ホームページ★ 峠と旅
天狗峠
  てんぐとうげ  (峠と旅 No.300)
  白神ライン中央の峠道
  (掲載 2019. 9. 4  最終峠走行 2018.10.13)
   
   
   
天狗峠 (撮影 2018.10.13)
手前は青森県西津軽郡深浦町大字長慶平
奥は同県西津軽郡鰺ケ沢町大字一ツ森町
道は県道28号(主要地方道)・岩崎西目屋弘前線(通称:白神ライン、旧弘西林道)
峠の標高は約765m(地形図の等高線より読む)
(上の画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)
ちょっと見は何でもない小さな峠
しかし、この峠を越えるには未舗装の長い白神ラインを走って来なければならない
それに、旅をするには青森は遠い
 
 
 
   

<白神ラインの峠>
 前回の津軽峠に続く白神ラインの峠となる。白神ラインには津軽峠・天狗峠・一ツ森峠と3つの峠が繋がるが、その真ん中に位置する。

   

<所在>
 峠の東側は青森県西津軽郡鰺ケ沢町(あじがさわまち)大字一ツ森町(ひとつもりまち)で、西側は同県同郡深浦町(ふかうらまち)大字長慶平(ちょうけいだいら)。
 
 ただ、天狗峠は鰺ケ沢町・深浦町のどちらに於いても、人里から遠く離れた白神山地の奥深くに位置する。その為、あえて大字を示すとすると、鰺ケ沢町の大字一ツ森町、深浦町の大字長慶平となるようなのだが、それぞれの集落からは遠く離れた存在の峠である。

   

<地形図(参考)>
国土地理院地形図 にリンクします。
   


(上の地図はマウスによる拡大・縮小、移動ができるようです)
   

<水系>
 天狗峠の水系や立地は、非常に単純だ。峠の東側では秋田県境の二ツ森(1087m)付近を水源とする赤石川(あかいしがわ)が鰺ケ沢町内を北流し、赤石で日本海に注ぐ。 西側では、やはり秋田県境の真瀬岳西方を源流とする追良瀬川(おいらせがわ)が、深浦町内をほぼ北流して追良瀬で日本海に注いでいる。峠は赤石川水系と追良瀬川水系の分水嶺上に位置する。
 
 赤石川も追良瀬川も、両岸に山が迫る谷間を流れ下るので、あまり大きな支流を持たない。 その為、天狗峠はそれぞれの支流上部に位置するのだろうが、そうした小さな川の名前はほとんど分からない。ただ、追良瀬川には「栃木沢」という支流が地形図に見られ、天狗峠はどうやらその上流部に位置するようだ。

   

<長慶平(余談)>
 ところで、鰺ケ沢町の一ツ森町集落は、赤石川の下流ではあるが、その川沿いに位置する。それで、赤石川上流部までが大字一ツ森町というのは納得がいく。 同様に、深浦町の追良瀬川上流域は、その河口部に位置する追良瀬の領域かと思っていたら、長慶平(ちょうけいだいら)という地名が出て来た。 しかし、明治22年に成立した深浦村(大正15年に町制施行)の大字に長慶平は見られない。文献によると、昭和22年頃になって深浦町の大字に組入れられたそうだ。
 
 長慶平の集落は日本海に注ぐ吾妻川支流の東股沢上流部に位置する。追良瀬川沿いではない。しかし、長慶平の地域は、元は国有林で営林署の管轄に属していたそうだ。多分、天狗峠がある地域もその国有林で、それで大字としては長慶平となったのではないかと想像する。
 
 尚、「長慶」の由来は長慶天皇(1343年 - 1394年)に関わる伝説・故事に由来するそうだ。また、白神山地には長慶森や長慶峠があるが、この「長慶」も長慶天皇に関係するとのこと。

   

