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蛇石峠
  じゃいしとうげ  (峠と旅 No.232)
  奇岩・蛇石を訪ねつつ、ほのぼのとした旅を楽しむ峠道
  (掲載 2015. 3.19  最終峠走行 2003. 7.27)
   
   
   
蛇石峠 (撮影 2003. 7.27)
奥が静岡県(賀茂郡)南伊豆町蛇石(じゃいし)
手前が同県(賀茂郡)松崎町岩科南側(いわしななんそく)
道は県道121号・南伊豆松崎線
峠の標高は330m(文献より)
峠は何の変哲もない狭い切通し
   
   
   
 最近、国士峠(こくし)や鹿路庭峠(ろくろば)を再訪し、それを掲載してみた。その折、過去の伊豆半島の旅をあれこれ思い返していると、懐かしい峠がいろいろある。どれも小さな峠道ばかりだが、それなりの味わいがあった。こうなったら、伊豆半島の峠を更に取り上げてみようと思う。
   
<所在>
 伊豆半島の天城山(あまぎさん)とは、正確には天城連山(山脈)と言うべきで、 東の遠笠山(とおがさ)から万二郎岳(ばんじろう)、万三郎岳(ばんざぶろう、伊豆の最高峰)、猿山、十郎左エ門山、 長九郎山と続く、伊豆半島をほぼ東西に連なる山々の総称だそうだ。 天城山は日本百名山の一つになっている。 峠で言えば東の端に鹿路庭峠、中央に天城峠、猿山と十郎左エ門山の間に諸坪峠(藷坪峠、しょつぼ)がある。
 
 この天城山脈の長九郎山付近から南西へ派生する尾根があり、途中大鍋越、婆娑羅峠(ばさら)、 そして今回の蛇石峠を過ぎ、南伊豆町の波勝崎(はがちざき)付近で伊豆西海岸に尽きている。 居並ぶ峠の中で、蛇石峠は海岸まで僅か5、6kmの距離しかなく、標高も330mと低い。 我家は325mの台地に建っているが、ほとんど変わらないじゃないか。
 
<南伊豆町、松崎町>
 婆娑羅峠の直ぐ南側から、西の蛇石峠へと続く峰とは反対に、東へと続き、途中、八声峠(やこえ、八声トンネル) を過ぎ、東海岸の弓ヶ浜に至る峰がある。 これらの峰に囲まれた伊豆半島最南端の地が南伊豆町と言える。 八声峠を越えれば東隣りの下田市に通じ、蛇石峠を越えれば北側の松崎町に至る。 こういう位置関係だ。
   
<峠名>
 蛇石は「じゃいし」と読む。峠の南伊豆町側の大字が蛇石(じゃいし)である。 蛇石という集落もある。 峠名はこの地名から来ていると思ってよさそうだ。
 
<蛇石(へびいし)>
 更に蛇石集落の興りともなる「蛇石」が現存する。 この場合の「蛇石」は「へびいし」と呼ぶようだ。 ただ、どこまで信じていいかは分からないが。
   

<地形図>
 最近、国土地理院地形図をリンクするようにしている。角川地名大辞典もオンライン版で読んでいる。便利な世の中になったものだ。
 
 
(上の地図は、マウスによる拡大縮小、移動ができます)
   
   
南伊豆町側より峠へ
   
<国道136号から県道121号分岐>
 南伊豆町を走る幹線路は国道136号となる。 蛇石峠へ続く県道121号は、町のほぼ中心地より分岐する。 県道の行先は早くも蛇石峠とあるのが嬉しい。
   

国道136号の下賀茂の交差点 (撮影 2003. 7.27)
松崎町方向に見る
右に県道121号が分岐する
(上の画像をクリックすると拡大画像が表示されます)

県道121号の分岐を示す道路看板 (撮影 2003. 7.27)
県道の行先は蛇石峠となっている
   
<下賀茂温泉>
 付近は下賀茂(しもがも)温泉と呼ばれる温泉地でもある。 国道脇には温泉の蒸気を上げる源泉の一つが見られた。 付近には熱帯植物園があるが、こうした温泉の熱を使っているとのこと。
 
