ホームページ★峠と旅
![]() 甲子峠 奥が下郷町 |
国道289号、福島県南会津群下郷町と西白河群西郷村の境、甲子峠。「かしとうげ」または「かっしとうげ」と読むそうだ。私はかっしとうげと呼んでいる。何となくその方が響きがいい。 |
片方の未開通区間は福島と新潟の県境で全く道が無く、初めから問題外だが、甲子峠の方は未開通区間を別ルートで林道が繋いでいる。ただし地図に林道が書いてあるからといっても、実際に行ってみると通行止だったということがよくある。通り抜けられない峠道ではつまらない。地図を睨みながら行くべきか行かざるべきか悩んでしまう。ただ下郷町側は国道を示す赤い線が峠まで達している。悪くしても峠の上に立つ事はできるだろう。とにかく行ってみる事とした。 |
まず無難に下郷町側からアプローチする。早速「白河方面甲子峠 通行不能」と出てきた。「通行止」ではなく「通行不能」である。「通行止」では諦めるよりないが、「通行不能」なら無理をすれば通れるのではないかという期待がある。かえって闘志が湧くというものだ。 |
![]() 通行不能の標識 下郷町 この先が峠 しかし通行止だった |
ところが時間が過ぎるとまた気になってくる。性懲りも無く後日西郷村側よりアプローチ。 |
![]() 国道289号 西郷村側の行止り この先は甲子山登山道 |
残った疑問は国道の終点らしきものが無いことだ。また新道と旧道による細長いループを1周した。良く分からない。怪しいのは旧道途中にある元湯甲子温泉旅館だ。引き返し旅館の敷地内に車をおずおず乗り入れる。旅館の母屋を過ぎるとベンチで行く手を塞がれた。その先まだ道がある様だ。車を降りて歩く。細い砂利道が川の方へ下っている。すると国道標識が現われた。「甲子山登山道」とあり、その先は木の橋を渡って山道と続いている。間違いなく国道の終点、未開通区間の始まりである。遂に見付けた。 |
峠に続く林道へは白河市街から国道を来る途中、右への「雪割橋」の分岐に入る。阿武隈川に掛かる雪割橋を渡り尚も進む。ただしあまり真っ直ぐ進むと行止りになる。適当に勘を働かせて右折する。うまくいくと目的の林道に乗る。失敗すると何度も行止りに合う。私も迷ったので人には詳しく教えないのだ。 |
![]() 西郷村側林道途中 広々とした農耕地 |
山に取り付くと林道らしい林道になる。やや荒れも目立つ。道は二股に分かれ、右は羽鳥湖に抜ける。左が峠に続くが、本来そこにはチェーンが掛かり通行禁止らしい。今はチェーンが外されている。進入させてもらう。 |
![]() 甲子林道 超悪路 |
この甲子林道、本来通行禁止だけあって荒れている。悪路の上に超を付けてもよいくらいだ。実はこの悪路をよりによって2回往復する羽目になった。途中のゲート箇所から先は少し登った後、はっきりした峠も無く下りはじめる。しばらく下ったが峠らしい箇所に出ない。ゲート箇所が峠なのだろうか。日も暮れかかってきた。諦めて引き返す。ところがバイクの2人連れが後から下りて来たので尋ねてみると、もっと先に峠があるのだそうだ。その日は白河市街に宿泊し、次の日またでこぼこ道を飛び跳ねる結果となった。 |
峠は昨日引き返した所から1Kmも行かない所にあった。峠でゲートにより通行止、下郷町には行かれない。逆に過日下郷町側よりアプローチした時、途中の通行止が無くても峠から先、西郷村側には下りられなかったのである。ただしオートバイは別。ゲートの脇はここでもあまい。 |
![]() 峠のゲート この先が白河へ続く林道 手前が峠の広場 |
峠からは下郷町方面の眺めがいい。谷間を下って行く林道の道筋が見える。欲を言えばそこも走りたかった。そう何度も訪れる機会がある訳ではない。次はいつ来る事が出来るだろうか。次回はもう新道が完成したずっと後かも知れない。立ち去りがたい気持ちでまた悪路に揺られる事とした。 |
![]() 峠から下郷町方面を望む |
メールを頂きましたので以下に一部を掲載させて頂きます。 初めまして、たくさんの峠越え、オンラインで読ませてもらいました(全部ではないですが)。しかしこれほどまで良くも行かれたものと感心しています。特に、甲子峠。私も昨年の五月中旬に越えたので、大変興味深く見させていただきました。福島県側から峠を目指す時、不安を抱えながら走っていたら、鹿を見ました。林道を一人オートバイで(KLX250SR)走りながら、この先熊が出るかな?崖が崩れているかな、とおびえていると、目の前に大きな鹿が、・・・一瞬の事ながら私も、鹿もびっくり。 空が開けて来て、峠が近づき、しかし深い霧の中。峠についても景色は見えず、一瞬の切れ間から今まで来た道が見えた時のうれしさ、下りの握り拳大の砂利道、やっと越えたら今度は雨、そしてその晩泊まった「北温泉」の変わった雰囲気。なんと100年も建っている温泉宿です。一人旅で辛かったけど、今では印象深いものです。蓑上様も峠を越える前の不安、そして峠に立った時の満足感、多分同じ気持ちで峠を越えているのでしょうか。
甲子峠は私も特に印象に残っている峠のひとつです。「握り拳大の砂利道」も目に浮かんでくるようです。鹿に会ったのは幸運でしたね。クマでなくってよかった(^_^)。バイク旅で降られる雨は、私もいやと言うほど経験しているので、その悲惨さは身に染みて分かります。 一人旅は不安なものですが、それだからこそ心の奥底に刻み込まれる濃厚な旅ができます。仲間や家族と行く旅行も楽しくていいのですが、一人旅の味わいには替えられないものがあると思います。仮に峠がガスっていて何も見えなくても、一瞬の晴れ間に見えた景色が脳裏に焼き付き、忘れられない。それが一人旅じゃないでしょうかね。 「北温泉」というのを私は知らないのですが、そうした古い温泉宿に一人で泊るというのも、私は大好きです。旅情がありますよね。この話しを聞いただけで、私も何処か山間の寂れた一軒宿にでも行きたくなりました。 M.Aさんメール有り難う御座いました。 |