<立地>
 峠は赤石川及び追良瀬川の中・上流域にある。通常はこうした川沿いに道が通じる。 確かに赤石川沿いには町道・赤石渓谷線(旧赤石川林道)が通じるが、深い渓谷沿いの険しい道で、2018年10月現在土砂崩れの為通行止である。 一方、追良瀬川沿いにも何か林道の様な道が地形図に描かれるが、まず一般車が走れるような代物ではなさそうだ。
 
 よって、天狗峠の峠道は赤石川・追良瀬川それぞれの本流沿いを走ることはほとんどない。東方の西目屋村から津軽峠を越えて来るか、西方の旧岩崎村(現深浦町岩崎)方面から一ツ森峠を越えてやって来る以外、道がないのだ。天狗峠のみの峠道はせいぜい10数Kmとそれ程長くはない。しかし、そこに至るまでの道程の方がずっと長いという状況になっている。

   

<峠名>
 天狗峠は白神ライン、その前身の弘西林道の峠ということ以外、詳しいことは分からない。多分、林道開削に伴い新しくできた峠と考えるのが妥当だろう。峠誕生の折り、新しく名前が付けられたものと思う。
 
<天狗岳>
 峠は赤石川水系と追良瀬川水系の分水嶺上に位置するが、その分水嶺上、峠の北4Km余りに天狗岳(てんぐだけ)と呼ぶ山がある。標高958m、白神山地の青森県側ほぼ中央部に位置する。多分、この山名を取って天狗峠と名付けられたものと想像する。

   
   
   
鰺ケ沢町側から峠へ 
   

<「やすらぎの駐車帯」より峠へ>
 津軽峠と天狗峠の境は、赤石川に架かる赤石大橋と考える。この橋のの西側袂に「岩崎西目屋弘前線 やすらぎの駐車帯」という施設が設けられている。ここを天狗峠への鰺ケ沢町側起点と考えても良さそうだ。

   

「やすらぎの駐車帯」前より峠方向を見る (撮影 2018.10.13)
この直ぐ先から未舗装路となる

峠方向から「やすらぎの駐車帯」を振り返る (撮影 2018.10.13)
左の工事の看板は赤石大橋の橋梁補修工事を示す
   

<天狗峠への登り>
 新しく架け替えられた赤石大橋に続く舗装路面は、「やすらぎの駐車帯」の前を過ぎると昔ながらの寂れた土の道に戻る。 白神山地が世界遺産となり、旧弘西林道が主要地方道・岩崎西目屋弘前線に昇格して「白神ライン」などとも呼称されるようになった今でも、天狗峠前後の道はほとんど舗装化が進んでいない。多分、かつて60Kmもの未舗装林道だった頃の面影を強く残していることだろう。

   

道の様子 (撮影 2018.10.13)
看板の裏には「弘前 55km、西目屋 38km」と出ている
赤石大橋から2Km程の地点

道の様子 (撮影 2018.10.13)
木漏れ日の中を行く
   

<道の様子>
 天狗峠の鰺ケ沢町側の登りは、とにかく屈曲が多い。峠までの約7Kmの間、ほとんど休みなくカーブを曲がって行く。 ドラレコ画像を見るとそれは一目瞭然なのだが、写真ではなかなか適当なショットがなかった。登りの前半は視界も広がらず、木漏れ日の林の中である。 しかし、後半に入ると徐々に空が開けて明るい雰囲気となり、それなりの展望もある。

   
やや視界が広がって来た (撮影 2018.10.13)
   

<南への展望>
 道は概ね南側に赤石川支流の谷を臨み、その先に秋田県との県境に広がる白神山地の稜線を眺めるようになる。

   
沿道からの眺め (撮影 2018.10.13)
南に白神山地の高い峰が連なる
   

<稜線方向を望む>
 その内、峠が越える赤石川・追良瀬川の分水嶺方向(西方)も見通せる箇所が出て来る。道は一部に険しさを見せる山岳道路の様相を呈し、峠道の面白みを感じさせてくれる。

   

峠が通じる稜線方向を望む (撮影 2018.10.13)

ちょっとした山岳道路の雰囲気 (撮影 2018.10.13)
   