 以前の国道は、現在の県道121号を少し北に入り、町役場の北側を回っていた。 現在の国道は市街地の南をバイパスする快適な道になっている。 知らずに来たら、ちょっと戸惑った。
 
<通行止看板>
 いざ、県道121号を進もうとすると、交差点の角に「大型車通行止」の看板が立っている。場所は ここより11km先の蛇石地内で、蛇石集落の少し先であった(2003年のこと)。軽自動車が 通れるなら何の問題もない。

国道脇に温泉が湧く (撮影 2003. 7.27)
   

県道が分岐する下賀茂交差点 (撮影 2003. 7.27)
右に県道121号
正面の角に「大型車通行止」の看板が立つ

交差点角の看板 (撮影 2003. 7.27)
(上の画像をクリックすると拡大画像が表示されます)
   
 
県道121号を進む
   
<南伊豆松崎線>
 県道121号は南伊豆松崎線と呼ぶ。その名の通り、南伊豆町市街と松崎町市街を結ぶ。 国道136号も波勝崎経由で松崎町市街に達する。 距離も同じ程度に見えるが、道の良さが違う。 よって、県道の行先は「松崎」ではなく、町境の「蛇石峠」までであった。
 
<青野川左岸>
 国道から分れた県道121号は直ぐに市街地を抜け、途中八声峠を下って来た県道119号を合し、 青野川(あおのがわ)左岸沿いを遡るようになる。 青野川は蛇石峠周辺を源流とし、南東方向に流れて手石湾(弓ヶ浜)で太平洋に注ぐ。 県道121号は峠直下まで、ほぼこの青野川沿いに進む。
   

蛇石12kmの看板 (撮影 2003. 7.27)
この「蛇石」は蛇石峠のことだと思う

<蛇石12km>
 道路看板には「蛇石12km」と出て来た。 国道分岐から峠まで約13kmであり、大型車通行止の箇所(11km)は蛇石集落の先であることを考えると、 この場合の「蛇石」は蛇石集落でなく、蛇石峠であろう。 やや正確さに欠ける看板であった。
   
青野川左岸を行く (撮影 2003. 7.27)
   
<子浦分岐>
 県道119号が西の子浦(こうら)へと左に分岐して行く。 子浦は国道136号沿いにある、海岸に面した地区だ。 蛇石峠の道と八声峠の道は、Xの字の様に交差した格好をしている。
   

子浦分岐 (撮影 2003. 7.27)

子浦分岐の看板 (撮影 2003. 7.27)
この看板にはないが、子浦へ行く道は県道119号だと思う
   

八声峠/八声トンネル (撮影 2001. 1. 5)
蛇石峠より立派な道だ

古い八声隧道 (撮影 2001. 1. 5)
   
<沿道の様子>
 県道119号との併用区間も過ぎると、沿道は緑が多くない。 青野川沿いを進む内は、地形は安定していて周囲はのどかな雰囲気だ。 道は青野川の左岸と右岸を何度か行き来する。
   
沿道の様子1/3 (撮影 2003. 7.27)
川合野付近
   
沿道の様子2/3 (撮影 2003. 7.27)
側らに青野川が流れる
   
沿道の様子3/3 (撮影 2003. 7.27)
棚田と集落を望む
   
<市之瀬付近>
 県道沿いの大字は市之瀬(いちのせ)となる。 蛇石の一つ手前だ。 国道分岐から既に8km程入り込んでいるが、青野川の周囲はいまだ平坦地が多く、どこまで行っても広々とした雰囲気が続く。 山がちな伊豆半島に於いて、ほとんど険しさを感じさせない道だ。
 
 側らを流れる青野川は、伊豆半島の河川としては勾配が緩く、中・下流沿いには狭いながらも堆積低地の発達がよいとのこと。 難しいことは分からないが、そうした地形がこの穏やかな雰囲気を醸し出しているようだ。 更に、温暖な伊豆半島の気候も関係するだろう。 のんびりとした気持ちで蛇石峠の旅は続く。
   
市之瀬周辺の様子 (撮影 2003. 7.27)
   

諸坪峠 (撮影 1991.11. 4)
 険しい天城山脈の只中を、荒れた未舗装林道で越える諸坪峠などは、それこそ豪快で楽しい峠の旅を満喫できる。しかし、蛇石峠のような何でもない道を、ほのぼのと旅するのも決して嫌いではない。
   
