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<掲載 1999/ 4/18> 今月の峠 1999年 4月
福井県の三方町と言えば景勝地三方五湖が有名である。周囲を巡るレインボーラインは有料だが、それなりの価値がある。その日本でも有数の観光地の片隅より、世久見湾に面した漁業の集落、世久見に通じる峠が世久見峠である。峠の下には早くから世久見トンネルが通じ、国道162として世久見までは便がいい。しかし国道はその先の食見地区で行止り、西隣の小浜市には抜けられなかった。それも最近食見トンネルが開通し、見事に一本の国道となった。それまでは地元民以外にとっては食見海水浴場への専用道路の様であったが、小浜市街まで行けるとなると意味合いが違う。でも食見トンネルの先の海岸沿いの道は、まだまだ狭いところが多く、改修工事は続けられていくようだ。
そんな立派になってゆく国道とは裏腹に、旧道の世久見峠の道はさびれ、通行止めの看板が立つ。しかし峠に佇む地蔵尊には、地元の方によるものだろうか、新しい服が着せられ、花が供えられていた。
![]() 世久津側より眺めた峠 集落の背後にそびえる峰の中央部、窪んだ所が峠 僅かに峠道の道筋が見える |
![]() 世久津側の世久見トンネル入り口 右に峠への旧道が分岐する |
三方五湖の中のひとつ、三方湖に面した国道162号を峠に向けて進む。開けた平地の田んぼの先に世久津の集落が見え、その背後に峰がそびえ立つ。山肌に旧道の道筋が望める。小さな世久津集落を抜けると直ぐにトンネルがぽっかり口を開けていた。その直前を右に旧道が分岐する。通行止めの看板が立ち、越えられるか心配である。しかし小さな峠道でもあり、通れなかったら戻って来ればいいまでだ。ただし何が待っているか判らないので、運転だけは慎重にする。下から眺めた峠道から今度は平地が見渡せた。
心配をよそに峠には何の問題もなく到着した。切り通しを抜けた先にちょっと大きなコンクリートブロックのいおりがあり、小さな地蔵が並ぶ。そこまでの道とは対照的に、地蔵には花も供えられ、手入れがゆき届いている。傍らに歌が読まれていた。
![]() 峠より延びる林道 空が開けて開放的 |
![]() 林道からの眺め 三方五湖(だと思う) |
峠からは林道が一本分岐していた。峰上を走る道で、開放的である。三方五湖や若狭湾を控え、当然眺めもいい。その「広域基幹林道若狭幹線」とあった道は、どこまで続くか判らないので、残念だが途中で引き返した。それに世久見への下りが少し気に掛かっていたこともある。
![]() 峠より世久見に下る道 通行止の看板とゲート ゲートの脇はあいているが・・・ |
![]() 世久見への下りの途中 世久見湾に浮かぶ烏辺島(?)が見える |
峠から世久見への道には、またもや通行止めの看板と、おまけにゲートも設けてあったのだ。車はゲートの脇を通れるのだが、その先に何が待っているかが問題だ。登りの時よりも慎重に下る。案の定、途中崖崩れ個所の様な所に出くわす。しかし完全に補修された後で、無事通過。世久見湾の眺めもいい。安心したところで道を間違えた。現れた分岐で、舗装がいい方の道に入ってしまった。普通は本線を見極めるのに、その方法で間違いないのだが、舗装があまりにも新しすぎた。道そのものが新品なのだ。進むに従って全く逆方向に向かっているのが判った。南西へ行くべきところを北東方向に進んでいる。どこで引き返そうかと思っていると、あっさり行止りになった。思いもかけぬ道草だったが、それにしてもどこに通じさせようとしているのか、不思議な道であった。本線は峠から下りて来ると、分岐で鋭角に左に折れる方の道である。ちょっと間違い易い。
峠道は反対側と同じ様に世久見トンネルの直後で国道と合流した。しかしこちらは世久見漁港も近く、潮の香りがプンとする。世久津側が田んぼが広がる田園風景だったのが、峠を挟んでこんなにも雰囲気が違うのだ。トンネルを使ってあっと言う間に駆け抜けるより、峠を越えてじっくり変化を味わうのもいい。