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日本三大  No.14
  
トンネル三大峠
トンネルの峠を三つ選んでみました
初掲載 2013. 8.12  (修正 2014. 3.30)
  
峠名
(各ページにリンク)
所在地
道路名
トンネル名
天城峠
静岡県
伊豆市・河津町
国道414号旧道
 天城隧道 (天城山隧道とも)
笹子峠
山梨県
大月市・甲州市

国道20号旧道
 笹子隧道
大平峠
木曽峠
長野県
飯田市・南木曽町
県道(主要地方道)
8号・飯田南木曽線
 大平トンネル(正式な名称は不明)
(やっぱりスノーシェッドか?)
  

 やはり峠は、トンネルなどではなく、大空の元、峰の高みを正々堂々と越えて欲しいものだ。 しかし、利便性を求めるのが人の常。特に自動車社会の到来に応じ、古くからある峠の下に車道のトンネルが開通したケースが多い。 それならいっそのこと、トンネルの峠として、味わい深いものを拾い出してみようと思い立った訳である。
 
 ただ、毎度のことながら、トンネルの部分を「峠」と呼んでいいかと自問する。 トンネルの上には古くからある本物の峠が存在し、トンネルは物理的には全く別物である。 しかし、トンネルの坑口に「何々峠」と大きな看板が立っていたりすることも事実である。 正確には「何々隧道」とか「何々トンネル」と呼べばよいのだが、このホームページの名は「峠と旅」である。 よって、ここでもアバウトに、トンネル部分も「峠」だと解釈させて頂く。
  

<選択基準>
 さて、どんな基準でトンネルの峠を選ぶかとなると、やはり峠の佇まい、いや、トンネルの佇まいだと思う。どれ程味わいがあるかと言うことだ。 標高が高い所にあるトンネル(国道では金精トンネルが高い)とか、長さで言えば雁坂トンネル(
雁坂峠)や権兵衛トンネル権兵衛峠)など近年開通した長大なトンネルがある。自動車専用道にまで手を伸ばせば、関越道の関越トンネル(三国峠や中央道の恵那山トンネル(神坂峠)などという、超長大なトンネルも存在する。しかし、高さや長さなどの物理量で選ぶ訳にはいかない。 ここはやはり人の感性、言ってみれば、私の好き勝手で選ぶのであった。
 
 味わいとなると、どうしても古い峠のトンネルとなってしまう。 しかし、峠道は既に廃道となり、トンネルの坑口もコンクリートで塞がれてしまったような峠を選んでみても仕方がない。 そこで、今でも現役で車が越えられる峠を選んでみた。その結果、天城峠、笹子峠、大平峠(別名木曽峠)が3大峠である。

  
天城峠(天城隧道)
  

天城峠 (撮影 2001. 1. 4)
天城隧道のこちら側が静岡県伊豆市(旧天城湯ケ島町)、反対側は同県河津町

  

 天城隧道は、何と言ってもその石積みの「景色」が素晴しい。 加えて有名な小説の舞台でもあり、1位に選ばれる価値はたっぷりだ。 つい最近、NHKのBSテレビで「有りがたうさん」という映画が放映され、昭和11年頃の天城隧道を動画で見る機会を得た。 感動ものであった。これも選定に大きく影響する。
 
 文献(角川地名大辞典)によると、天城隧道は明治33年(1900年)着工、明治38年(1905年)開通だそうだ。 延長446m、標高709m(峠にある看板より)。
 
 昭和45年(1970年)には標高で78m低い所に新天城トンネルが開通し、天城隧道の道は旧道となった。 新トンネルと区別する為か、天城隧道は「旧天城トンネル」と呼ばれたり、国土地理院の地形図では「天城山隧道」と記載されている。
  

  
笹子峠(笹子隧道)
  

笹子峠 (撮影 2000. 4.30)
笹子隧道のこちら側が山梨県大月市、反対側は同県甲州市(旧大和村)

  

 大月市側から見るトンネル坑口は堂々として威厳があり、立派である。 2005年に訪れた時には、文化庁により登録有形文化財に指定された旨が示されてあった。 ただ、甲州市側のトンネル坑口は、ほとんど平凡なコンクリートになってしまっているのだが。
 