 伊豆には処々に観光の見どころがあり、南伊豆町は石廊崎や波勝崎を有し、これから向かう松崎町には温泉や海水浴場があり、歴史的な建造物も残る。
 
 一方、蛇石峠の道沿いには、見どころと言えば蛇石集落内にある蛇石(へびいし)くらいなものだが、それも大したことはない。 後はただただ、静かな山里の中を穏やかな田舎道が続くばかりだ。 しかし、それがかえって旅情を誘う。 多くの人が立ち寄る観光地より、こうした何でもない峠道をのんびりと車を走らせている時こそ、「旅」を実感する。

県道標識は「南伊豆町市之瀬」 (撮影 2003. 7.27)
沿道に市之瀬集落の人家が点在する
   
道の様子 (撮影 2003. 7.27)
市之瀬集落の後半部分
   
   
伊浜分岐
   
<青野川右岸へ>
 市之瀬集落の人家が途切れた先、蛇石集落の500m程手前で道は青野川の右岸へと渡る。
   
直ぐ目の前の橋で道は青野川の右岸に渡る (撮影 2003. 7.27)
その前方で左に伊浜への道が分岐
   

雨量による通行止の看板 (撮影 2003. 7.27)
<八木山>
 橋の手前に雨量による通行止の看板が立つ。区間は「蛇石〜八木山」とある。 南伊豆町側の蛇石集落の先から、松崎町側の八木山集落までということだ。 峠の松崎町側は大字で岩科南側(いわしななんそく)というちょっと変わった呼び名の地区で、 八木山はその中にある集落名のようだ。 蛇石は南伊豆町側最終の集落、八木山は松崎町側最終の集落ということになる。
   
<伊浜分岐>
 道が青野川の右岸に渡った直ぐ先で、左に道が一本分岐する。 道路看板には、「伊浜 7km」とある。 伊浜(いはま)は子浦と同様、海岸に面した地区だ。
 
 ここに至るまでも、県道から分岐する枝道が何本かあった。 そうした道に入り込んでも、素朴で面白い旅ができそうに思う。 しかし、蛇石峠を越えるだけでも、伊豆半島の旅としては大きな寄り道である。 これ以上、細い脇道にそれていては、いくら時間があっても足りない。
   

伊浜分岐の様子 (撮影 2003. 7.27)
左が伊浜、右が蛇石峠へ

道路看板 (撮影 2003. 7.27)
   
 分岐に建つ道路看板には、「松崎 14km、伊浜 7km」とある。この分岐から峠までは3km強で、峠から県道が松崎町内で国道136号に合するまでは9km強である。合わせて13km弱だ。「松崎 14km」とは松崎市街までの距離だろう。
 
 一方、伊浜方向には別の看板に「マーガレットライン」とある。波勝崎付近を通る国道136号をその様に呼ぶようだ。この分岐から伊浜までの道をマーガレットラインと呼ぶ訳ではないらしい。

分岐から蛇石峠方向に見る (撮影 2003. 7.27)
   

分岐から南伊豆町市街方向に見る (撮影 2003. 7.27)
右脇の看板の伊浜方向に「マーガレットライン」とある

分岐から伊浜方向に見る (撮影 2003. 7.27)
この狭い道がマーガレットラインではない
   

分岐に立つ看板など (撮影 2003. 7.27)
<分岐に立つ看板など>
 県道121号沿いには案内看板が少ないが、この伊浜への分岐には、幾つかの看板が立つ。植物園やキャンプ場の案内が蛇石集落方向に向いている。
 
 またここは平戸口というバス停のようで、東海バスの細長いバス停留所の柱が立っている。ただ、近くに人家は少ない。伊浜方向の道を少し入った所に平戸という集落があるようだ。
   

分岐の先に大型車通行止の看板が立つ (撮影 2003. 7.27)
 
 分岐の先にまた大型車通行止の看板が立っていた。通行止箇所は蛇石集落と峠の中間くらいの位置だ。

大型車通行止の看板 (撮影 2003. 7.27)
   
