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ヤマビコ峠 誰が呼んだかヤマビコ峠
やまびことうげ (仮称)


<初掲載 1999. 7.15> 今月の峠 1999年 7月 として

ヤマビコ峠
ヤマビコ峠
手前が檜原村、奥が奥多摩町

 東京都民の奥座敷(?)、奥多摩へ行く時はみんな青梅街道を走って行く。あるいはあきる野市(ちょっと前の武蔵五日市)の方からだと奥多摩周遊道路(以前の奥多摩有料道路)を通り、小河内ダムの上流に出るのも一般的である。その両方を使って周遊コースとすればなお楽しい。
 しかし青梅街道はあまりにも一般的過ぎるので、夏場や紅葉の時期には非常に混雑する。また奥多摩周遊道路は渋滞にならないまでも、行楽の車や特にオートバイが頻繁に走っていて、景色など眺めながらゆっくり走ろうなんて許されない道なのである。
 そこで登場するのが今回の峠道である。ここを使えば静かな山道のドライブを楽しみながら奥多摩まで出られるのだ。
 

勝北峠
神戸岩
大きな岩の間を沢が流れる
 あきる野市の西の奥、名前だけは以前のままだが今は見違えるほど立派になったJRの武蔵五日市駅を右に見て、県道上野原五日市線をさらに西に進む。この県道は以前は奥多摩にしか通じていなかったが、何年か前に甲武トンネルにより山梨県の上野原町にも通じるようになったものだ。
 あきる野市から檜原村に入り、山並が迫ってきなたと思う頃、本宿という所でT字路に突き当たる。奥多摩に出るには左に折れて、奥多摩周遊道路に向かうのが普通である。右に折れても地図上では行止りで、実際に行ってみたらやっぱり行止りだった。看板にもこの先通行不能と出ているので、地元車を除けばどの車もみんな左折しようとする。左折車線にずらっと並んだ車を尻目に、こちらは空いた右折車線を使って訳知り顔で右折するのだ。ちょっとした優越感に浸りながら、北秋川に沿った道を更に進んでいく。
 確かにそのまま真っ直ぐ行くと車が通れる道はなくなってしまうので、途中神戸岩(かのといわ)なる名所案内に従って右折する。これが今回の峠道の始まりである。
 道は直ぐにも狭くなり、人家の軒先を抜け、キャンプ場のロッジの脇を通り、トイレもある神戸岩駐車場もパスして、こんなとこ車で進入していいのかと不安になった頃、駄目押しで不気味なトンネルが現れる。岩に掘られた素堀りの様なトンネルで、距離は短いのだが照明が無く、中でカーブしていて真っ暗だ。普通の観光客ならここで引き返す。でも峠を越えたいなら恐る恐る入り込まなければならない。付近は散策している歩行者なども居るので運転はゆっくり慎重に。
 トンネルを抜けると左手に東京都屈指の名所?神戸岩の全貌が姿を現す。

 

 神戸岩なる裂けた大きな岩の間を清流が流れている。夏などは清涼感があり、なんとこの名所の河原でちゃっかりキャンプしている者も居たりする。
 神戸岩の見学もそこそこに、その先に進もうとするといつもの通行止の標識が立ちはだかる。関係者以外進入禁止だ。そこは目をつぶって入らせてもらう。
 時々本当に通行できない時がある。最近では去年(1998年)の6月前後は土砂崩れか何かで、ゲート封鎖されていた。また冬期は特に注意が必要だ。ある年の1月、ジムニーにスタッドレスタイヤを付けて挑んだが、どうしても滑って途中で上れなかったことがある。通れなかった時は奥多摩周遊道路に迂回するのが残念でならないのであった。
 道は標識によると鋸山林道神戸線。簡単に神戸林道とも呼ばれるようだ。
神戸林道
神戸林道を行く
神戸岩の付近

 