<峠直前>
 峠の1Km程手前で「能代 85Km、岩崎 31Km」の看板が出て来る。その看板の反対側には「弘前 59Km、西目屋42Km」とある(後部のドラレコで調べた)。 西目屋〜岩崎間は約73Kmという計算になる。あまり意味がないが、弘前〜能代間は約144Kmである。

   

道路看板が立つ (撮影 2018.10.13)
「能代 85Km、岩崎 31Km」と出ている

道路看板 (撮影 2018.10.13)
   

<沿道の様子>
 津軽峠の道では、沿道に山菜採りだかキノコ採りだかの車が多く停められていたが、この天狗峠の道でもポツリポツリとそうした車が見受けられる。 車の近くの路肩で何か作業している方も居た。離合する車は少ないが、あると大抵軽トラである。こんな山深くまで、のんきな観光ドライブに来る者はやはり少なそうだ。

   
   
   
 
   

峠の100m程手前 (撮影 2018.10.13)
前方の看板がある所が峠

<鰺ケ沢町側から峠に着く>
 峠の100m程手前で、東の津軽峠のある峰が僅かに望めた。ただ、どこが津軽峠だかよく分からない。
 
 
<峠の様子>
 天狗峠はこじんまりしている。やはり白神山地の主稜を越えるような豪快さは微塵もない。赤石川・追良瀬川分水界上にある793mのピークの南側をぐるりと巻くように峰を越えている。 ピーク寄りに道が通じるので、峠は正確には鞍部の底にない。南側がやや開けていて、峠として一般的な「切通し」の形態があまりはっきりしない。その点、峠としての趣も劣るような気がする。

   
天狗峠 (撮影 2018.10.13)
手前が鰺ケ沢町、奥が深浦町
左上に中継雨量観測局がある
   

<峠の鰺ケ沢町側>
 峠の直ぐ手前から舗装路面が始まっている。しかし、それも峠前後だけである。天狗峠の峠道では基本的に全線未舗装で、駐車帯やトイレなどの施設の前だけ、申し訳程度に舗装されている。舗装路面が出てきたら、何かあるなと思えばいい。
 
 町境や峠名を示す看板はしっかりしている。しかし、それ以外何の説明も案内もなく寂しい峠である。


峠の鰺ケ沢町側に立つ看板 (撮影 2018.10.13)
   

<中継雨量観測局>
 特に峠の鰺ケ沢町側は狭く、ただただ道が通じるだけである。車をちょっと停めるスペースもない。目に付くのは何かの設備で、小屋の入口に中継雨量観測局とある。脇にはアンテナの柱が立つ。名前からして、追良瀬と赤石との間を中継する電波施設のようだ。

   

中継雨量観測局 (撮影 2018.10.13)

中継雨量観測局の銘板 (撮影 2018.10.13)
青 森 県
鰺ケ沢土木事務所
追良瀬赤石中継雨量観測局
   

 ところで、この白神ラインには電線が通っていないようだ。沿道に全く電柱を見掛けない。人が住むような地帯ではないので、そういうものなのだろう。こうした電波施設などは、どのようにして給電しているのだろうか。

   
峠を背に弘前市街方向を見る (撮影 2018.10.13)
直ぐに舗装が途切れる
   
   
   
峠の深浦町側 
   

<深浦町側へ>
 峠の深浦町側は幾分広い。路肩には何台か車が置ける余裕がある。先客の車が一台停まっていた。登山でもしているのだろうか。

   
峠より深浦町側を見る (撮影 2018.10.13)
   
深浦町側から見る峠 (撮影 2018.10.13)
   

峠の深浦町側に立つ看板 (撮影 2018.10.13)

<看板など>
 町境の看板などは、一本の支柱の表裏にまとめて掲げられている。あっさりしたものだ。天狗峠の名の由来でも説明があると嬉しいのだが。
 
<標高>
 看板の支柱が立つ所がほぼ最高地点である。地形図を読むと標高約765m。津軽峠(約650m)や一ツ森峠(約700m)と比べると、最も高い。やはり白神ラインの真ん中に位置する為か。
 