 登録有形文化財の看板によると、このトンネルは昭和11年(1936年)の着工、昭和13年(1938年)3月の完成とのこと。 標高は1,096m(文献や峠にある標柱より)。
 
 昭和33年(1958年)には新笹子トンネルが開通し、国道20号・通称甲州街道は、そちらを越えることとなった。 笹子隧道は国道としては僅か20年程の現役期間であった。天城隧道に比べると短命である。
 
 トンネルの構えも立派だが、1990年代初頭に初めて笹子峠を越えた時、大月市側の峠道に石畳の様な路面が少し残っていたような覚えがある。 古い歴史を感じさせる道であった。残念ながら間もなく全線がアスファルト舗装化され、今となっては幻だったかの様である。
 
 隧道の上の峰には本来の笹子峠があるが、トンネル脇から比較的簡単に登れる。峠は藪の中の小さな切通しだ。 ここを高遠の殿様も越えたのかと思うと、何だか寂しい気がする峠であった。
 
 今年は中央道の笹子トンネルで大事故があった。この笹子隧道はどんな思いで、見守っていたことだろう。 私事だが、今年は山梨県人になった最初の年でもある。この峠は身近な存在という訳だ。暫くぶりに訪れてみたい。
  

  
大平峠/木曽峠(大平トンネル)
  

大平峠/木曽峠 (撮影 2013. 5.21)
トンネルのこちら側が長野県飯田市、反対側は同県南木曽町

  

 これをトンネルと呼んでいい代物か、ちょっと迷う。しかし、ある行政が立てた看板に「大平トンネル」とあったので、やはりトンネルということにする。 しかし、様相は大きな土管である。もう、味わいの域を脱っし、不気味な存在だ。 トンネルの上を見ると、そこには空が広がる。トンネル上部が露出しているのだ。旧峠は多分そのトンネルの上あたりにあったのだろう。
 
 このトンネルの詳細は不明だ。トンネル銘板などがない。ネット上などでも情報は少ない。坑口上部の表札に「木曽峠」とあるばかりだ。 道の改修が明治38年(1905年)なので、その時にこのトンネルも作られた可能性は高い。期せずして天城隧道と同時期である。
 
 偶然ながら、天城隧道も笹子隧道も登録有形文化財に指定されていた(その後、天城隧道は重要文化財に)。 一方、こちらの大平トンネルは、その様なこととは一生無関係だろう。しかし、いまだ新大平トンネルなどは作られていない。 大平トンネルは主要地方道の峠として現役なのだ。 天城隧道や笹子隧道は現役を退き、勲章を貰って楽隠居の身だが、大平トンネルは老体に鞭打って今も働き続けているといった感じだ。 何となく、こちらの肩を持ちたくなる。
  


その他のトンネル
  

 トンネル三大峠以外に、以下に思い付 いた峠を幾つか掲載する。
  

旧伊勢神トンネル(伊世賀美隧道) (撮影 2013.11.11)
一見、天城隧道と同じようだが、このトンネルの前に立つと、ちょっと怖い(伊勢神峠
 

棚橋隧道 (撮影 1991.12.29)
とにかく狭い(仮称:棚橋峠
 

鳩打隧道 (撮影 2001. 4.29)
扉があるトンネル(鳩打峠
 

清内路峠 (撮影 1997.12.28)
ここはトンネルではなく、スノーシェード(清内路峠
今は通行止
 

大峠隧道 (撮影 1997. 8.11)
長く険しい峠道のトンネル(大峠
今はもう通行止らしい
 

厚雲隧道 (撮影 1992. 7.20)
北海道の峠(厚雲峠
今はトンネルは封鎖されている
 

  
  
 更に、次のようなトンネルの峠も思い 出される。
・井内峠隧道
井内峠
・大木屋小石川トンネル
(仮称:大木屋小石川峠
・乙見隧道乙見山峠
・尾平越隧道尾平越
・志賀坂峠 志賀坂トンネル志賀坂峠
・天辻隧道天辻峠
・長尾隧道長尾峠
・細尾トンネル細尾峠
・水呑トンネル水呑峠
 
 長いトンネルより、こじんまりしたトンネルの方が、かえってその坑口の表情が豊かな気がする。私がまだ訪れていない小さな峠で、面白そうなトンネルがま だまだあることだろう。

 
<1997〜2013 Copyright 蓑上誠一>
  
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