未舗装の神戸林道
未舗装時代の神戸林道
 10年以上前の神戸林道はおじけづく程ひどく荒れた未舗装路であった。流水で道に大きな溝が掘れていて、冷や汗をかきながらバイクで登っていった。
 その後徐々に改修され、今では全線舗装とあいなった。ただ道幅は以前のままの所も多く、ほとんど一車線分しかない。待避所も少ないので、対向車が来ると離合は厄介だ。
 道の途中はあまり展望がないが、舗装化されてから少し眺望が開けた感じがする。特に途中で道幅の広い右カーブがあり、車も楽に停められスペースがあり休憩にはちょうどよい。眺めもまあまあだ。
 峠の数百メートル手前の最後のヘアピンカーブが、昔は唯一のビューポイントであった。ある時バイクで登ってくると、そこでオフロードバイクのかわいい女の子の2人連れが眺めを楽しんでいた。いろいろお話などしたいなとは思ったが、こちらは悪路に引きつった顔が修復でず、メットも取らず少し言葉を交わしたまま別れてしまった。残念。

檜原村側の景色
神戸林道一番のビューポイントからの眺め

 

 そのビューポイント部分も舗装されガードレールも設けられたが、そのガードレールに「ココはヤマビコ峠です」と黒いマジックインキで書かれてあるのを見付けたのは、つい最近のことである。
 この峠の名前はこれまで不明だったので、神戸峠とか鋸山峠なんて差し障りのない仮称を付けるところだった。ヤマビコ峠命名の真偽は定かでないが、いい名前なのでこれからそう呼ばせてもらうことにする。
ガードレールに「ヤマビコ峠」
ガードレールに「ココはヤマビコ峠です」

 

秋の峠
秋の峠
登山客の車が多い
 峠は道幅が広くなり小さな広場の様になっていて、登山シーズンともなるといつも何台かの車が止められている。中には発電機を回し、大きなアンテナを立てて無線でもしている者もいて騒々しい。でも一度冬期の峠越えができた時は、峠に10cm程の雪が積もり、タイヤの跡どころか人の踏み跡も全く無く、静かそのものの峠であった。思わず大の字に雪の上に倒れ、人間スタンプを押して帰ってきた。
 峠は信仰の山、御岳山より西へ伸びる稜線上にあり、峠より東に向かう登山道を登れば直ぐに鋸山、西に登れば御前山へと通じる。
 車やバイクにまだ縁がない昔、この登山コースを歩いた覚えがある。岩がごつごつしている鋸山を下りてくると、ひょっこり車道が現れたのにはびっくりした。こっちはこんなに苦労して歩いているのに、車で登ってくるとは何事か、と思ったものだ。しかし今では喜んで車でやって来ている。

 

 峠より奥多摩町側は鋸山林道大沢入線と呼ぶ。峠近くより険しそうな林道の道筋が眺められる。こちらの林道は比較的早くから舗装されてはいたが、土砂崩れ跡などがしばしば残っていて、やはり走りずらかったものだ。最近は路面状況も良く、道幅もかなり改善された。
 この峠道が全線に渡り舗装路になってから、僅かながら通行量が増えた様な気がする。でもあまりみんなが通るようになると、すれ違いに苦労するので痛し痒しだ。この離合の問題さえなければ、舗装されたことで路面も安定し、昔みたいに4DWやオフロードバイクじゃなければ通れないなんてことはなくなった。普通の乗用車でも無理なく越えることができる穏やかな峠道である。
奥多摩町側の景色
奥多摩町側の大沢入林道の遠望
眺めはいい

 

紅葉
峠道途中の紅葉
 奥多摩町側を下ると秋には紅葉も楽しめ、檜原村に比べると眺望もいい。単に奥多摩町に抜ける道として、さっさと通り過ぎるのはもったいない。時にはこの道をハイキングしている人達に出くわすこともある。こちらが車で走っているのが、恥ずかしい思いであった。
 考えてみるとこの峠道は日本の首都東京都の中にあるのだ。車が通れる峠としては東京都の中で一番じゃないだろうか。

 さらに下り奥多摩町森林組合の横を過ぎると、もう直ぐ終点である。

 

 峠道はJR青梅線の終着駅、奥多摩駅にほど近い弁天橋の袂で国道411号青梅街道にひょっこり出て終わる。右に行けば駅、左に進めば奥多摩湖である。
 道の入り口には森林組合の看板やら林道標識やら鋸山登山口の案内板やらにまじって、例の通行止の標識がいつも立っている。林道関係の車両を除きこの先600m通行禁止だそうである。
 ほんとに通行できない時には、しっかり通行止と書かれた看板が出ているので、その時は遠慮して入り込まないようにしているのだった。
奥多摩町側入り口
奥多摩側の峠道の入り口


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