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白樺峠
  しらかばとうげ  (峠と旅 No.285)
  スーパー林道が乗鞍高原へと誘う峠道
  (掲載 2017.11.30  最終峠走行 2016.10. 6)
   
   
   
白樺峠 (撮影 2016.10. 6)
手前は長野県松本市安曇(あずみ、あづみ)
奥は同市奈川(ながわ)
道は上高地乗鞍(スーパー)林道・A区間(A線)
峠の標高は1,620m (観光パンフレットなどより)
(上の画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)
白樺峠はどうにも峠らしく見えない
峠となる旧安曇村と旧奈川村との村境がどこに通っているのかはっきり分からない
ただ、少なくともこの写真のどこかにその境界線が横切っているものと思う
 
 
 
   

<スーパー林道>
 白樺峠には上高地乗鞍スーパー林道が通じる。何をもって「スーパー」と呼ぶのか知らないが、長野県内最初の「スーパー林道」だったそうだ。 乗鞍高原という大観光地へと通じる一ルートとなる。ただ、最近は「スーパー」の文字を使わず、単に「上高地乗鞍林道」と呼ぶことも多いようだ。 開通当時こそ「スーパー」を誇ったのだろうが、もうそういう時代ではないのかもしれない。道の実態も、完全舗装ながら寂れた箇所も見られる、ありきたりの林道に過ぎない。 高規格の立派な自動車道が山中を貫いて建設される昨今、「スーパー」を勘違いして来る者が居ないとも限らない。ここでは基本的に上高地乗鞍林道と呼ぼうと思う。

   

<所在>
 現在の峠道全ては長野県松本市の中に入ってしまっているが、かつては南安曇郡(みなみあずみぐん)安曇村(あずみむら)と同郡奈川村(ながわむら)との明確な村境であった。 今の地形図や道路地図では行政区画の境界線が峠を通過していないので寂しい限りだ。ただでさえ、白樺峠は峠の位置が分かり難いので、尚更地図上での存在感が薄くなったように思う。
 
 現在の白樺峠は松本市安曇と松本市奈川との境になる。元の安曇村も奈川村も、どちらも大字を編成していなかったので、これより狭い範囲の住所名が明示できない。 単に安曇とか奈川と言ったのでは、旧村域全を示し、余りにその範囲は広い。ただ、地区名とか集落名という名がどちらにも10以上あるようだ。安曇側では鈴蘭、奈川側では黒川渡(くろかわど)という地区名が見られる。

   

<地形図(参考)>
国土地理院地形図 にリンクします。
   


(上の地図はマウスによる拡大・縮小、移動ができるようです)
   

<水系>
 飛騨山脈(北アルプス)を水源とし、上高地を経て松本市方面へと梓川(あずさがわ)が流れ下る。一般の道路地図も地形図でもこの河川名が使われるが、実はこれは通称名だそうだ。 正式には犀川(さいがわ)が正しい。しかし慣例として、松本市街近辺で犀川に奈良井川が注ぐ地点より上流側を梓川と呼びならわしているようだ。犀川は、下って本流の千曲川に注ぎ、千曲川は新潟に入って信濃川と名を変え、信濃川水系となる。
 
 白樺峠は梓川支流の奈川(ながわ)と前川との分水界に位置する。
 
 奈川は野麦峠を水源とし、旧奈川村内を流れ下り、奈川渡(ながわど)で本流の梓川(犀川)に合流する。奈川渡には奈川渡ダムによる梓湖ができていて、奈川はその梓湖に注いでいる。峠は奈川の支流・黒川の支流(途中不明)のカンバ沢の上流部に位置する。
 
 一方、前川は奈川渡より4km余り上流の前川渡(まえかわど)で梓川に注ぐ支流で、その水源は広く乗鞍岳東麓一帯に広がる。峠は前川支流の馬ノ背沢上流部にあるが、道は前川のずっと上流部に架かる白樺橋に降り立っている。

   

<峠名>
 この峠自身については文献などにほとんど登場せず、詳しいことは分からない。上高地乗鞍林道の開通に伴い生まれた新しい峠である可能性が高い。白樺峠という名も比較的現代的な感じがする。峠周辺には白樺の木が多く見られるので、単純にそれが峠名の由来であろう。

   

<峠道の魅力>
 白樺峠は4回越えている。それ程この峠は魅力的・・・、ということは全くない。最初はスーパー林道とやらに関心があった。ただし、快適な道などは求めない。 まだ未舗装だった頃のかつての奥志賀スーパー林道(現在は県道)などを経験していたので、「スーパー」にはどちらかというと長く険しい林道を期待していた。 白樺峠はその道の途中にある単なる通過点でしかなく、最初は峠としての認識もほとんどなかった。この峠道はどちらかというと林道走行のみを楽しむ為に訪れている。

   
   
   
奈川より峠へ 
   

<黒川渡>
 4回の峠越えはいずれも奈川側からだった。関東方面から松本経由でやって来ると、どうしてもこのルートとなる。奈川沿いに通じる県道26号(主要地方道)・奈川木祖線の黒川渡(くろかわど)より峠道は分岐する。
 
 黒川渡は旧奈川村の中心地で、かつては村役場があり、今は松本市の奈川支所があるようだ。ただ、右岸に通じる県道26号を行く限りは、それ程大きな集落のような感じはしない。 県道と並行に左岸にも道が通じ、そちらにより多くの人家が並ぶようだ。 また、県道沿いから見る奈川の谷は細い渓谷の様に思えるが、右岸上部に河岸段丘が発達していて、その段丘上に人家が点在し、耕地も広がるようだ。 かつて、野麦峠を越えて信州松本と飛騨高山を結ぶ野麦街道がここに通じ、飛騨出身の工女らが往来した地である。

   

県道26号を松本方向に見る (撮影 2002. 9.29)
この先左に上高地乗鞍林道への分岐がある

分岐近くに立つ看板 (撮影 2002. 9.29)
スーパー林道や奈川温泉の案内がある
   

<分岐の看板>
 分岐に立つ道路看板では、白樺峠方向に
 白骨温泉 28Km
 乗鞍高原 20Km

 
 とある。他に「スーパー林道入口」と案内する看板も立つ。また、分岐の先にある奈川温泉を案内する看板も多い。

   

県道26号を松本方向に見る (撮影 2001.11.10)
前の写真の約1年前に訪れている

道路看板 (撮影 2001.11.10)
   

県道26号を木曽福島方向に見る (撮影 2016.10. 6)

道路看板 (撮影 2016.10. 6)
   

分岐の様子 (撮影 2016.10. 6)
右が峠へ

<上高地>
 看板の中には僅かだが「上高地」と案内する物がある。元の上高地乗鞍林道は、この黒川渡から乗鞍高原に到り、更に白骨温泉を経由して安房峠旧道途中の中ノ湯温泉近くに接続する長大な道だった。 中ノ湯温泉の少し下から上高地に通じる県道24号・上高地公園線が分岐する。上高地乗鞍林道の名にある「上高地」とはその意味だったと思う。しかし、白骨温泉から先の中ノ湯温泉方面の区間は、現在は通行止とのこと。
 
 その為、白骨温泉から先は県道300号・白骨温泉線で一旦国道158号に出て、改めて梓川沿いに遡って上高地に至ることとなる。しかし、それなら初めから奈川渡から国道158号を辿った方が容易であろう。

   

分岐に立つ道路看板 (撮影 2016.10. 6)
一部に「上高地」と案内がある

奈川温泉などの案内看板 (撮影 2016.10. 6)
   

<黒川渡橋>
 県道から分かれると直ぐに奈川を黒川渡橋(ながわどはし)で渡る。白樺峠に登る峠道の奈川側起点となる橋で、時折写真に撮って置いた。

   

奈川渡橋を渡る (撮影 2016.10. 6)
何となく新しくなった

道路情報の看板 (撮影 2016.10. 6)
何も示されていない
   

<新しい黒川渡橋>
 去年(2016年)に訪れてみると、黒川渡橋は新しくなっていた。車道の幅は広く、上流側に歩行者用の橋も架かっていた。ただ、全く新しく架け替えたというのではなく、以前の橋を改修したようだった。

   
以前の奈川渡橋 (撮影 2001.11.10)
   

以前の道路情報看板 (撮影 2001.11.10)
「通行注意、工事中」とある

<道路情報>
 橋を渡る手前には道路情報の看板が立つ。区間は「黒川渡〜鈴蘭」とある。乗鞍高原の中央を県道84号(主要地方道)・乗鞍岳線が通じるが、それと上高地乗鞍林道との交差点付近を鈴蘭(すずらん)地区と呼ぶようだ。
 
