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大洞峠
 
おおぼら とうげ
 
偶然出会った峠道

<初掲載 2001. 1.10> 「今月の峠 2001年1月」として
 
渋峠
大洞峠 (撮影 1997. 9.22)
手前が岐阜県白鳥(しろとり)町、奥が同県明宝(めいほう)村
正面に「たずさえの森」の石碑と看板が立つ
その看板の右より遊歩道が続く
 

峠にある「たずさえの森」の看板
「岐阜市・明宝村分収造林
たずさえの森事業契約概要」
 最初は峠を越えるという意識はなかった。
 いつものことながら、当てどもなくさまよう様な旅の最中で、岐阜県内をジムニーでうろついていた時だった。白鳥町で阿多岐(あたぎ)というダムに出くわし、ダム湖やその近くにある「つべた水」の石碑などを見て回ったりした。
 その後、どこか面白そうな林道はないかと、ツーリングマップを調べ、これからの行き先を思案することにした。すると、「ダートのガタガタ道」とコメントされている道が、東隣の明宝村に通っているのが目にとまった。道の名前などについては、何も記されていない。
 
 本当は、概ね西の方へ向かいたいのだが、その道は完全に東に向かっている。でも、まだ通ったことがないので、行ってみることにした。もう大抵の道は訪れたことがあるので、こうした未経験の道は貴重なのである。
 
 実際に訪れてみると、コメントとは違って、どこまでも舗装された道が細々と続いている。あまり周囲に視界はない。でも道を登るに連れて、これは峠道なんだと気付き始めた。白鳥町と明宝村の境が、きっと峠になっている筈だ。どんな峠だろうか、楽しみである。ツーリングマップには峠名は記されていない。名前のある峠だろうか。

峠を別の角度から見る
手前が明宝村、奥が白鳥町
狭い舗装路が通る
 

峠より明宝村側を眺める
 道の前方が明るく開けた。そこが峠だった。峠の明宝村側には視界が広がっていた。

 峠には石碑が立ち、峠の名前が書いてあるのかと思ったら、「たずさえの森」とある。脇に看板があり、それによると、明宝村の杉の造林事業のことを指すらしい。看板には峠名が記されていた。「大洞峠」。名前が分かったのは収穫だ。
 峠から植林された杉林の中へ向かって、まだ新しい遊歩道が築かれていた。その終点には確か東屋などが立ち、展望所となっていたと思う。杉山の眺めを見ながら、ちょっとした休憩にもってこいの場所である。
 峠の道路脇に「水源かん養保安林」の看板があり、それにより道の名前は「大林林道」であることも分かった。

 
 明宝村側に下り始める。途中、峠の方向を見上げたが、林が邪魔をし、峠の在かははっきりしない。峰の稜線がなだらかで、峠が抜けている鞍部自体が、あまり明確ではないのだ。
 道を下り終えると、大型車通行不能の看板が道路脇にポツリと立っていた。結局、大洞峠の道は全線舗装済みで、まさしく「大型車通行不能」と言う程度の険しさのみを残す峠道であった。
 ダートについては期待外れだったが、それでも偶然またひとつの峠を越えることができた。ちょっと得をしたような気がした。
 
 最近のツーリングマップルを調べてみると、現在の道の名前は、県道82号・白鳥明宝線となっている。その前は、県道明方白鳥線だったらしい。明方(みょうがた)とは現在の明宝村の旧村名である。県道に昇格する更に前が、林道大林線ということだろうか。
 峠の標高は1,150m。峠の白鳥町側には六ノ里(ろくのり)という地名が見られ、牛道川が西走する。明宝村側の地名は寒水(かのみず)で、峠から東に流れ出す川が寒水川である。六ノ里と寒水の地名は、右に挙げた写真に写る看板にも見られた。
 
 大洞峠を越えた後、暫くこの峠のことについて思い出すことはなかった。最近になって、アルバムに峠の写真があるのを偶然見つけ、「大洞」とか「大林」の名前を再び見出したのだった。断片的だが、峠を越えた時のことも、ポツりポツりと思い出す。ここにもまたひとつ小さな旅の思い出があった。何だかまたちょっと、得をしたような気がした。

明宝村側にある通行止の標識
道路情報
明宝村寒水〜白鳥町六ノ里
大型車
通行不能
 
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