   
蛇石集落
   
<蛇石集落>
 道が青野川の右岸に入ると、それまで広かった谷が一挙に狭まって来る。するとまた沿道に人家が現われてきた。蛇石集落に入ったようだ。暫く進むと青野川を渡る。その橋の周囲は特に人家が密集し、蛇石集落の中心地のようだった。
 
<天神原分岐>
 橋の手前を青野川の右岸沿いに遡る道が分岐する。道路看板にはそちらの方向に「天神原 3km」とある。植物園やキャンプ場などがあるようだ。その青野川本流の上流部は、一帯が蛇石火山による高原になっているらしい。何だか面白そうな場所 だ。道はマーガレットラインにも通じているようだ。

蛇石集落 (撮影 2003. 7.27)
   

橋の手前の分岐 (撮影 2003. 7.27)

分岐を示す道路看板 (撮影 2003. 7.27)
   
<蛇石(へびいし)>
 橋の手前の下流側にもコンクリート舗装の細い路地が延びている。 橋の袂にはそちらを指して「蛇石」(へびいし)と看板が立っていた。 下流30Mの左岸にあるようだ。
   

橋の袂に立つ蛇石の看板 (撮影 2003. 7.27)

蛇石の看板 (撮影 2003. 7.27)
   
 こうした旅では、ちょっとした物にでも関心を持つのがよい。この地名の由来ともなった蛇石とあらば、尚更見ない訳にはいかない。しかも県道から僅か30m歩くだけである。観光客でごった返すこともない。
   

角に蛇石のバス停が立つ (撮影 2003. 7.27)
この奥の川の左岸に蛇石がある

蛇石の前より県道方向を見る (撮影 2003. 7.27)
右手の対岸に蛇石
   
  路地の側らに流れる青野川本流の対岸に、その蛇石はあった。護岸からニョキッとその頭が出ている。何でもその尻尾は、ここから2.4km離れた蛇石火山の 火口の跡、大池にあるそうな。蛇石火山はあまりはっきりした形を留めていないようだが、蛇石峠の西1km程に位置するそうだ。その大池から水を飲みに来 て、そのまま石に化したとか。大池側には尻尾の石があるという話もある。
   

蛇石 (撮影 2003. 7.27)

蛇石の前に立つ看板 (撮影 2003. 7.27)
(上の画像をクリックすると拡大画像が表示されます)
   
<蛇石村>
 江戸期から明治22年に掛け、この地に蛇石村という村があった。 その名の由来が細い青野川の川底近くに突き出した細長いこの石というが、俄かには信じがたい。 「じゃいし」という読み方も気になる。
 
 地名には当て字が多い。例えば、国士峠の「国士」は、「輿(こし)をさげて越えた峠」が元になって「こしさんげ」峠と呼ばれ、後に「こくさんげ」と転じ、遂には「国士」の字を当てて「こくし」と読むようになったとのこと。現在の文字とその由来はほとんど関係ない。
 
 ただ、蛇石の場合は現にその由来ともなる蛇に似た石が残っている。仮に、「へびいし」と呼ばれた地名が、「へび」ではあまり体裁が良くないので、文字は そのままに「じゃいし」と読み変えた、などといったことも想像できる。余計な詮索は別にして、蛇石(へびいし)が由来の蛇石(じゃいし)村だと素直に思っ ておく。
 
 明治22年には、蛇石村や市之瀬村など7か村が合併して南上村(みなみかみむら)ができ、蛇石の名はその大字として残る。 更に昭和30年には南伊豆町の大字として引き継がれていった。
   
<バス路線>
 青野川の橋の袂に「蛇石」のバス停が立つが、バス路線はここより峠方向には向かわず、天神原の方へと延びて、そこが終点となるようだ。現在、蛇石峠を越えるバス路線はない。
 
 ただ、文献によると、昭和7年には下田町(現下田市)からこの蛇石集落を経由し、松崎町市街までバスが開通したそうだ。南上村の時代である。文献には明記されてはいなかったが、かつて路線バスが蛇石峠を越えていた可能性が高い。
 
 現在、下田市街と松崎市街は婆娑羅峠(トンネル)経由で路線バスが運行されている。

婆娑羅トンネルを抜ける路線バス (撮影 2014. 3.21)
   