 ただ、全般に印象の薄い峠でもある。弘前市街から最初に越える津軽峠などに比べると、印象に残る事柄がほとんどない。写真を見直して、こんな峠だったかとやっと思い起こす程である。

   
峠を引いて見る (撮影 2018.10.13)
右手に登山道が始まっている
   

<登山道>
 峠から北への稜線上には登山道はなさそうだったが、南へは道が付いていた。地形図にも天狗岳まで歩道が描かれている。入口に標柱が2本、朽ち掛けて傾いていた。大きな方では、
 ・・・山地現地案内
 天狗峠待ち合わせ場・・

 とまで読めた。多分、「白神山地現地案内 天狗峠待ち合わせ場所」であろうか。小さい方は「五四」の二文字だけで、何のことだかさっぱり分からない。
 
 それにしても「待ち合わせ場所」というのがちょっと微笑ましい。しかし、ここは登山として安易な地域ではない。津軽峠では遭難が多発しているという看板が立っていた。

   

右手に登山道入口 (撮影 2018.10.13)

朽ちた標柱 (撮影 2018.10.13)
   

<管理歩道>
 登山道が延びる林の中に、次の看板を見付けた。
 通行注意
 この歩道は、白神山地世界遺産地域の管理歩道です。
 この先二カ所で斜面が崩れています。
自らの責任により安全確保ができない方は、通行をご遠慮ください。

 
 登山道はこの峠と天狗岳の間にだけ通じるようで、あまり登山に人気がある訳ではないかもしれない。もっぱら、管理用に利用されているのだろう。車の先客があったが、登山ではなく、やはり山菜採りにでも行っているのかもしれない。

   

林の中に看板がある (撮影 2018.10.13)

看板 (撮影 2018.10.13)
   

 峠の深浦町側は、その先暫く視界がないが、徐々に開けて行きそうな予感を感じさせる。

   
峠より岩崎方向を見る (撮影 2018.10.13)
   
   
   
峠から深浦町側へ 
   

<深浦町側へ>
 峠に続き、珍しく新しそうなアスファルト路面が延びる。

   

深浦町側へ下り道 (撮影 2018.10.13)
アスファルト舗装だ

視界が広がりだす (撮影 2018.10.13)
   

<展望>
 間もなく視界が広がり、南西方向に展望が開けた。多分、天狗岳も視界に入って来ているかと思うのだが、どれだか判別がつかない。

   
南西方向の展望 (撮影 2018.10.13)
天狗岳は更にこの左らしい
   

<天狗岳展望所>
 視界が開けた付近は、僅かに路肩が広くなっいるが、車を長く停められるような場所ではない。更にその先にも僅かな路肩があり、そこに古ぼけた看板が立っていた。「白神ライン・天狗岳展望所」とある。ただ、その背後は林と化し、既に眺望は失っていた。津軽峠の奥赤石展望所と同じ運命である。
 
 看板の説明によると、この展望所からは天狗岳や白神山地最高峰の向白神岳(むかいしらがみだけ、1243m)などが望めたようだ。天狗岳が望めることは、天狗峠の名の由来にも関係しそうに思う。 また、先程の位置からでは、天狗岳は視界の左に切れてしまっていることが分かった(前の写真)。尚、峠からここまで舗装路が続いていたのは、この展望所があるからかと思ったりした。

   

この先左に看板 (撮影 2018.10.13)

天狗岳展望所の看板 (撮影 2018.10.13)
   

<道の様子>
 鯵ケ沢町側に比べ、鋭い屈曲は少ないが、峠直下はそれなりの山岳道路の雰囲気である。

   
山はやや色付き始めていた (撮影 2018.10.13)
その中に白い擁壁が見える
   

「法面をなおしています」の看板 (撮影 2018.10.13)

<法面工事>
 天狗岳展望所前の舗装路が途切れたが、また直ぐに舗装路面となった。何かと思っていると、法面の工事個所であった。新しそうな法面とその前後にも古そうなコンクリート擁壁が続いていた。この付近の地形は険しい。擁壁工事と共に、その部分だけ舗装しているようだ。

