との交代が進んでいた。

 後日図書館で調べたところ、峠名の由来は峠より奥で出るといわれた化け物に炭焼が襲われ、峠まで命からがら逃げてきて、「ヤレヤレこれで助かった」と言ったというのが始まりだそうだ。また「ひこじいのトンネル」とはトンネルの開通に一際功労のあった山西彦太郎氏を称えたものだった。トンネルは1953年に貫通し、1971年に奥谷トンネル121mとして拡張されている。


 峠道状況(1997年9月)

 旅のついでに気軽にちょっと立ち寄ってみてはいかが。


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