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鞍掛峠  行き止まりだが魅力のある峠道


< 1998/ 8/29 > メールを頂きました
< 1997/10/ 4 > 初掲載


鞍掛峠
鞍掛峠  奥が王滝村
 鞍掛峠は「行止りの峠」のページで簡単に載せた様に、峠にあるゲートが固く閉じられ行止りとなっている。木曽の御岳山の南西麓、長野県王滝村奥地の森林地帯一帯が一般者進入禁止となっているからだ。そのため岐阜県下呂町より県境を越える鞍掛峠は峠より王滝村側に入れない様にしてある。
 しかし下呂町側の峠道は非常に楽しい。V字の谷が大きく開き、その中を道がくねって登って行く。峠までの往復になるが、一度行ってみる価値はある(…と思う人は私だけではないはずだ)。 
 岐阜県中津川市の方より国道257号を北上し、舞台峠を2Km程で下り終ったところに写真の様に鞍掛峠へ右折の道路標識が出ている。実は下呂町側からも峠まで通行出来ないのではないかと不安であった。これだけデカデカと標識が出ているなら、どうやら行けそうである。峠はこの道路標識とは180度反対方向にある。右折というよりほとんどUターンして国道にほぼ平行して戻るかっこうになる。
 道路名は県道442号白草山公園線。なになに公園線というのはよくあちこちで見掛ける。「公園線」という響きは何となく観光気分で行ける様な道路を想像する。しかし私の経験ではとんでもない道ばかりであった。今回も鼻歌まじりで行ける道だとは到底思えない。ところで白草山とは鞍掛峠がある稜線上、北西にある山である。鞍掛峠は白草山と南東にある三国山の鞍部に位置する。峠の標高は1408mである。 
道路標識
峠への道路標識
白草山公園線
白草山公園線 ここより1車線
 草山公園線は最初は直線的な2車線路で前方にV字形の谷が待ち構えている。谷の懐に入り込む所から1車線になり、そこにある道路情報の看板には「落石走行注意」とだけある。これまであちこちで「通行止」の看板に何度となく泣かされてきた。ここはどうやら大丈夫そうでほっとする。
 1車線になってからしばらくは森林の中を進み展望はない。しかし一旦谷間の上に出ると谷全体が見渡せ、開放的である。V字の谷は直線的なため、ほとんどどこからも麓と頂上が同じ所から眺められる。こんな峠道はちょっとない。 
里
麓を望む
頂上
頂上を望む
 ある程度高度を上げたところから未舗装となった。公園線とはそうしたものである。そして道端にいやな物が目に入った。手書きで「通行止」と書いてある。小さな看板だから見落としたことにして先に進む。谷川を左岸に橋で渡り、快調にオフロード走行が続くかと思ったら、決定的にいやな物が立ち塞がった。ゲートが閉まっている。やはりだめか。未練がましく車を降りてゲートに近づくとカギが掛かっておらず、簡単に開きそうだ。 
ゲート
途中のゲート
 悪魔の声が耳元でささやく。それでもやましい気がしてしばらく迷ったが、意を決して中に入らせて頂くことにする。ゲートは手前に開く。車を一旦バックし、ゲートを開け終わったところで丁度車が1台上から下りて来た。開いたゲートの横で佇む私に軽く片手を上げただけで、さっさと通り過ぎて行った。ちゃっかりしている。こっちはゲートを越えた後、また車を降りてゲートを閉めるという手間が掛かるというのに。 
山岳道路
谷の眺めは壮観
 ゲートの先は更に展望が広がる。直線的な谷の中を、道は右往左往、行ったり来たりとくねくね曲がり、全く直線的ではない。
 途中で景色を眺めているとトラックが1台あとから登って来るのが見下ろせた。大きなエンジン音と砂利が跳ねる音がしたかと思うと、そのトラックは止まってしまった。どうやら4輪駆動ではないらしい。滑って上がれない。何度かトライしたが、遂に諦めてずるずる後ずさり。待避所でUターンして引き返していった。 
 場所により道幅は狭く、勾配もきつい所がある。崖は急だがガードレールは皆無の砂利道。景色は良くても運転中はよそ見など出来るものではない。特に峠に近づいた付近はちょっとしたスリルがある。鼻歌まじりでは命があぶない。 
峠
 峠の広場には車が3台止めてあったが人気はなし。5年前に来た時の記憶にある鞍掛展望台は健在だ。そしてゲートもご覧のように相変わらず固く閉ざされている。前回はこのゲートの反対側に車を止めて、恨めしく思ったものだ。
 ゲートの向こう、王滝村側に御岳山が眺められる(写真右上)。ただしそれ以外はあまり眺望はない。 
峠のゲート
峠のゲート
峠からの眺め
峠より下呂町側を望む
 対照的に今上って来た下呂町側の谷間は麓までずっと見下ろせる。そしてその先にはV字に切り取られた山並みが眺められる。
 この峠道は終始一貫この谷間の中だけで完結している。この谷間の中を道が通り、眺めはこの谷間とその隙間から覗かれる世界だけである。しかしこれほどシンプルなV字谷も珍しいのではないか。かえって気持ちがいいくらいだ。帰りも時々止まっては麓と頂上を眺めながら下ることにする。 
 鞍掛峠へは国道257号から県道442号白草山公園線に直接分岐してもよいが、もう一つ国道257号の舞台峠より入るコースがある。舞台峠にある峠の石碑の丁度反対側より広域基幹林道下呂・萩原線が分かれている。林道といっても今は完全舗装だ。道は一本道で国道とは対照的に交通量は皆無。鞍掛峠への分岐には大きな道標が出ていて迷う事はない。国道を走るより時間は掛かるが、お薦めである。
 尚、鞍掛峠と並んで同じ県境沿いに白巣峠(1430m)と真弓峠(1490m)がある。どちらも岐阜県の加子母村から王滝村に越える峠だが、少なくとも真弓峠への峠道は林道入口にゲートがあり入り込むことができない。白巣峠も確認してはいないが同じだと思われる。鞍掛峠は峠まで行けるだけしあわせと思わなければならない。 