   

法面工事区間 (撮影 2018.10.13)
ここで展望が開ける

工事個所を峠方向に見る (撮影 2018.10.13)
   

<眺望>
 法面工事区間では、そこだけ視界が広がる。現在の天狗岳展望所では見通せない、東寄りの景色が望めた。天狗岳が視界に入るかどうか、ギリギリの所である。

   
法面工事区間からの眺望 (撮影 2018.10.13)
左端の木の付近が天狗岳だったようだ
正面やや右に最も高く見える山は太夫峰(1164m)だと思う
その直ぐ左奥に向白神岳がある
   

<沿道の様子>
 擁壁箇所を過ぎると地形は安定するが、一方で視界の広がらない林の中となる。ただただ目の前の砂利道を見詰めながら車を走らせる。道は栃木沢という追良瀬川支流の右岸上部に通じる。
 
<離合車>
 天狗峠を更に西へと越え、いよいよ弘前市街方面から山菜採りなどで訪れる車は居なくなったかと思っていると、続けざまに数台の車と離合した。どれも山菜採りとは思えない洒落た乗用車ばかりである。こんな未舗装路にはどうにも似つかわない。


道の様子 (撮影 2018.10.13)
   

道路看板 (撮影 2018.10.13)
「能代 81Km、岩崎 27Km」

青い車とすれ違う (撮影 2018.10.13)
看板には「弘前 63km、目屋村 46km」とある

   

道の様子 (撮影 2018.10.13)

<追良瀬川右岸へ>
 道はいつしか追良瀬川本流の右岸の山腹を大きく蛇行して下りだす。しかし、谷底の様子などはうかがえない。

   

<バイク(余談)>
 不意に3台のバイクが後続車として現れた。これは勿論、山菜採りではなく、未舗装の白神ラインを走りに来たのだろう。オフロード・バイクである。荷物をほとんど持たず軽装なのを見ると、地元の者だろうか。
 
 私はバイクで林道を走るのはほとんど旅先だったので、大きな旅行荷物を荷台に積んでいた。深砂利の急坂で転倒などすると、重くてバイクが起こせない時もあった。いつもソロツーリングなので、手伝ってくれる者もなく、わざわざ荷物バッグを外してバイクを起こしたこともあった。
 
 元はバイク乗りだったので、こういう場合、バイク・ライダーには理解がある。路肩が広い所を見付け、バイクに道を譲る。ライダーの一人は、片手を挙げて挨拶して行った。


バイクに道を譲る (撮影 2018.10.13)
   

<分岐>
 最初は追良瀬川下流方向へ、次に上流方向へと道は多きく屈曲して下る。その転換のカーブの所に分岐があった。単なる行止りの枝道だと思って何ら関心を持たなかった。分岐を少し入った奥に、一台の車が停められていたのを見ただけだった。

   

右に分岐 (撮影 2018.10.13)

分岐を峠方向に見る (撮影 2018.10.13)
   

<追良瀬川沿いの道>
 後になって地形図を見ていると、その分岐の道は、追良瀬川右岸上部を下り、遂には追良瀬川沿いの追良瀬の松原集落まで至っている。 ただし、恐ろしいばかりに山中を屈曲する道で、到底まともな林道とは思えない。一旦は追良瀬川沿いに車道らしき物を通したものの、ほとんど補修されることなく、今は廃道寸前ではないかと想像する。

   
   
   
分岐以降 
   

右手に谷を臨む (撮影 2018.10.13)

<追良瀬川沿いへ>
 分岐を過ぎ、道はやっと追良瀬川沿いへと真っ直ぐ下って行く。川岸に至るまで残り1Km余りだ。それまで概ね道の左手にあった谷が、この区間では右手になる。
 
 
<舗装路面>
 下る途中、久しぶりに舗装路が出て来た。今度は何が出て来るだろうか。

   

舗装路面が出て来た (撮影 2018.10.13)