 確かに「鈴蘭」と書くのは正確だ。しかし、安曇の地名に詳しくないと、一体鈴蘭とはどこなのかと、地図を出して探してしまいかねない(実際に探してしまった)。もっと漠然と「乗鞍高原」でも話は通じると思うのだった。

   

以前の道路情報看板 (撮影 2002. 9.29)
「落石のおそれ、通行注意」とある

以前の奈川渡橋 (撮影 2002. 9.29)
前年に訪れた時とさして変わりはない
   

<黒川沿い>
 道は奈川支流・黒川に沿う。最初の数100m程は黒川渡地区の人家が並ぶ。ガソリンスタンドも営業していた。幹線路となる県道から外れている点が気になった。近隣住民や乗鞍高原への観光客だけで営業が成り立つのだろうかと思った。
 
 黒川渡橋から続いていたセンターラインが路面から消えると共に、沿道の人家が少なくなり、道幅も2車線弱となる。大きなトラックなどが来ると、離合時はほとんど止まるくらいに減速する。

   

<小黒川橋>
 県道分岐から1.5kmで小黒川橋というバス停があった。その先で黒川の支流を渡る。その上流部は大きく小黒川とカンバ沢に分かれるが、どちらが本流か地形図からは読み取れなかった。 この黒川沿いに小黒川橋というバス停があるのだから、その支流に架かる橋が小黒川橋で、その川は小黒川であろう。白樺峠はその小黒川支流のカンバ沢の源流部となる。
 
<屋形原>
 小黒川が黒川に注ぐ付近は屋形原(やかたはら)地区と呼ばれるようだ。更に小黒川を遡った上流部には駒ケ原(こまがはら)という地区も地図に見られる。

   
左に小黒川橋バス停 (撮影 2016.10. 6)
その先に小黒川橋
   

<上高地乗鞍林道の看板>
 小黒川橋の袂に立つ上高地乗鞍林道の看板は、小黒川橋を渡る方向を指し示している。地形図を見ると、小黒川沿いを登り、駒ヶ原集落を経由し、その先で上高地乗鞍林道に接続する道が描かれている。しかし、以前は有料であった上高地乗鞍林道に途中から入れる筈がないと思うのだが。

   

小黒川橋 (撮影 2016.10. 6)
右手の袂に上高地乗鞍林道の看板
ここを右に入る道は屋形原から駒ケ原へ通じる

上高地乗鞍林道の看板 (撮影 2016.10. 6)
「乗鞍高原、白骨温泉、乗鞍岳、平湯・高山」とある
   

<沿道の様子>
 黒川沿いの道に屋形原集落の人家は多くはない。黒川の谷はあまり広くなく、耕地もほとんど見られない。

   

沿道の様子 (撮影 2001.11.10)

左とほぼ同じ場所 (撮影 2016.10. 6)
右手に墓石が並ぶ
左手にあった青い建物はもうないようだ
   

 それでも人家の点在は奥まで続く。黒川沿いではここが奈川側最終の集落となる。

   

集落の様子 (撮影 2016.10. 6)
もう人の気配がなくなった家屋もある

集落の様子 (撮影 2016.10. 6)
   

<集落の先>
 人家が尽きると、そこに手打ちそば屋が一軒ポツンとあり、その先道は黒川右岸へ渡る。


右手にそば屋 (撮影 2016.10. 6)
その先で黒川を右岸へ渡る
   

黒川を渡る (撮影 2016.10. 6)

左に奈川温泉分岐 (撮影 2016.10. 6)
   

<奈川温泉バス停>
 橋の先では路肩が広くなっている。そこがかつての奈川村営バスの折り返し場となっていて、側らに「奈川温泉」と書かれたバス停が立つ。県道分岐から約2kmの地点となる。

   

奈川温泉の看板 (撮影 2016.10. 6)
「野麦荘」の名は野麦街道の温泉宿があったことを示すものか
しかし、この宿はもうないようだ

奈川温泉バス停 (撮影 2016.10. 6)
ここが終点
   

入口と反対側にある奈川温泉の看板 (撮影 2016.10. 6)

<奈川温泉(余談)>
 バス停の反対側から脇道が登り、そちらに奈川温泉の案内看板が立つ。車道からは建物はあまりはっきり見えない。脇道は200m弱車道と並行していて、反対側からも登り口が付けられている。
 
 奈川温泉は古く、鎌倉期の開湯といわれるそうだ。江戸期には「庄の平」の湯と呼ばれ、野麦街道に近い温泉宿として賑わったとのこと。ただ、野麦街道が通じる奈川沿いより2km程奥まっていて、往復4kmは歩かなければならないことになる。なかなかの寄り道になったことだろう。

   

 現在の源泉は昭和期になって改めてボーリングされたものだそうで、昭和32年に奈川温泉と改称されている。文献では「宿泊施設は2軒」とあったが、現在は1軒のみのようだ。一方、黒川渡集落内に新奈川温泉と言うのがあった。
 
<宿のこと(余談)>
 余談だが、奈川温泉に一つ残る宿は「日本秘湯を守る会」の会員であるらしい。この種の旅館には2、3回泊まったことがある。 野宿旅などをしていた時期は、宿は屋根さえあればそれで十分だと思っていたくらいで、その日の泊り客は自分一人だけだったなどという辺ぴな旅館に泊まったことも多い。 しかし、最近は体調が許さず、宿に求める質が上がってしまった。駐車場が隣接していて、トイレ付きの部屋で、トイレはシャワートイレで、館内は基本的に禁煙で、冷暖房完備で、 ベッドはふかふかで、掛け布団は羽毛布団、ついでに部屋からの眺めが良く、露天風呂が楽しめて、無料WiFiが飛んでいて、といった具合だ。もう、「日本秘湯を・・・」の類の宿には泊まれそうにない。

   

<奈川温泉以降>
 奈川温泉バス停の先に「乗鞍高原まで18.3Km」と示す看板が立つ。更に進むと民宿が一軒あったようだ。その後、道は黒川左岸に戻り、尚も川沿いを遡る。
 
 「この先500m スーパー林道入口」と看板が出て来た。沿道からは建造物が消え、道は狭く、路面状況も悪い。かつて、上高地乗鞍林道は有料だったが、こんな寂しい道の先に有料道路などがあるのだろうかと不審に思えたものだ。

   

「スーパー林道入口」の看板 (撮影 2016.10. 6)
同じような看板がしつこく並ぶ

寂しい道 (撮影 2016.10. 6)
これがスーパー林道へのアクセス路
   

<何かの施設>
 もう沿道には何もないかと思っていると、川岸に比較的大きな施設があった。入口には「本日 お休み」という立て看板が置かれていた。養魚場か釣り堀の様な施設ではないかと思った。それを過ぎると、重要な分岐がある。

   

左手に何かの施設 (撮影 2016.10. 6)
「本日 お休み」と看板が立つ

上高地乗鞍林道への分岐 (撮影 2016.10. 6)
ここを右に曲がり、やっと黒川沿いを離れて行く
   

<分岐>
 白樺峠は、黒川の支流・小黒川のそのまた支流であるカンバ沢の上流部に位置するが、道は小黒川流入点より黒川沿いに1.3km遡り、やっと黒川沿いを離れる。 分岐に立つ上高地乗鞍林道の看板が右に曲がるように示している。一方、黒川沿いを尚も上流方向へと続く道には何の案内もない。
 
<黒川源流(余談)>
 野麦峠から北の乗鞍岳へと続く稜線上に戸蔵(1981m)という山が見られ、その東斜面付近が黒川の源流となるようだ。 黒川沿いの道はかなり上流部まで続いていそうだが、長野・岐阜の県境となる稜線を越えることはないようだ。 ただ、野麦峠方面にも近い位置に通じ、この黒川ルートで野麦街道が通じてもよかったのではないかと思ったりする。 本来の野麦街道は、黒川渡より更に南へと奈川沿いを遡り、寄合渡(よりあいど)から西に折れて野麦峠を目指す。それに対し、黒川渡より南西方向の黒川沿いに行けば、ショートカットの様になり、道程はずっと短縮されると思うのだが。


分岐の様子 (撮影 2016.10. 6)
   
<タカ見の広場>
 白樺峠は、峠そのものは何ら注目される点は持ち合わせていないが、あることで一部の人たちには良く知られた峠となっている。そのことが、分岐に立つ看板に示されている。
 