蛇石集落を過ぎた先 (撮影 2003. 7.27)
ここから道は狭い
<蛇石集落の先>
 集落内で青野川を渡ると、道は左岸を少し下る方向に進む。直ぐに人家が途切れ、その先は道幅が狭くなる。大型車通行止を示す道路標識も立つ。
 
 青野川の方を見ると、人家の石垣の間を小さな沢が流れ下り、青野川に注いでいる。そこに蛇石がのぞく。表から、裏からと、これだけ蛇石を堪能すれば、もう十分である。
   

蛇石集落の終わり (撮影 2003. 7.27)
峠を背にして見る
この左手が蛇石の裏手に当たる

裏手から蛇石を望む (撮影 2003. 7.27)
   
 
峠への登り
   
<峠への登り>
 集落を過ぎ、やっと峠への登りらしい登りが始まった。ただし、峠まで残すところ約3kmと長くはない。蛇石峠は、クネクネ道を楽しむ峠ではなかった。
 
 道は青野川の支流で、蛇石峠の方から下って来る川の右岸沿いを登りだす。
   

峠への登り (撮影 2003. 7.27)
決壊箇所の先を見ている

県道標識 (撮影 2003. 7.27)
   
<路肩決壊箇所>
 すると決壊箇所があった。路肩が陥没したようで、ガードレールごと落ちている。こんなもので観察しておく。他に見るものはないのだ。今頃はどのように修復されていることだろうか。
   

決壊箇所 (撮影 2003. 7.27)
下り方向に見る

決壊の様子 (撮影 2003. 7.27)
ガードレールごと落ちている
   
<分岐>
 道は川筋を離れ、峠の峰へと登って行く。 途中、右手に分岐が一本あったと記憶する。 麓の青野集落へと下り、県道に戻れるようだ。

前方で右に分岐? (撮影 2003. 7.27)
   
   
   
蛇石峠 (撮影 2003. 7.27)
奥が松崎町、手前が南伊豆町
   
<峠>
 あまり眺望もないまま、蛇石峠に着く。 峠は狭い切通しで、これといって特徴もない。 峠の南伊豆町側から切通しに掛け、ずっと狭いままなので、車の停め場所に苦労する。 松崎町側に少し下って、やっと広い路肩を見付けた。
  

峠の南伊豆町側 (撮影 2003. 7.27)

南伊豆町側を見る (撮影 2003. 7.27)
   

峠の松崎町側 (撮影 2003. 7.27)
<石柱>
 峠の前後にはそれぞれの町名が書かれた看板が立つ。松崎町の看板の近くに、傾いた小さな石柱があった。こんな物までも観察することとする。文字の字体は 古そうだ。昭和7年のバス運行を考えると、その頃に蛇石峠に車道が通じたのではないだろうか。石柱はその当時のものか?。この石柱の前をボンネットバスが 越えたのかと想像する。
 
 石柱を見たら他に見るべき物はない。「蛇石峠」とでも書かれた看板が立っているとよかったのだが。峠からの景色も全く広がらない。
   

石柱 (撮影 2003. 7.27)
「道路調査」とある

石柱 (撮影 2003. 7.27)
「静岡県」とある
   
<岩科川>
 蛇石峠の松崎町側の大字は岩科南側(いわしななんそく)で、「北側」もあるのかと思ったら、確かに岩科南側の北側に岩科北側(いわしなほくそく)という 大字があった。峠付近からは岩科川(いわしながわ)の支流が流れ下り、本流になってからは岩科南側と岩科北側の間を流れ、松崎市街の北のはずれを通って、 伊豆の西海岸である松崎港に注いでいる。蛇石峠はこの岩科川と青野川の分水界に位置する。
   

峠から松崎町側に下る道 (撮影 2003. 7.27)

松崎町側の路肩にキャミを停めた (撮影 2003. 7.27)
   
   
峠から松崎町側へ
   
<松崎町側に下る>
  道は岩科川本流沿いへと向け、一目散に下って行く。峠の海抜の70%以上をここで下げる。元々高い峠ではないので、道の途中での眺望はあまりないが、それでも屈曲した坂道が3km程続き、それなりに峠道らしさを味わえる。
 
 道は心持ち、南伊豆町側より広く、状態も良いように感じた。アスファルト路面も傷みなどは全く見られず、丁度補修したばかりのようであった。

道の様子 (撮影 2003. 7.27)
   