小屋の屋根が見える (撮影 2018.10.13)
   

<滝>
 舗装路の先の急カーブの山側に小さな滝が落ちていた。ただ、舗装路はこの為ではない。

   
小さな滝 (撮影 2018.10.13)
   

<トイレ>
 滝とは反対側に「白神山地公衆トイレ」と看板のあるトイレ施設があった。随所に立つ白神ラインの案内看板にも、このトイレは記載されている。ただ、現在は使用禁止のようである。断りの貼紙が貼ってあった。

   

トイレ (撮影 2018.10.13)
但し、今は使用禁止

トイレ付近の様子 (撮影 2018.10.13)
峠方向に見る
   

<世界自然遺産の看板>
 トイレ横には古そうな世界自然遺産に関する看板が立つ。多分、こうした施設や看板は、白神山地が世界遺産に登録されたのを機に設けられたのではないかと思う。今は年月が過ぎ、老朽化が目立つ。天狗峠展望所も同様であったか。

   

トイレの横に看板 (撮影 2018.10.13)

世界自然遺産の看板 (撮影 2018.10.13)
   
   
   
追良瀬大橋 
   

<追良瀬大橋>
 道は追良瀬川の岸に辿り着くと、そのまま直ぐに追良瀬大橋を渡る。その直前、また舗装路である。
 
 橋は鉄骨組みで、津軽峠の西目屋村側に架かる暗門大橋と構造が似ている。橋上の道幅は狭く、乗用車どうしても離合はやや難しい。丁度対向車があったが、相手側が待ってくれた。


右岸側から見る追良瀬大橋 (撮影 2018.10.13)
   

橋の銘板 (撮影 2018.10.13)
「営林署」の文字だけ見えた

こちら側の銘板は草で何も見えず (撮影 2018.10.13)
   

左岸側から見る追良瀬大橋道 (撮影 2018.10.13)

<竣工年>
 右岸側の銘板はほとんど読めなかったが、左岸側の銘板により竣工年が昭和45年(1970年)11月と分かった。
 
 暗門大橋の竣工が昭和39年11月だが、それに遅れて6年後に竣工している。白神ラインの前身となる弘西林道の建設期間が昭和36年(昭和37年とも)〜昭和48年なので、やはりその林道開削時に架けられた橋である。
 
 現在からすればそれほど大きな橋でないが、暗門大橋も追良瀬大橋も「大橋」と名付けられている。弘西林道開削の意気込みが感じられる。

   

「昭和45年11月竣工」とある (撮影 2018.10.13)

「追良瀬大橋」とある (撮影 2018.10.13)
   

<追良瀬川>
 追良瀬大橋の上からは追良瀬川の流れがよく見渡せる。深浦町に流れる川でありながら、深浦の中心地などが立地する海岸部からは直接この川沿いを遡る道が整っていない。遥々西目屋村側からか旧岩崎村側から、未舗装の旧弘西林道をやって来なければ、この川面は望めない。そう思うと、貴重な眺めである。

   
追良瀬川上流方向を望む (撮影 2018.10.13)
心なしか穏やかな流れに見える
   
追良瀬川下流方向を望む (撮影 2018.10.13)
   
   
   
追良瀬川左岸 
   

<追良瀬川左岸>
 追良瀬大橋の左岸側では路肩が広くなっていて、車を停めるスペースになっている。ただし、トイレなどの施設らしい施設はない。橋の袂に通行止のバリケードが倒されていたが、追良瀬大橋以東を通行止とすることもあるのだろう。

   

通行止ゲートが側らにあった (撮影 2018.10.13)

左岸より追良瀬大橋を見る (撮影 2018.10.13)
橋の手前左にゲートが倒されている
   

<分岐>
 追良瀬川の左岸を上流方向へと道が分かれている。分岐の角には「白神山地世界遺産地域」の看板が立ち、その前に先程道を譲ったバイク・ライダーたちが休憩していた。

   

南に専用道路が分岐 (撮影 2018.10.13)