 峠から少し山道を登ると、「タカ見の広場」と呼ばれる所があるのだ。タカの渡りの観測ポイントとして有名とのこと。 渡りの季節などになると、多くの人たちが望遠鏡やカメラを構えて佇んでいる。今年(2017年)の9月初旬に牧峠(新潟・長野県境)を訪れたのだが、そこでもその手の趣味人たちを沢山見掛けた。峠道に限らず、旅先で偶然にそうした観察ポイントに出会うことが意外とある。趣味や学術的にも、なかなか人気があるようだ。
 


上高地乗鞍林道は右 (撮影 2016.10. 6)

「タカ見の広場」の案内 (撮影 2016.10. 6)
   

<料金所跡>
 黒川沿いを離れて小黒川方向に向くと、その先の道路の真ん中に小さな小屋が立っている。上高地乗鞍林道がまだ有料だった頃の料金所跡だ。この奈川側に立つのは黒川渡料金所と呼ぶようだ。その姿は以前と変わらないが、路上の小屋は通行の支障ともなるので、その内撤去されるのではないだろうか。

   
前方に黒川渡料金所跡 (撮影 2016.10. 6)
峠方向に見る
   

<以前の料金所>
 いつから上高地乗鞍林道が無料になった知らないが、少なくとも2002年9月に訪れた時はまだ料金の徴収係が居られた。それにしても寂しい立地の料金所である。 利用客もそれ程多くは見られなかった。箱根辺りに通じる明るい雰囲気の有料道路と比べると、全く異質である。ただ、かつての奥志賀スーパー林道も同じようなものだったが。

   
現役だった頃の料金所 (撮影 2001.11.10)
左手の看板には「路面凍結 スリップ注意」とあった
   

<料金所跡の様子>
 料金表を載せた看板や道路脇に立つ事務所となる建物・簡易トイレなども残っていた。ただ、トイレなどはもう使える様子ではない。

   

料金表 (撮影 2016.10. 6)
道の延長なども記載されている
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)

側らに立つ事務所 (撮影 2016.10. 6)
その奥に簡易トイレ(今は使用できない)
   

料金所跡 (撮影 2016.10. 6)
今はもうシャッターが閉じられている
看板には「林道情報 この先 落石 走行注意 松本市」とある

<利用券(余談)>
 旅先で写真を撮るようになってからは、観光施設の入館券や道路の通行券なども旅の記念として残して置くようにしていた。探してみると、上高地乗鞍林道の利用券も何枚か見付かった。 一番古いのは1993年の物で、A区間・小型自動車で850円とある。それが2001年では860円と少し値上がりしていた。この間、消費税が3%から5%に上げられていて、その関係だろう。

   
平成5年(1993年)9月11日の利用券 (撮影 2017.10.21)
黒川渡料金所発行のA区間の物
   
平成13年(2001年)11月10日の利用券 (撮影 2017.10.21)
黒川渡料金所発行のA区間の物
   
平成13年(2001年)11月10日の利用券 (撮影 2017.10.21)
鈴蘭料金所発行のB区間の物
   

<利用券の裏>
 初期の利用券の裏側には林道概念図が記載されていた。松本・高山・上高地・黒四ダム・名古屋とその範囲は広い。肝心な上高地乗鞍林道はA、B、Cの3区間に分かれる。
 A区間:黒川渡〜乗鞍高原(鈴蘭) 15.3Km
 B区間:白骨〜乗鞍高原(鈴蘭) 6.7Km
 B区間:白骨〜中ノ湯 13.1Km
 延長は合計で35.1Kmとなる(料金表の看板より)。この内、C区間はもう閉鎖されていて通ることはできない。上高地乗鞍林道の名も、「上高地」の意味合いがやや薄れてしまった。

   
平成13年(2001年)11月10日の利用券の裏側 (撮影 2017.10.21)
   

<新しい利用券>
 2002年から、それまでの紙に印刷された利用券が、感熱紙でプリント出力された物に変わっていた。味わいのある日付の捺印はなく、当然ながら裏側の林道概念図もない。 それに感熱紙は時を経ると文字が消えてなくなってしまう。旅の思い出として保存するにはどうにも適さない。機械でプリントするのは便利だろうが、かつての紙の利用券は味わいがあり、文字もしっかり残っている。

   
2002年発行の利用券 (撮影 2017.10.21)
ここでは「スーパー林道」となってる
段々文字がかすれて来た
   
   
   
料金所以降 
   

<ゲート箇所>
 料金所(跡)の直ぐ後方にゲート箇所が設けられている。その手前に十分な車の転回場所はないので、冬期閉鎖(4月〜11月)などでは、このゲートのもっと手前で通行止とするのではないだろうか。

   
黒川渡側のゲート箇所 (撮影 2016.10. 6)
この先ちょっと道幅が狭い
   

<小黒川右岸>
 道は一路、黒川左岸を逆戻りし、その内その支流の小黒川右岸沿いを遡り始める。ゲートから先の道は、一部に1.5車線くらいと狭い所もあるが、概ね小型乗用車同士がどうにかすれ違いできる程度の幅は確保されている。その点はやはり一般の林道と異なり、元は有料であったスーパー林道である。

   

道の様子 (撮影 2016.10. 6)
林道としては十分な道幅がある

道の様子 (撮影 2016.10. 6)
小黒川右岸沿い付近
この谷の下は駒ヶ原地区
   

小黒川を渡る (撮影 2016.10. 6)

<小黒川を渡る>
 小黒川の谷は、屋形原や駒ヶ原の集落があるだけあって、それなりの広さを感じる。ただ、まだ黒川本流の谷底に近く、視界は広がらない。木々が多く、集落なども望めない。
 
 道は小黒川の流れに従って西の上流方向に遡る。目的となるカンバ沢より離れて行く。随分遡った所で、駒ヶ原橋で小黒川を渡る。橋の名にはこの付近の地区名が付けられているようだ。

   

小黒川を上流方向に見る (撮影 2016.10. 6)

駒ヶ原橋 (撮影 2016.10. 6)
   

<駒ヶ原橋以降>
 駒ヶ原橋以降は、今度は小黒川左岸を少し逆戻りする。白樺峠の奈川側の道は、その前半となる黒川沿いや小黒川沿いの迂回が長い。
 
 駒ヶ原橋を渡って100m程行くと、右に鋭角に分かれて下る道がある。荒れた未舗装路だ。ゲートなどはなさそうだが、それを下ると駒ヶ原集落に到ることになる。ここはもう以前の有料区間なので、その道は通行止だと思うのだが。


右逆Y字に分岐あり (撮影 2016.10. 6)
   

<道の延長>
 沿道の看板に「乗鞍高原まで14.0Km」と出てきた。県道26号分岐からは20Km、奈川温泉先では18.3kmと看板にあった。また、黒川渡料金所からは概ね17Kmである。その内、峠から安曇側が9.5Kmとなる。
 
 観光用の有料道路などでは沿道に距離を示した看板がよく立っているが、この上高地乗鞍林道でも貧弱ながらそれに類した物が僅かに見られた。 傾いた標柱に「奈川から 4KM」とあった。この場合の「奈川」とは正確には黒川渡料金所を示しているようだ。よって、17Kmからこの数値を引いた残りが乗鞍高原までの距離となる。
 
 尚、上高地乗鞍林道・A区間の延長は「15.3Km」と料金表の看板にあった。黒川渡料金所から乗鞍高原(鈴蘭)までの距離にしては2Km前後不足する。 上高地乗鞍林道が有料だった頃の道路地図を見ると、A区間の安曇側起点は鈴蘭ではなく、それより手前の一の瀬牧場付近にあった。15.3Kmとは一の瀬牧場までの距離であろう。

   

左手に標柱 (撮影 2016.10. 6)
カンバ沢右岸付近

「奈川から 4KM」 (撮影 2016.10. 6)
   

<カンバ沢右岸>
 そろそろ小黒川左岸からその支流のカンバ沢右岸へと移動して来ている。峠はこのカンバ沢をそのまま北に登り詰めた所にある。道の上空が開けて来ていて、白樺峠の奈川側ではこの付近が眺めを期待できる箇所となる。

   
カンバ沢右岸からの眺め (撮影 2016.10. 6)
ほぼ東を望む
この時はあまりいい景色が望めなかった
   

<眺め>
 一般的に山間部に通じる林道は、開削時こそ沿道の伐採が行われ、見晴らしがいいことが多い。しかし、時を追うごとに木々が成長してしまい、徐々に視界を失って行く。 上高地乗鞍林道もその傾向にあるようだ。以前はカンバ沢沿いになると、もっと眺めがあったように思う。2016年に訪れた時は、どこかいい場所で景色を写真に撮ろうと思いながらも、ほとんどカメラを構える機会がないまま通り過ぎてしまった。

