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 鳩峰峠    奥羽山脈を東北のいろは坂で越える


鳩峰峠
鳩峰峠  山形県側を望む

 鳩峰峠は明るく開けた峠だ。乳牛の放牧が行われるそうで、なるほど高原の雰囲気がある。峠でノンビリしていると三々五々車やオートバイが上って来て峠で一服、ひとしきり景色を眺めてはまた走り出し、来た時とは反対側に下って行く。中には原付バイクや自転車までやって来る。それ程交通量が多い訳ではないが、かといって一人寂しく孤独に浸れる様な所ではない。どの通行者も仕事や用事の途中といった感じはなく、ちょっと彼女とドライブに来た、友人とバイクツーリングで通りかかったといった風だ。

山形県側
山形県側  峠の道標

 鳩峰峠は山形県の高畠町と福島県の福島市を結ぶ旧主要地方道福島赤湯線、現在の国道399号線の県境の峠である。標高は785m。
 高畠町からはしばらく走り易い2車線路が峠に向け東に伸びている。途中「この先9Km 鳩峰峠」の道標が掲げられている。道標の下側には「紅葉の山形路」とある。こうした峠の道標はあまり見掛けたことがない。さてその鳩峰峠とはどんな峠か、これからどのような峠道が待ち受けているかと期待が膨らむ。

 山並みが迫ると道幅は狭くなってくる。下有無川に掛かる大沢山橋を渡った先で更にぐんと狭くなった。間もなく交通規制の看板が出てくる。峠前後8.2Kmは時間雨量30mm、連続雨量120mmで通行止とのこと。さっきから気になるが時々パーンという音が周囲にこだまする。どうやら周囲は狩猟区域のようだ。

通行規制
通行規制の看板

峠を見上げる
山形県側  道が幾重にも重なっている

 それまで真東にほぼ直線的に伸びていた路は、突然目の前に現われた治山ダムのコンクリートの壁に、行く手を塞がれた格好になる。治山ダムの上方にそびえる山並みは山肌が露出し、そこに道が通っている。遥かあそこまで登るのか。
 道は治山ダムを迂回して大きく右にカーブする。そしていよいよ峠道の上りが始まった。時々気になって上を見上げる。すると頂上付近まで見渡せる所があった。これから進む道が幾重にも重なり右往左往している。

 途中道端のコンクリート壁から唐突に水が流れ出ている。近づいてみると沢水がパイプで引かれているのだった。側にコップもあるから多分飲める水だろう。喉を潤し、夏の日差しで汗ばんだ顔や腕を洗い、そのままタオルで拭くこともなくまた走り出す。
 鳩峰峠の道は「東北のいろは坂」と呼ばれているそうだ。その名の通り山形県側は谷筋に沿って道が何度も曲りくねり、またその様子が眺められる。壮観である。まさしくこれがこの峠道の1番のセールスポイントだと痛感する。
 ちなみに私が棲息する近所にも「多摩のいろは坂」というのがあるが、夜な夜な車がドリフト走行し、バイクがけたたましい排気音を出す。こちらのいろは坂はセールスポイントどころか住民の安眠妨害の元凶となっている。

つづら折れ
山形県側  東北のいろは坂

峠より福島県側を望む
峠より福島県側を望む

 峠から山形県側は険しい谷や山並みが、福島県側は広々とのどかな高原風の景色が広がり、どちら側も眺望が非常に良い。これが第2のセールスポイントだ。
 峠にはむくどりの夢童話碑なるようなものまで最近作られ立っている。この峠道の直ぐ北には二井宿峠を越える国道113号がほぼ平行して走っており、用事で通るならそちらの方が早い。こちらはわざわざいろは坂を走って遊び気分で来る道のようで、観光の色彩が強い。誰でも気軽にドライブに来る様な峠ではやや俗っぽいが、しかしそこをあきらめてしまえばまあまあ楽しめる。
 私が来る前から自転車で来てその童話碑の前で寝そべっている者が居る。そこらをうろうろ歩き回って写真など撮っていると目が合って何となく気まずい。そろそろ福島県側に下ることとする。

 福島県側は峠近くは空が大きく広がった高原風だが、間もなく木々に覆われあまり視界がきかなくなる。5Kmほど下ると宮城県と書かれた標識を過ぎる。道は一旦宮城県の七ヶ宿町を通過してまた福島県に戻ることとなる。
 宮城県に入り程なくして止まれの標識にぶつかる。こちらは狭いとはいえ天下の国道、ここら辺りでは当然優先道路と思っているので不可解に感じる。分岐の周囲には数件の民家と公民館、消防ポンプ置場などがある稲子集落、元仙台藩山守足軽村である。左に分岐するのは国道113号に通ずる稲子峠越えの道で、途中未舗装区間もある。このまま国道399号を延々福島市街まで行くのもよいが、稲子峠をちょっとつまみ食いするのも楽しい。しかし出た先の国道113号では忙しい用事の為にせかせか走る車に追い立てられることになる。

稲子峠への分岐
稲子峠への分岐


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