 峠道状況(1997年9月)
 肝心な部分が未舗装だから4WDでなければならない、とは言い切れないが、トラックの例もある様にやっぱり4WDに越した事はない。路面は深い轍や亀裂などはなく、特別車高が低い車でなければ問題なし。ガードレールがなく、ましてや途中のゲートを自ら開けて入らせて貰うので、くれぐれも事故を起こさない様に細心の注意で走行したい。


メールを頂きました < 1998/ 8/29 >

 はじめまして、滋賀県の近藤といいます。初めて「峠と旅」を見せていただきました。全国規模にわたる豊富なデーターにただただ驚いています。「鞍掛峠」「八草峠」「八風峠」「地蔵峠」「天生峠」などなど以前、私も訪れたところもあり、とてもなつかしく感じました。
 休みになると地図をみて「山奥のこの道はどうなっているんだろう?」「こんなところに字名があるけど、人は住んでいるのだろうか?」などの思いで地図とにらめっこ。そうこうしているうちに、廃村、廃道、林道、峠などにただならぬ魅力を感じるようになり、休みの度に探し歩いていた(走っていた?)ものです。
 誰も通らない道、誰もいない峠、かつては子供たちの元気に遊ぶ姿、そして笑い声がきかれたであろう集落の跡、など、なぜか惹かれるもを感じます。たぶん今みるもの寂しさと、かつてあったであろう賑わいのギャップ中で、自分の中で勝手に物語や情景を作り上げているのだと思います。

 4年ほど前、大雨の中を王滝村から何十キロものあれた林道を走って鞍掛峠までいき、幸運にもゲートが開いていて通り抜けができたのは特に印象に残っています。でも「通り抜けられるのか」という不安と「雨の中崩落が起きないだろうか」という怖ろしさに加えて、濃霧、さらには鋭い石によるパンクなどの為、とてもじゃないけど景色を味わう、という気分ではありませんでした。当時は常時ゲートが閉まっていることや長野西部地震の崩落現場であったことなど知らず、本当に無鉄砲だったなあ、と感じます。

 先日、三重県と滋賀県を越える通称「安楽越え」と呼ばれる、「安楽峠」に6年ぶりくらいに行って来ました。私がこういうことに興味を持つきっかけとなった所で、アプローチは短いのですがダートもあって好きな峠でした。
 久しぶりに訪れたそこは道の状況は変わりなかったのですが、峠には何と焼けただれた2台の車が放置されており、峠の風景をみるも無惨なものに変えてしまっていました。誰が、何のためにこんなことを、という怒りを通り越して情けなさを感じました。ゴミ処理問題等々、くだらない連中がどんどん入り込んでくるのも現実なんですねえ。

 長々と書いてしまい申し訳ありませんでした。これからも「峠と旅」を楽しみにしています。お身体に気をつけてがんばってください。

 鞍掛峠を越えられた人もいるのですね。羨ましい。地図を眺めるのが楽しみで、峠や林道、廃村跡などに取りつかれたあたりは私とそっくりです。近藤さん有難う御座いました。


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