   
以前の景色 (撮影 2001.11.10)
カンバ沢上流方向を見る
   

<以前の景色>
 以前はカンバ沢右岸上部に通じる林道の道筋なども見渡すことができた。これまで自分が通って来た道、これか通る道が見通せた。

   
以前の景色 (撮影 2001.11.10)
カンバ沢下流方向を見る
   

<奈川沿いを望む>
 更に高度を上げると、奈川沿いの谷まで望めたようだ。右岸の河岸段丘上に耕地が見える(下の写真)。

   
ほぼ前の写真と同じ場所 (撮影 2002. 9.29)
奈川右岸の河岸段丘が見える
   

<集落を望む>
 僅かな区間だが、足元の黒川沿いが覗いたこともあった。その谷間に人家が集まっている(下の写真)。多分、屋形原の集落ではなかったろうか。以前は沿道から直ぐそこに見えていたこうした景色も、今では余程注意して樹間から覗かないと見えて来ないようだ。

   
手前の谷間に屋形原集落を望む (撮影 2002. 9.29)
奈川右岸まで見通せている
   
ほぼ前の写真と同じ場所 (撮影 2001.11.10)
   

<カンバ沢上部>
 道はカンバ沢右岸の斜面を縫って遡る。支流の谷の出入りに従い道は屈曲が多い。比較的大きな谷を横切る所で、丁度「乗鞍高原まで 12.0Km」と看板があった。これからはカンバ沢沿いの後半に入る。峠まで残すところ約2.5kmだ。

   

支流を越える (撮影 2016.10. 6)

「乗鞍高原まで12km」 (撮影 2016.10. 6)
   

<沿道の様子>
 以後はカンバ沢の谷も狭まって行くので、ますます遠望は期待できない。沿道に木々も多く、水平方向には全く視界が利かない。それでも頭上の空は比較的広く開き、狭苦しい感じは受けない。道幅も路面状況もいい。

   

道の様子 (撮影 2016.10. 6)
空が広い

道の様子 (撮影 2016.10. 6)
しかし眺めがない
   

<車の往来>
 奈川側では峠に到るまでに1、2台の車とすれ違ったようだ。交通量はその程度である。のんびり走っているので、後続車が1台追い付いて来た。路肩の広い箇所まで行って道を譲る。

   
   
   
峠直前 
   

<白樺峠園地>
 峠の100m程手前で、右手に広い駐車場が出て来る。白樺峠はその奈川側周辺が園地として整備されていて、そこは園地内にある駐車場の一つとなる。広くてアスファルト敷きの立派な駐車場だ。 ただ、トイレや「たか見の広場」への登り口はもっと峠寄りにあり、こちらの駐車場はあまり利用されないようだ。


右手に駐車場 (撮影 2016.10. 6)
   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2001.11.10)
ジムニーの後ろに小さな周辺案内図が立つ
   

周辺案内図 (撮影 2001.11.10)
今はもうない

<周辺案内図>
 以前は駐車場入口に「白樺峠周辺案内図」の小さな立札が立っていた。「信州ワシタカ類渡り調査研究グループ」による。「たか見の広場」へは、峠のやや安曇側から始まって稜線上を行く歩道を登るように指示されている。しかし、今は別の探勝路が通じている。

   
周辺案内図 (撮影 2001.11.10)
「たか見の広場」へは、トイレの先にある歩道を登るように指示されている
   

<園地案内図>
 今は長野県奈川村により「白樺峠園地案内図」の看板が立つ。峠近くにあるトイレ(WC)の前より始まる「林内探勝路」が「展望広場」まで登っている。「たか見の広場」へはそれを使う。
 
 白樺峠園地は「たか見の広場」を含め、旧奈川村側に広がる。案内図によると、ここにはかつて西山牧場という牧場があったようだ。ただ、広々とした草原の様な景観が見られる訳ではない。


園地案内図 (撮影 2016.10. 6)
   
園地案内図 (撮影 2016.10. 6)
   

<細い林道>
 広い駐車場の先に寂れた林道が分岐する。以前の周辺案内図では「細い林道」と書かれ、今の園地案内図では黄色い線で描かれている。展望広場まで車でも行けるのかと思ったが、入口から直ぐ先にゲートがあり、一般車の進入はできないようだった。


「細い林道」の入口 (撮影 2016.10. 6)
直ぐにゲートで通行止
   

トイレ周辺 (撮影 2016.10. 6)
多くの車が停まる

<トイレ周辺>
 峠の直ぐ手前にはトイレや壁面に「かんばの森」と書かれた管理小屋のような建物が立つ。沿道が駐車場となっていて、ここに多くの車が停まっている。ほとんどが「たか見の広場」へと登っているのだろう。

   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2001.11.10)
左手がトイレ
右の小屋の壁面には「かんばの森」と書かれている
   

<以前の園地案内図>
 以前は「かんばの森」の小屋の並びに「白樺峠園地案内図」の看板が立っていた。説明文などは現在と同じだが、地図がやや異なる。 トイレの目の前、「かんばの森」の小屋の脇から始まる道がまだない。「林内探勝路」は手前にあった駐車場から登るようになっている。「たか見の広場」は展望広場の少し東側を指していた。


以前の園地案内図 (撮影 2001.11.10)
   
以前の園地案内図 (撮影 2001.11.10)
トイレの位置は、実際はもっと樺池寄り
   
   
   
たか見の広場へ(余談) 
   

<たか見の広場>
 白樺峠を訪れて、「たか見の広場」まで登るかどうかは迷うところだ。素人が無闇に訪れても、うまい具合にタカなどが見られる筈がない。 それに標高差で100m近くを歩いて登らなければならないのだ。丁度私たちが訪れた時も、バイクに乗った一人の男性がバイクに跨がったまま、登山口の方をじっと見詰めていた。 しかし、諦めてそのまま走り去って行った。始めからタカなどの観察を目的としていない限り、ちょっと立ち寄るという訳にはいかないのだ。しかも、最近は体調に全く自信がない。20歳代の頃、低山ばかりだが毎週のように山歩きに出掛け、一日中歩き通しても、疲れをほとんど感じなかったのがウソのようだ。


トイレ周辺を麓方向に見る (撮影 2016.10. 6)
右手がトイレ
   

たか見の広場への入口 (撮影 2016.10. 6)

<入口の様子>
 現在の「たか見の広場」への入口にはいろいろ看板がある。ながわ観光協会による「タカ見の広場 入口」の看板が目立っている。松本市役所奈川支所による細かい注意事項なども書かれている。

   
入口に立つ看板 (撮影 2016.10. 6)
   

<野鳥観察の森案内図>
 一番参考になるのは旧奈川村による「白樺峠野鳥観察の森案内図」だ。このトイレ周辺にあるのが樺池駐車場、少し手前にあったのが白樺峠駐車場と呼ぶようだ。
 
 この看板脇から始まる道は「マツムシソウの道」と名付けられている。乗鞍眺望広場まで20分とあり、その先にある「たか見の広場」までも最短路となるようだ。タカを観察する積りはないのだが、展望が良さそうなので思い切って登ることとした。


野鳥観察の森案内図 (撮影 2016.10. 6)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)
   

<マツムシソウの道>
 登り始めは白樺林の中を行く。白樺峠という名の興りもうなずける。その後もなかなかいい勾配が続いた。妻の先導でゆっくり進む。

   

マツムシソウの道を登る (撮影 2016.10. 6)
周囲には白樺の林が広がる

マツムシソウの道を登る (撮影 2016.10. 6)
   

<乗鞍眺望広場>
 それでもコースタイムより数分早く乗鞍眺望広場に着いた。ベンチなどがあるちょっとした休憩に良さそうな広場になっている。背後を振り返ると、乗鞍岳の最高峰である剣ヶ峰(3026m)が正面に望める。

   

乗鞍眺望広場 (撮影 2016.10. 6)
峠方向に振り返って見る

乗鞍岳を望む (撮影 2016.10. 6)
一際高いのが乗鞍主山・剣ヶ峰
   

<尾根沿いを行く>
 乗鞍眺望広場からは、奈川とカンバ沢との分水界となる尾根沿いに南へ少し進む。道標には「たか見の広場」まで所要時間「2分」とあるが、ほぼ平坦路の幅の広い道が続き、歩き易い。

