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仮にも国道ともあろうものが、峠の部分で未開通となっているケースが案外多い。全く通れないのも何だからと、国道の代わりに細々と林道が峠を越えて、辛うじて車が越せる様になっている場合もある。権兵衛峠や甲子峠、青崩峠、十石峠などがその例と言えるだろう。そしてこの竜王峠もそうであった。
香川県琴南町と徳島県美馬町の県境をまたぐ国道438号は、県境の峰で未開通であった。代わりに竜王山林道が峰を越え、その林道の峠が竜王峠である。 香川県側から国道438号を県境方面に進んで来ると、いつしか明神川の暗い谷間に入り込む。右手に川の流れを見て、ぼんやり走っていると林道の分岐を見落としてしまいがちだ。分岐を示す目立った道路標識がないのである。付近には何か神社があるようで、朱色の建物が目に入った。 |
峠の石碑 「竜王峠」と大きく彫られてあった |
峠を越えている林道は国道より右に分岐し、直ぐに明神川を渡って未舗装となった。国道の代わりの林道だから、それなりに交通量があるかと思ったが、誰も走っていない。霧が濃いせいもあるが、あまり展望がない峠道であった。
峠はひょっこり現れた。霧の中で路面がアスファルト舗装になり、何だろうと見ると、脇に峠の石碑が置かれていて、それで峠と分かった。国道の分岐点からの距離も標高差もあまりないので、峠越えをしているという実感がなかった。しかしこうして立派な峠の碑があるので、やっぱり峠なんだなと思った。 ツーリングマップには峠名の記載がない。それでそれまで名無しのちょっとした峠かと思っていたが、石碑には「竜王峠」と大書してある。何だか奇妙に感じた。近くに竜王山という山があるが、それで「竜王峠」では何だかうそっぽくも思えた。 |
竜王山は一つの山ではなく、県境をなす山脈上のいくつかのピークの総称だそうだ。西のピークを阿波竜王、東のピークを讃岐竜王などとも呼ぶらしい。山脈を東に続く大滝山との間には、県道が通る相栗(あいぐり)峠がある。竜王峠は山脈を西に続く大川山との間にあり、比較的竜王山の近くに位置する峠だ。更に西には寒風越、三頭越、真鈴越などの峠があるらしい。これらは竜王山林道が通る以前からある、古い山道の峠だったようだ。
竜王峠を徳島県側に下ると直ぐに、左に竜王山の山頂近くまで登る道を分岐する。そちらには森林公園や青少年野外活動センターなるものがあるようだ。それで徳島県側の道は下からずっと舗装済なのだろう。 徳島側では霧が少なくなった。麓の美馬町の景色が眺められる。時期は1月初旬。冬枯れた落ち着いた眺めであった。 最近電子メールを頂いた方から、竜王山林道は全線舗装になったことを教えていただいた。それと、新しく買い換えたツーリングマップルを見ると、なんと国道438号にはトンネルが開通していた。三頭トンネルと言う名前からして、三頭越の下あたりを通っているのだろう。
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