この先ヘアピンを曲がる (撮影 2003. 7.27)
それなりに峠道らしさを感じる
空も開けている
   
   
八木山へ
   
<岩科川沿い>
 岩科川本流沿いの道は狭い箇所があり、川側の崖と山側の壁に挟まれた狭路をすり抜けるように進む。
   
八木山のバス廻し場の前 (撮影 2003. 7.27)
峠方向に見る
ここから峠方向は少しの間狭い道
   

廻し場の看板 (撮影 2003. 7.27)
<廻し場>
 すると、目の前がパッと開けた。道路脇に砂利敷きの広場がある。側らに「ワンマンバス 廻し場に付き 駐車禁止」と看板があった。「八木山終点」ともあり、バス停でもあるようだった。
 
 廻し場から先は、道にはセンターラインが描かれ、広くなっている。八木山集落の端に取り付いたようだ。後ろを振り返ると、峠方向に狭い道が口を開けていた。
   
廻し場の前 (撮影 2003. 7.27)
この先で道が広がった
   
<八木山集落内に>
 広い道に入って 間もなく、人家が現われる。県道標識に示された住所は「松崎町八木山」とある。蛇石峠の松崎町側最初の集落、八木山だ。もう山深くもなく、山里の雰囲気さえもあまりしない。ここから松崎港まで直線距離で5km程の近さだ。道もこれからはほとんど水平移動である。
 
 八木山集落以降、沿道の人家はほとんど途切れることがない。水田なども広がるが、視界には必ず建物が入ってくる。南伊豆町側に比べ、住宅地として発展している感じを受ける。

八木山集落内 (撮影 2003. 7.27)
県道標識が立つ
   
沿道の様子 (撮影 2003. 7.27)
   
峠方向を望む (撮影 2003. 7.27)
谷間を抜け沿道には水田が広がる
   

バスが通り掛かった (撮影 2003. 7.27)
 岩科川が蛇行する谷間を抜けると、平坦地が広がる。もう磯の香りがしてきそうな程だ。路肩に車を停め、写真を撮っていると、松崎町市街方向から東海バスの巨体が狭い道をやって来た。八木山の終点まで行くのだろう。
 
<国道136号に接続>
 道路看板が出て来て、国道136号に接続することを示していた(下の写真)。直進は土肥(とい)方向、左折は南伊豆町に戻る方向。県道121号はここで終わり で、それまで寄り添っていた岩科川も、この直ぐ先で那賀川と合わさって松崎港に注ぐ。蛇石峠の峠道も、ここが終点と言える。
   

国道に接続する道路看板 (撮影 2003. 7.27)

道路看板 (撮影 2003. 7.27)
   
<松崎町(余談)>
 松崎町での観光では、なまこ壁が面白い。 ただ、街中に点在しているので、地図を頼りに歩いての観光となる。 的を絞らないと、無駄に歩いてばかりで、大変疲れた。

しんはま通りにあった看板 (撮影 2014. 3.21)
地図は左がほぼ北
(上の画像をクリックすると拡大画像が表示されます)
   
   
   
 蛇石峠は1990年前後に一度越えている筈なのだが、はっきりした記録がなく、残念ながら写真も残っていない。 二度目に越えたのは2003年で、その時からも、もう12年近くになる。 最近は険しい未舗装林道などの旅は、心身ともにきついと感じるようになった。 その点、蛇石峠の道は安楽である。 あの蛇石(へびいし)は健在だろうか。 峠道の変貌なども見ながら、またのんびり旅をしようかと思う蛇石峠であった。
   
  
   
<走行日>
(1990年前後 AX-1またはジムニーにて)
・2003. 7.27 南伊豆町 → 松崎町 キャミにて
 
<参考資料>
・角川日本地名大辞典 22 静岡県 昭和57年10月 8日発行 角川書店(及びオンライン版/JLogos)
・県別マップル道路地図 22 静岡県 2006年 2版20刷発行 昭文社
・その他、一般の道路地図など
 (本サイト作成に当たって参考にしている資料全般については、こちらを参照 ⇒  資料
 
<1997〜2015 Copyright 蓑上誠一>
   
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