   

乗鞍眺望広場に立つ道標など (撮影 2016.10. 6)

乗鞍眺望広場に立つ道標 (撮影 2016.10. 6)
「たか見の広場」へは「2分」
樺池へ20分、白樺峠駐車場へも20分
   

<たか見の広場>
 「たか見の広場」は尾根上を切り開いた平坦地で、乗鞍岳とは反対の東側に展望が広がる。休憩小屋のような建物やトイレもあり、立派な施設となっている。

   

たか見の広場 (撮影 2016.10. 6)

たか見の広場 (撮影 2016.10. 6)
休憩小屋や奥にトイレもあるようだ
   

<観察者>
 10人程の人たちが、望遠鏡などを東斜面に並べて観察していた。なかなか立派な機材を持っている人も居る。しかし、タカなどが容易に見られる訳ではない。気長に待っている時間の方が長いようだ。椅子なども持ち込み、長期戦の構えである。

   
「たか見の広場」からの展望 (撮影 2016.10. 6)
   

山の案内図 (撮影 2016.10. 6)

<展望>
 タカは見られなくとも、眺めを楽しむだけの価値はある。東を向いているので、足下の谷は奈川の谷である。正面に奈川右岸の峰、左手奥にはその下流の梓川の谷間が見えているようだ。
 
 ここから眺める山々などの名を記した看板があり、参考になる。右端の「スキー場」とは松本市奈川にある野麦峠スキー場のようだ。

   
山の案内図 (撮影 2016.10. 6)
   

松本市街方向を望む (撮影 2016.10. 6)

<松本市街方向を望む>
 景色のやや左手になる松本市街方向を望むと、梓川の谷が奥へと延び、その右岸沿いに国道158号が通じている様子がうかがえる(下の写真)。 驚いたことに、V字の谷の先に平野が広がり、建物が並んでいるのが遠望された。案内図にもあったが、どうやら松本の市街が見通せているようだ。松本市街から国道158号を梓湖くらいまで車で走って来るのは、なかなか大変なことである。それがこの展望所からは一目瞭然だ。

   
梓川の谷を望む (撮影 2016.10. 6)
右岸沿いに国道158号の道筋が確認できる
   
どうやら松本市街が見えているようだ (撮影 2016.10. 6)
   

<鉢盛山方向>
 眺望のグッと右端になだらかな山容の鉢盛山と小鉢盛を望む。ここからは見える位置関係ではないが、鉢盛山の裏手に鉢盛峠が通じている筈だ。

   

鉢盛山方向の眺め (撮影 2016.10. 6)

左が鉢盛山、右が小鉢盛 (撮影 2016.10. 6)
   

<以前の「たか見の広場」>
 過去の白樺峠を越えた時のアルバムを眺めていると、双眼鏡をのぞいている男性たちが写る写真があったた(下の写真)。周囲の景色は「たか見の広場」から眺めたものに間違いない。 何てことはない。以前にも一度「たか見の広場」まで登ったことがあったのだった。すっかり忘れていた。その当時はまだ身体が元気だったので、その程度の山歩きは全く意に介していなかった。自分の気分次第で、日本のどこへでも行ける気がしていた。

   
以前の「たか見の広場」 (撮影 2002. 9.29)
白樺峠を3回目に訪れた時にここまで登ったようだ
   

 遠方の山々の眺めは今と変わりがないが、足元の方はもっと見通しが良かったようだ。奈川右岸に通る県道26号も見えていたらしい(下の写真)。これも木々の成長の為だと思う。

   
奈川の谷を望む (撮影 2002. 9.29)
谷の底の方に県道26号が通じているのが見える
   

 梓川の谷の方も、右岸沿いの国道158号の道筋が、もっとはっきり見えたようだ。ただ、遠くは霞んでいて、松本市街は見えていなかった(下の写真)。

   
松本市街方向を望む (撮影 2002. 9.29)
この時は霞んでいて、市街地までは遠望できなかったようだ
   
   
   
峠の奈川側 
   

<峠の位置>
 白樺峠は峠の位置が極めて分かり難い。トイレなどがある「たか見の広場」入口より先、道はまだ緩やかに登って行く。

   

奈川側より峠方向を見る (撮影 2016.10. 6)
左手にトイレ

奈川側より峠方向を見る (撮影 2016.10. 6)
   

峠より安曇側を見る (撮影 2016.10. 6)
キャンピングカーが停まる付近が峠の様にも見えるが・・・

 写真でキャンピングカーが停まる辺り、ちょっとした切通し状になっていて、見ようによっては峠と思えないこともない。最初はここが峠かとも思ったが、そうではなさそうなのだ。

   

 道はその後も下ることはなく、登り気味か、少なくとも水平移動が続いている(右の写真)。
 
 2001年11月初旬に訪れた時は、まだ峠周辺の木々が少なく、冬枯れで見通しのいい峠であった(下の写真)。ジムニーはキャンピングカーとは反対方向を向いているが、その辺りが峠だろうと思って停めたようだ。しかし、道はまだ下る様子がないことがはっきり分かる。


峠より安曇側を見る (撮影 2016.10. 6)
道は下ることなく続く
   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2001.11.10)
(二度目に白樺峠を訪れた時)
冬枯れの寂しい峠で、見通しはいい
雨模様ともあって観光客の姿など全く見ない
   

<峠>
 右手の山の斜面が路面の高さまで下って来た所で路肩が開け、ちょっとした駐車スペースになっている。停められた車の奥から斜面が下るが、そこはもう安曇側の前川水系となる筈だ。峠は本来、分水界が通過する地点なので、駐車スペースの前辺りが峠となろうか。

   
この付近が白樺峠か? (撮影 2016.10. 6)
左手に「乗鞍高原まで9.5Km」の看板が立つ
右手には単なる角棒が2本並ぶ
白く見える看板は「山火事注意」
   

幅員減少の道路標識 (撮影 2016.10. 6)
その下に「乗鞍高原まで9.5Km」とある
裏側は「奈川まで 10.8Km」とあった
合計20.3Km

<看板>
 白樺峠は以前は安曇村と奈川村との境だった。その村境を示す看板でも立っていたら、峠の位置も分かり易かっただろう。かつては何かの看板が掛かっていたのか、路傍に2本の角棒のみが立つ。
 
 峠には関係ないかもしれないが、「乗鞍高原まで 9.5Km」を示す看板はある。その反対側は「奈川まで 10.8Km」とあった。まあ、この辺りが以前の村境、ピンポイントの白樺峠であろうか。
 
 尚、その看板からは、奈川〜乗鞍高原は20.3Kmという計算になる。県道26号分岐から乗鞍高原の鈴蘭までの距離となろう。

   
峠より奈川方向を見る (撮影 2016.10. 6)
この付近が峠か?
   

<シラカバの道>
 「マツムシソウの道」の入口に立っていた「白樺峠野鳥観察の森案内図」では、漠然とながらも白樺峠の位置が示されていた。 その案合図のよると、峠に近い駐車スペースの脇から「シラカバの道」というのが始まっている。その道は稜線上を西へと進んでおり、丁度かつての安曇村と奈川村との境界に一致するようだ。 よって「シラカバの道」の延長が車道と交わる点が峠ということにもなる。

   
野鳥観察の森案内図(部分) (撮影 2016.10. 6)
「白樺峠」とある
白く塗りつぶされている所は駐車場
   

<「シラカバの道」の入口>
 以前は、「たか見の広場」へは現在「シラカバの道」と呼ばれる道が使われたのだと思う。距離は長いが尾根上を行く道で、歩き易そうだ。初めて「たか見の広場」を訪れたのも、多分この道を使ったのだろう。近くに停まる数台の車も、「たか見の広場」への訪問客の物であろう。

   

「シラカバの道」の入口 (撮影 2016.10. 6)

入口に立つ道標 (撮影 2016.10. 6)
   

 「シラカバの道」の入口にはチェーンが張られていて、一見、車両通行止のようだが、車が通れるような道だったろうか。ただ、「たか見の広場 22分」などと道標があり、歩道としては使用していいようである。

   

「シラカバの道」の入口 (撮影 2016.10. 6)

「たか見の広場」の注意書きなど (撮影 2016.10. 6)
   

<樺池>
 白樺峠の最大の特徴は、峠に隣接して池があることだ。周囲100mにも満たないくらいの小さなものだが、峠にこれだけしっかりした池があるのは珍しいことと思う。 北沢峠など一部の峠で沼地の様な箇所が見られることはあるが、はっきり水が溜まっていることは稀である。白樺峠の池の場合、地形図にも記載がある。ただ、名前までは書かれていない。現地に立つ白樺峠園地案内図や野鳥観察の森案内図で、やっと「樺池」という名であることが分かる。

