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発荷峠  東北有数の観光地十和田湖を望む峠

はっか とうげ


<初掲載 1999.12.22> 「今月の峠 1999年12月」 として
 
発荷峠
発荷峠  国道103号の峠
手前が秋田県小坂町 十和田湖がある側
奥が同県鹿角市 直ぐ先で右に県道2号十和田大館樹海ラインが分岐
 
発荷峠展望台
この先の坂を登り詰めたところが峠 手前に十和田湖の眺めが広がる
右側に駐車場があり、正面の建物が峠の茶屋
 はっかとうげ。音の響きのいい名前だ。最初に「発荷峠」の漢字を見た時は、どう読むのか分からないことも多いだろうが、一度読み方を覚えたら忘れられない峠名だ。由来なりを知りたいものだ。
 場所は秋田県と青森県の境にある
日本有数の観光地、十和田湖のすぐ南にある。カルデラ湖である十和田湖の外輪山に位置する峠だ。観光ガイドなどに十和田湖を眺める好展望地として紹介されることで一般的には知られている。
 しかし正確に言うと、峠からは十和田湖は見えないのである。峠より湖側に少し下ったところから眺めるのだ。距離にして数100m程度であろうか。なんにしろ、峠と展望台がある位置は違うことは確かなのである。

 

 峠道は、十和田湖に下る小坂町側がやや急で狭い坂道となっているが、紛れもない国道で、通行量はそれなりにある。また、ガイドブックが盛んに薦めるので、観光客がよくやって来る。勿論峠が目的ではなく、発荷峠展望台が目的である。
 展望台には駐車場があり、茶店が建っている。しかし夏まっ盛りに行っても、店は締まっていた。ちなみに今年(1999年)は展望台が工事中で、そのせいかもしれない。
 展望台の近辺には、「発荷峠展望台」とか「峠の茶屋」、バス停「発荷峠」、「発荷峠」の標柱などなど、「峠」のオンパレードだ。しかし、しつこいようだがここは峠ではないのだ。肝心な峠には市町境であるため、道路の左右に別れて「小坂町」と「鹿角市」の標識が立っている。しかし、峠に「峠」の文字は見当たらないのである。「峠」の文字はみんな展望台に取られてしまった。
夏の発荷峠展望台
夏の発荷峠展望台
木の看板に「発荷峠展望台」と書かれている

 

冬の発荷峠展望台
冬の発荷峠展望台
雪に埋もれて、勿論観光客など一人もいない
 発荷峠の峠道は、険しい峠道でもなく、観光地化されてしまっているので、この「峠と旅」に本来なら登場するような峠ではない。しかし時期が異なれば、その様相は一変する。

 あれはもう6年近く前の正月元旦であった。それまでも何度か訪れたことがある十和田湖だが、冬期は初めてである。積雪の中を鹿角市側より峠を目指した。普段雪道に慣れていないので、かなり緊張してのドライブだ。通る車もなく、心細いかぎり。峠を過ぎて、見付けた展望台の駐車場に車を乗り入れ、ほっと一息つく。見ると展望台があるので、寒さの中、車から出て誰も居ない展望台の上に立つ。幻想的であった。モノトーンの世界の中に、湖は静かに佇んでいた。

 

冬の十和田湖
峠の展望台より冬の十和田湖を望む
氷と雪の中で湖は静かに佇んでいた

 

 その時の印象が強いので、発荷峠をここに載せたいと思ったのだ。

 今年の夏、また峠を訪れた。残念ながら展望台は工事のため立ち入り禁止で、同じ位置からの湖の写真を撮ることはできなかった。代わりに道路脇から眺めた湖は、冬とは全く違って、穏やかな様子であった。

十和田湖の眺め
夏の十和田湖の眺め
穏やかな姿を見せる

 

発荷峠の木の柱
「発荷峠」と書かれた木の柱
道路脇に立つ
 
 冬期に訪れたことが無ければ、この発荷峠は単なる観光地のひとつに過ぎず、ほとんど記憶には残ることはなかったろう。あの眼下に広がった白と黒のモノトーンの世界がそれほど印象的であったのだ。

 垣間見た東北、雪国の世界は魅力的であった。ただその冬期の旅のお陰で、我ジムニーは氷と化した道の上で、スケートを始めてしまい、溝にはまってボディーに見にくい痕跡を今に残すこととなった。

 


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