分岐の角に世界遺産の看板が立つ (撮影 2018.10.13)
   

左に通行禁止の看板 (撮影 2018.10.13)

<専用道路>
 分岐する道が気になったので、ちょっと奥まで歩いてみた。最初に出て来た看板には、この先約2Kmは発電所保守の専用道路の為、通行禁止の旨が記されていた。
 
 更に進むとゲートで車両通行止となっていた。ゲート先に立つ看板では、自動式の取水施設があり、いつ動くか分からないとの注意書きがされていた。

   

専用道路のゲート (撮影 2018.10.13)

ゲート先の看板 (撮影 2018.10.13)
   

<追良瀬川堰堤(余談)>
 この東北電力の専用道路を2Km程遡ると、追良瀬川に追良瀬川堰堤(追入瀬堰)が架かる。 一方、鰺ケ沢町に流れる赤石川上流にも赤石ダム(赤石堰堤、昭和31年完成)が、旧岩崎村の笹内川(ささないがわ)上流には笹内堰堤がある。 これらは導水トンネルで集められ、旧岩崎村松神にある東北電力大池系発電所に送られるそうだ。この三河川での堰堤建設は、まだ弘西林道開通前のことになる。白神山地の未開の奥地での工事は困難なことであったろう。
 
 ふと思い当たる節がある。赤石川沿いの旧赤石川林道(現町道・赤石渓谷線)やそれに続く奥赤石(川)林道の開削は、赤石ダムや導水路の建設が目的の一つではなかったろうか。 同様に、前述の追良瀬川右岸に残る道も、追良瀬川堰堤建設の為に通した道ではなかったかと想像するのだ。白神ラインが整備された今日では、その林道を使用する必要性がなくなり、保守も行われなくなったのではないだろうか。

   

世界遺産の看板 (撮影 2018.10.13)

看板の地図の一部 (撮影 2018.10.13)
天狗峠前後の道が示されている(参考まで)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大画像が表示されます)
   

<道路看板>
 追良瀬川沿いから一ツ森峠方向へと再び登って行く道に、丁度道路看板が立つ。「能代 78Km、岩崎 24Km」とある。

   

一ツ森峠方向に立つ道路看板 (撮影 2018.10.13)

道路看板 (撮影 2018.10.13)
   

<道程>
 看板の裏側には「弘前 67Km、西目屋 50Km」とあった。これらからすると、西目屋〜岩崎間は74Kmで、前に73Kmと計算されたのとちょっと異なるが、お愛嬌である。
 
 こうした看板などを頼りに天狗峠に関する道程を調べてみると、ほぼ次のようになる。
・赤石大橋〜天狗峠:約7Km
・天狗峠〜追良瀬大橋:6〜7Km
・合計:13〜14Km
 
 車にとっては長い距離ではない。しかし、主要地方道であるとか白神ラインなどと呼ばれても、未舗装林道と何ら変わりない道である。その前後の峠越えも加味すると、時間の余裕をもって臨みたい峠道だ。


追良瀬川大橋方向に見る道路看板 (撮影 2018.10.13)
   
   
   

 「峠と旅」での掲載峠数が、今回でやっと区切りの300峠に達した。22年かかってしまった。この分では400峠も覚束ない。私の人生も先が見えて来たと思う、天狗峠であった。

   
   
   

<走行日>
・2018.10.13 鰺ケ沢町→深浦町 ハスラーにて
 
<参考資料>
・角川日本地名大辞典 2 青森県 1985年12月発行 角川書店
・角川日本地名大辞典のオンライン版(JLogos)
・東北 2輪車 ツーリングマップ 1989年5月発行 昭文社
・ツーリングマップル 2 東北 1997年3月発行 昭文社
・マックスマップル 東北道路地図 2011年2版13刷発行 昭文社
・その他、一般の道路地図など
 (本サイト作成に当たって参考にしている資料全般については、こちらを参照 ⇒  資料

<1997〜2019 Copyright 蓑上誠一>
   
峠と旅         峠リスト