   
樺池 (撮影 2016.10. 6)
奈川方向に見る
   

 ただ、池があるからといって峠としてメリットがあるかどうかは別ものである。奈川側から引き続き道は登り調子で、側らに池まであっては、尚更ここが峠だとは気付かれ難いのではないだろうか。

   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2001.11.10)
   

<樺池の水域>
 樺池は東の奈川側に水の出口があるようだ。少なくとも西の安曇側はしっかりした岸辺となっている。よって、樺池はカンバ沢の源流(の一つ)であり、奈川の水域にあるものと思う。言い換えれば、樺池までは峠の奈川側に属すものと思う。これは峠の位置に大きく関わる。

   
樺池 (撮影 2002. 9.29)
左手に立つ白い看板に「白樺峠」と書かれていたようだ
   

<「白樺峠」の看板>
 現在、樺池の西端辺りに立つ「幅員減少」の道路標識の裏側に、「奈川まで10.8Km」と書かれた看板がある。しかし、以前の写真をよくよく見ると、どうやら「白樺峠」と書かれていたようなのだ。樺池その物は奈川に側あるが、その岸辺の直ぐ横に安曇との境界線が通り、その辺りが白樺峠となるようだ。
 
 それにしても、風景の一部に池が納まっている峠というのはやはり珍しい。かつて西山牧場がこの地にあったようだが、家畜の飲み水用の溜池にでもなっていたのだろうか。

   
   
   
峠の安曇側 
   

<峠の安曇側>
 道は樺池の西端を巻いて南西へと方向転換する。依然、道は登り気味である。全く峠はどこにあったのだろうかと思うばかりだ。安曇側から峠方向を見ても同様である(下の写真)。一見、道の両側に樹木があり、切通しの様に見えなくもないが、これらの木々は既に安曇側、すなわち前川水域にあるようだ。
 
 いつも、ページのトップにその峠を代表する写真を掲載するのだが、今回はどのアングルで撮った写真がいいのかと随分迷った。どれを取っても峠に見えてこない。これ程峠らしくない峠も珍しい。


峠より安曇方向を見る (撮影 2016.10. 6)
道は依然として登り気味
   
安曇側から峠方向を見る (撮影 2016.10. 6)
軽自動車のパトカーが奈川方向に走り去って行った
   

展望所 (撮影 2016.10. 6)
しかし、今は景色は望めない

<安曇側の展望所>
 白樺峠はあまり峠らしくない峠だが、展望だけはなかなか恵まれていた。峠より安曇側に数10mくらい入ると、路肩が少し広くなっている場所があり、そこより北西方向に視界が開けた。側らには景色の案内看板も立ち、ちょっとした展望所となっていた。
 
 ところが去年(2016年)訪れてみると、木々が高く成長して、視界を完全に遮ってしまっていた。もう全く景色が望めない。以前はこの路肩に車を停め、眺めを堪能する者が多く居たものだ。ここが白樺峠かどいうかなど知らなくとも、その眺めだけは人を引き寄せた。

   

展望所より峠方向を見る (撮影 2016.10. 6)

左の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2002. 9.29)
この時はまだ景色が望め、立寄る人を見掛けた
   

<以前の展望所>
 白樺峠を最初に訪れたのは1993年9月のことだった。もう四半世紀近くも前になる。峠としてはほとんど関心がなく、多分、峠だという認識もないまま通り過ぎたのではなかったろうか。 ただ、路肩から眺められる景色が良さそうなので、わざわざUターンして車を停め、展望所とそこからの景色を写真に収めた。白樺峠に関しての写真はたったそれだけとなった。

   
現役の頃の展望所 (撮影 1993. 9.11)
左手の看板も古い
奈川村から安曇村へとジムニーを走らせていたが、
あまりに眺めが良さそうなので、わざわざUターンして車を停めた
   

<展望>
 かつての展望所からは、旧安曇村側の前川水域の谷を眼下に望み、正面には白骨温泉がある湯川水域との境となる尾根が連なるのが見渡せたようだ。 前川水域の谷は主に本流の前川と支流の小大野川が左から右に流れる。左手の上流部には乗鞍高原が広がる。更にその源流は乗鞍岳の東側の斜面となる。

   
展望所からの景色 (撮影 1993. 9.11)
前川や小大野川の流れる谷間を望む
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)
   

<展望所の案内看板>
 以前より展望所の脇に案内看板が立ち、そこから眺められる景色の説明がされていた。当初は人によって描かれた風景画が使われていたようだが、その後は写真に変わった。

   

以前の案内看板 (撮影 1993. 9.11)

現在の案内看板 (撮影 2001.11.10)
看板の風景は写真を使っている
   

<乗鞍岳の展望>
 案内看板には多くの峰の名が記されている。これらは全て乗鞍岳となるようだ。 文献によると、乗鞍岳は二十数座の峰の総称だそうで、北から四ツ岳・烏帽子岳・大丹生岳などと連なり、最高峰が剣ヶ峰(乗鞍主山)となる。その途中、大黒岳と富士見岳と間の鞍部に車道の乗鞍エコーラインが通じ、畳平に至っている。そこは峠の様で峠でない場所だ。
 
 乗鞍岳の眺めは展望所からの見える景色の左半分に偏る。しかも、手前に前川・湯川の分水界の尾根がそびえ、乗鞍岳の峰々はその上にちょこんと頭を出しているだけだ。 遠くに霞んではっきり見えないこともある。それでも、この展望所からの眺めは白樺峠の貴重な財産だった。ツーリングマップルに書かれた解説によると穂高方面も見えていたようだ。返す返す、展望所からの視界がなくなったのは残念である。

   
2001年に撮った案内看板 (撮影 2001.11.10)
左下に「現在地 標高1,624m」とある
   

<到白骨温泉>
 展望所から見る前方の尾根を一筋の道が登って行く。案内看板にもあるように白骨温泉に至るスーパー林道で、乗鞍−白骨間のB区間(B線)だ。そちらも峠道となり、前川・湯川の分水界を蛭窪隧道で抜けている。蛭窪(ひるくぼ)とはまた気味の悪い名である。

   
2002年に撮った案内看板 (撮影 2002. 9.29)
   

<峠の標高>
 展望所の案内看板をよく見ると、左下隅に「現在地 標高1,624m」と書かれている。
 
 白樺峠の標高を記載した資料はなかなかないが、ある乗鞍高原の観光パンフレットに「1,620m」と出ていたのを見付けた。地形図の等高線もほぼその辺りと読める。最近のツーリングマップルにも「1,620m」と記載されるようになった。
 
 前述のように、白樺峠は安曇側に入っても道は登り調子である。峠を過ぎて約4m登った地点に展望所があるということだろうか。それ程、厳密なことではないが。


2016年に撮った案内看板 (撮影 2016.10. 6)
特に変わりはないようだ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)
   
   
   
峠より安曇側に下る 
   

<安曇>
 白樺峠の西側(正確には北西側)は松本市安曇(あずみ、あづみ)となる。明治7年から安曇村(あずみむら)と呼ばれ、明治22年の市制町村制施行に伴い南安曇郡の安曇村が成立する。 その後、松本市に合併することになるが、その前の安曇村は大字を編成していなかったので、現在の住所としては単に「松本市安曇」となる。 しかし、その旧村域は広い。北アルプス(飛騨山脈)東麓、梓川(犀川)上流域の山間部に位置し、槍ヶ岳、穂高岳、上高地、乗鞍岳、乗鞍高原といった山に関した有数の観光資源を抱えている。その中にあって白樺峠に関わる梓川支流・前川の水域は旧安曇村の最南端に位置する。

   

安曇側の道の様子 (撮影 2016.10. 6)
まだ暫く下らない

<道の様子>
 前川の谷は展望所から直ぐ真下に見え、峠付近からは馬ノ背沢という支流が前川へと流れ下る。しかし、道は谷底へ下ることなく、前川上流方向へと移動して行く。 峠から1Km程は若干の登りかほとんど水平移動の状態を続ける。地形図を見ると、その途中の馬ノ背沢源流部付近で標高1,640mを越える箇所がありそうだ。 峠より約20m高い道のピークが安曇側にあることになる。こうしたところも白樺峠があまり峠道として面白くない点となる。
 
 終始道の右手が谷間で、右手奥が乗鞍岳方向となる。視界が開けそうで開けず、どうにももどかしい思いがする。景色が眺められれば、それなりに楽しめる峠道なのではあるが。

   
僅かに乗鞍岳を望む (撮影 2016.10. 6)
   

 少なくとも2002年に訪れた時は、峠近くの展望所からも、安曇側に下る途中の沿道からも、前川の谷間の景色が望めたようだ(下の写真)。

   
沿道から眺めた景色 (撮影 2002. 9.29)
左手奥が乗鞍主山、右手の谷間が乗鞍高原
この時はまだ視界が広い箇所があった
   

<道の様子>
 峠から1Km以上進めば道はしっかり下り始める。しかし、勾配は緩く、山腹を斜めに伝いながらゆっくり高度を下げて行く。峠に立つ看板では乗鞍高原まで9.5Kmとあったが、当面の目的地は前川沿いに降り立った所に架かる白樺橋である。峠から約6Kmとなる。
 
 地形図を見ると、その間の前半約3.5Kmはまだ一本線の「軽車道」として描かれている。しかし、実際は1.5車線以上の幅員が確保された道で、奈川側から引き続き大差ない。 ただ、前川右岸の崖を高い擁壁が覆う箇所があるかと思えば、谷側のガードレールがグニャグニャに曲がっていたりと、地形の険しさを物語っている。これでは容易にこの崖を下ることはできず、道程6Kmを要としたのもうなずける。


道の様子 (撮影 2016.10. 6)
   

道の様子 (撮影 2016.10. 6)
高い擁壁

道の様子 (撮影 2016.10. 6)
折れ曲がったガードレール
   

<放牧場を望む>
 道が下って白樺橋を渡った前川左岸には、一の瀬牧場という放牧場が広がる。峠から半ばを下ると、その草原が望めるようになる。しかし、それも以前のことで、最近はやはり視界不良のようだ。

   
沿道より一の瀬牧場を望む (撮影 2001.11.10)
   

この先、白樺橋を渡る (撮影 2016.10. 6)
その手前、左に林道が分岐する
この時は工事で片側交互交通

<白樺橋>
 白樺峠の安曇側起点は前川を渡る白樺橋だ。去年訪れた時は、橋を渡った先が工事中で、橋の前後は片側交互通行となっていた。誘導員も出て居て、立止ることができない。峠道の重要な起点なのに、ほとんど写真も撮れないまま行き過ぎた。
 
<ゲート箇所>
 ただ、過去に撮った写真が何枚か残る。白樺橋の直ぐ手前にはゲート箇所がある(下の写真)。しっかりしたゲートだ。 奈川側の旧料金所の直ぐ後にあったゲートと対になって白樺峠の道は挟まれている。概ね奈川側が7.5Km、安曇側が6Kmで、ゲート区間は合計13.5Kmとなる。

   
白樺橋から峠方向を見る (撮影 2001.11.10)
直ぐにゲート箇所がある
   

<林道池の沢線>
 白樺橋を渡る手前、左の前川右岸上流方向に林道が分岐する。しかし入口のゲートが閉じられ、通行禁止の看板が立つ。 林道標柱や林道看板に「林道 池の沢線」とか「池の沢林道」と出ている。前川右岸から更に支流の池ノ沢右岸沿いを遡るようだ。車道としてはどこにも抜けられない道と思われる。

   
白樺橋の手前 (撮影 2001.11.10)
左に林道池の沢線が分岐する
   

<白樺橋>
 白樺橋が渡る前川の谷は深い。なかなか険しい様相だ。この橋がないと上高地乗鞍スーパー林道は成り立たない。橋の袂の護岸を補修したような跡も見られ、維持する為の努力が続けられているのが分かる。


白樺橋 (撮影 2016.10. 6)
手前が峠方向
   
前川右岸から一の瀬牧場のある左岸方向を見る (撮影 2001.11.10)
なかなか険しい
   
白樺橋より前川を下流方向に見る (撮影 2002. 9.29)
右手の右岸沿いに峠道は登って行く
   

白樺橋より前川を上流方向に見る (撮影 2016.10. 6)
左手の崖に池の沢林道が通じる

<前川水域>
 乗鞍高原を含む乗鞍岳東麓から梓川までの一帯の水域は、前川及びその支流の川で構成される前川水域と思われる。白樺峠もその本流となる前川沿いまで下れば、それで峠道はもう終りと言える。
 
 ただ、前川は本流の筈だが、広い谷間の南東の山際を流れている。上高地乗鞍林道・A区間もまだ安曇側の起点・乗鞍高原(鈴蘭)に達していない。余談ながら、話をもう少し先へと進めることとする。

   
   
   
白樺橋以降(以下は余談) 
   

<工事個所>
 白樺橋を渡った道は、下流方向に向かって前川左岸の崖を登って行く。今回の工事は擁壁の補修の様だった。白樺峠から遥々上流方向に迂回して来たが、この地点でもまだ前川の谷は深く険しいことを物語っている。


左岸の工事の様子 (撮影 2016.10. 6)
   

工事の様子 (撮影 2016.10. 6)
重機も出ていた

工事の様子 (撮影 2016.10. 6)
高い擁壁を補修している
   

ひょっこり高原地帯に出る (撮影 2016.10. 6)

<高原地帯へ>
 ところが、左岸の崖を登り切ると景色は一変する。広々とした高原地帯に躍り出たようだ。ほぼ前川とその支流・一の瀬川に挟まれた平坦地で、この先にある乗鞍高原の一部とみなされるのか、あるいは別扱いとなるのかもしれない。

   

<一の瀬牧場>
 直ぐに「一の瀬牧場」と看板が出て来る。一の瀬園地などとも呼ばれるようだ。600m先に中心部となる大きな駐車場があることを示しているが、その途中にも車を停められる場所は多い。
 
<有料林道の区間>
 かつての上高地乗鞍林道・A区間の有料区間は、奈川側の県道26号からの分岐から安曇側のこの「一の瀬牧場」の看板がある地点までと道路地図には描かれていた。その距離は約17Kmになる。
 
 しかし、上高地乗鞍林道・A区間の延長は黒川渡料金所の看板では15.3Kmとあった。この場合、黒川渡料金所から一の瀬牧場までの距離と思われる。 この間、池の沢林道を除けば、ほとんど分岐らしい分岐はない。ただ、15.3Kmという数値はやや大きいようだ。現在は14Km前後と思われる。何か勘違いがあるのだろうか。


左手に一の瀬牧場の看板が立つ (撮影 2016.10. 6)
看板には駐車場まで「あと600M」とある
ここがかつての有料林道の安曇側起点だった筈
   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2001.11.10)
この時は生憎の雨模様で、季節も初冬の寒々しさ
観光客の姿などほとんど見掛けない
   

<乗鞍岳を望む>
 白樺峠から峠道を下る途中は、なかなか乗鞍岳が望めなかったが、麓に降り立ち一の瀬牧場を行く頃には、かえって乗鞍岳がよく見える。皮肉なものである。

   
一の瀬牧場より乗鞍岳を望む (撮影 2016.10. 6)
   

どじょう池付近 (撮影 2016.10. 6)

<どじょう池(余談)>
 以前から、観光地はあまり好きではなかった。人が多いのが苦手である。これまで一の瀬園地も乗鞍高原も、ほとんど素通りであった。しかし、結婚して夫婦での旅をするようになってからは、あちこちのんびり立ち寄りながら旅をするスタイルに変わった。
 
 一の瀬園地でも何か見物する物はないかと見ていると、「どじょう池」という看板が目に留まった。近くの駐車スペースに車を停め、付近を散策する。 最近は海外からの観光客が多く、子供達を引率してサイクリングを楽しんでいる集団も居た。結局、肝心などじょう池は見付からなかった。渇水期なのか、水をたたえた池はなく、草地が広がるばかりだった。観光とはこんなものだと諦めている。

   

<座望庵>
 一の瀬牧場の中に通じる道を暫く行くと、大きな駐車場の側らに建物が立つ。一ノ瀬第一食堂で「座望庵」と呼称される。ここは一の瀬園地の中でもちょっとした中心的存在となるようだ。大型バスなどもやって来る。

   

前方に座望庵 (撮影 2016.10. 6)

左とほぼ同じ場所 (撮影 2002. 9.29)
中央に見えるのが座望庵
   

 間もなく一の瀬川を一ノ瀬橋で渡る。あの前川本流の様な険しさは微塵もなく、高原の中を流れる浅く穏やかな川である。そこで丁度観光バスに追い付いた。海外からの観光客を運んでいるのだろうか。


一の瀬川を渡る (撮影 2016.10. 6)
   
   
   
乗鞍高原(更に余談) 
   

右手に乗鞍高原案内図 (撮影 2016.10. 6)

<一ノ瀬橋以降>
 一の瀬川左岸に入ると直ぐに「乗鞍高原 案内図」という看板が立つ。その脇からサイクリングロードが分かれて行く。ここからが本格的な乗鞍高原のようである。

   

<一の瀬園地入口>
 間もなく三叉路に至る。一の瀬園地入口だ。左手鋭角に分かれる道を行くと野営場などがあるらしい。仮にこの三叉路が上高地乗鞍林道・A区間の安曇側起点とすると、「延長15.3Km」のつじつまが合いそうなのだが。
 
<料金所(余談)>
 ところで、上高地乗鞍林道・A区間の安曇側の料金所はどこにあったのだろうかと、ふと思った。 奈川側には黒川渡の料金所跡がほとんどそのまま残っていたが、安曇側には一の瀬牧場以降、そのような物は見られない。考えてみると、元から料金所はなかったのであった。乗鞍高原側からなら、白樺峠までも只で往復できたようである。
 
 同様に、上高地乗鞍林道・B区間にも料金所は一箇所だった。ただ、そちらは乗鞍高原側にあった。その為、白骨温泉方面には只では一歩も進めなかったようだ。


一の瀬園地入口 (撮影 2016.10. 6)
三叉路になっている
   

鈴蘭に至る (撮影 2016.10. 6)

<鈴蘭>
 沿道に建物が並びだし、華やいだ雰囲気になって来る。高原のリゾート地といった趣だ。旧安曇村の鈴蘭と呼ばれる地区で、乗鞍高原観光の中心地となる。標高は既に1,500mに近く、避暑地としても適しているのだろう。
 
 以前はこうした場所は苦手だった。長い時間留まることはなかった。ただ、11月初旬に訪れてみると、観光客の姿などほとんど見掛けず、寒々しい様子だった。これなら自分の旅にはぴったりな所だと思った。

   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2002. 9.29)
若者たちが散策する
何となく一昔前のレトロな雰囲気が漂う
   

道路看板 (撮影 2002. 9.29)

<鈴蘭の十字路>
 前川水域の谷間の中央を、ほぼ東西に県道84号(主要地方道)・乗鞍岳線が横断し、乗鞍高原の幹線路となっている。上高地乗鞍林道はその県道と交差する。 仮にそこを鈴蘭の十字路と呼んでおく。鈴蘭の十字路より手前が上高地乗鞍林道内の白樺峠を越えるA区間、先が蛭窪トンネルを抜けて白骨温泉に至るB区間となる。
 
 鈴蘭の十字路は大観光地である乗鞍高原に於ける中心地的な場所になっている。交差点角に立つ大きな建物は乗鞍観光センターで、バスターミナルと広い駐車場が隣接する。畳平に通じる乗鞍エコーラインがマイカー規制になってからは、ここから多くの観光客がバスに乗って畳平へと向かう。

   
鈴蘭の十字路 (撮影 2016.10. 6)
手前が白樺峠方向
正面の大きな建物は乗鞍観光センター
   

<県道84号>
 国道158号が通る梓川沿いの前川渡(まえかわど)を起点に、乗鞍高原に至る県道84号は、乗鞍高原やその先の乗鞍岳への最もポピュラーなアクセス路となる。 特に松本方面から来る場合、まずこのコースを採るのが通常だろう。前川水域の川に沿って通じるので、峠越えのない平坦な道となる。道路の状態も良い。しかし、ほとんど利用したことがない。 松本からやって来ても、わざわざ白樺峠を越える上高地乗鞍林道へ迂回してしまったりした。調べてみると、白樺峠は4回越え、蛭窪トンネルは3回抜けている。一方、前川渡と乗鞍高原との間の県道84号を通ったのは僅かに1回だけだった。

   

県道84号から鈴蘭の十字路を見る (撮影 2016.10. 6)

県道84号上の看板 (撮影 2016.10. 6)
右の「59Km 木曽福島」が白樺峠方向
   
鈴蘭の十字路 (撮影 2016.10. 6)
県道84号上より前川渡方向を見る
   
鈴蘭の十字路 (撮影 2016.10. 6)
乗鞍観光センターより見る
   
乗鞍観光センターに隣接する広い駐車場 (撮影 2002. 9.29)
観光センターを背にして見る
畳平への道がマイカー規制となった現在は、ここはバスに乗る観光客で大混雑する
   

<乗鞍エコーライン・スカイライン>
 県道84号上部の畳平に至る区間は「乗鞍エコーライン」と呼ばれ、畳平で岐阜県側に下る「乗鞍スカイライン」に接続する。これらがマイカー規制となる前は、乗鞍観光センターの直ぐ先に車両通行規制などの看板が立ち、 
 
 夜間全車両通行止 18:00〜7:00
 この先 3.0Kmの国民休暇村から
 
 大型車両通行止 12:00〜18:00
 この先 6.2Kmの三本滝から

 
 などと出ていた。また、冬期には「乗鞍スカイライン 道路交通情報」は「閉鎖」となるのだった。「三本滝入口」から先がマイカー通行止となった今は、こうした情報はもう用済みとなった為か、看板はさっぱりと撤去されている。


県道84号を畳平方向に見る (撮影 2016.10. 6)
乗鞍観光センターの駐車場の前
   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2001.11.10)
以前は「乗鞍スカイライン 道路交通情報」(左側)や「車両通行規制」(右側)の看板が立っていた
この時は、白樺峠・蛭窪トンネルは越えられたが、さすがに畳平方面は通行止になっていた
   

三本滝レストハウスを望む (撮影 2002. 9.2)
乗鞍エコ--ラインの途中より

<白樺峠を望む>
 白樺峠の安曇側で乗鞍岳が望めたが、その逆に、乗鞍岳へと登る乗鞍エコーラインから白樺峠方面が望めることとなる。 三本滝入口を過ぎた辺りから眺めが広がりだし、三本滝レストハウスを下に見る頃には白樺峠方向の遠望が得られる(下の写真)。右手奥になだらかな山容の鉢盛山(左)と小鉢盛(右)の峰が見える。その手前の尾根の斜面を道が通じる。それが白樺峠の峠道になる。ただ、峠の鞍部はあまりはっきりしないようだ。

   
前の写真とほぼ同じ場所 (撮影 2016.10. 7)
畳平から下って来たバスの車中より撮影
この旅では休暇村乗鞍高原に一泊し、初めて乗鞍高原でゆっくり時を過ごした
最初に白樺峠を越えてから23年の月日が経っていた
   
畳平(岐阜県との県境)から見た白樺峠方面の眺め (撮影 2016.10. 7)
丁度、正面辺りに白樺峠が通じる筈だ
(上の画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)
   
   
   

 乗鞍エコーライン・スカイラインがマイカー通行止となり、雄大な山岳道路のドライブを楽しむことはもうできない。その一方で上高地乗鞍林道は無料となり、白樺峠の道は利用し易くなった。 しかし、残念ながら眺望がない。沿道の木々が切り払われ、かつての視界が取り戻せたらと思う、白樺峠であった。

   
   
   

<走行日>
・1993. 9.11 奈川→白樺峠→安曇 ジムニーにて
・2001.11.10 奈川→白樺峠→安曇 ジムニーにて
・2002. 9.29 奈川→白樺峠→安曇 キャミにて
(2008. 7. 7 沢渡→白骨温泉→乗鞍高原→K84 パジェロ・ミニにて)
・2016.10. 6 奈川→白樺峠→安曇 ハスラーにて
(2016.10. 7 乗鞍高原からバスで畳平まで往復、その後白骨温泉方面へ ハスラーにて)
 
<参考資料>
・角川日本地名大辞典 20 長野県 平成 3年 9月 1日発行 角川書店
・角川日本地名大辞典のオンライン版(JLogos)
・県別マップル道路地図 20 長野県 2004年 4月 2版 7刷発行 昭文社
・中部 2輪車 ツーリングマップ 1988年5月発行 昭文社
・ツーリングマップル 4 中部 1997年3月発行 昭文社
・ツーリングマップル 4 中部北陸 2003年4月3版 1刷発行 昭文社
・その他、一般の道路地図など
 (本サイト作成に当たって参考にしている資料全般については、こちらを参照 ⇒  資料

<1997〜2017 Copyright 蓑上誠一>
   
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