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大 峠 (前編)
 
おお とうげ
 
ここにも楽しい「大峠」がひとつ    大峠(後編)

 
大峠
大峠 (撮影 2000.11.19)
手前が山梨県大月市真木(まぎ)側、奧が同市小金沢側
道は林道真木小金沢線
 

久しぶりに訪れた大峠の道 (撮影 2000.11.19)
県道が真木川を渡る
 この大峠は、ここ数年思い出すことがなかった。自宅から一日で行って来れる所にあり、林道の楽しい峠道なのだが、葛野川発電所建設工事の為、峠の小金沢側が完全通行止だったからだ。
 大峠へは、山梨県大月市の市街地を東西に通る国道20号・通称甲州街道より、北へ分岐する真木(まぎ)温泉を通る県道510号に入る。そのままずっと走ると峠まで行けるのだが、峠を少し下ったところで、監視員付きで通行止になっていたのだ。抜けられない峠道となると、その魅了は半減する。行く気もなくなり、とんと忘れていたのだ。
 それが最近、電子メールで通れるようになったよと教えてもらい、こんな近場にも楽しい大峠があったのだ、思い出した次第である。そこで、雪が降って通れなくなる前にと、11月下旬のいい天気の休日に、早速出掛けてみたのだった。
 
 都心から国道20号を行くと、大月市街を抜け、中央道の大月ジャンクションをくぐり、それから1Kmほど先の信号(真木入口?)で右折する。そこは国道がちょっと上り坂で、左にカーブしているので、右折がしにくい分岐だ。いつも苦手としている場所である。
 ちょうど先頭で信号待ちになった。右折車線がないので、後続車はずっと待たされることになる。プレッシャーである。信号が青に変わった時に、対向の先頭車がパッシングした。道を譲ってくれたのはいいが、最近ジムニーのエンジンの調子が悪い。思ったように加速してくれない。やっとのことでのろのろ右折を完了した。冷汗ものである。何とか修理しなくては。

 峠へ続く県道は、暫く真木の集落内を通る。家の軒先や塀が、道路の直ぐ脇まで迫り、くねくね曲がっている。こういう昔からの集落内の道は、やたらと狭いくせに通行する車は意外と多い。険しい未舗装林道などよりよっぽど走るのに気を使う。
 左手に「真木温泉」の看板を見る。ここは冷泉で沸かし湯だそうだ。更に右手に橋倉鉱泉への狭い道を分岐する。橋倉鉱泉から金山鉱泉への道と走り繋いで、大月市街地の国道20号へ出られる。但し、逆に大月市街からこの道を来ようとすると、ちょっと分かりにくい。
 集落を過ぎると皮肉なことに、2車線路の快適な道となる。紅葉の景色が広がり始めた。


なかなか紅葉がいい

道路の左の谷は真木川
対岸に旧道が通っていて、古い橋も架かっている
わざわざ引き返し、旧道を通ってみた

 

真木小金沢林道の起点
いろいろな看板が並ぶ
 県道を詰めると、真木小金沢林道が始まる。真木川の右岸に渡る橋の手前に、林道標識や工事看板などが立ち並んでいる。林道標識は有り触れているが、「当林道は11人乗り以上の車両の通行はできません」という看板が面白い。また次の通行規制がある。

通行規制

この林道は、時間降雨量10ミリ連続降雨量50ミリ以上及び冬期間は事故防止のため通行止となります

 気になるのは次の工事看板。

真木小金沢林道
車両通行止めのお知らせ

深城ダム原石山工事の為
ここから 19Km先より700m区間まで
期間 自平成11年 1月20日
    至平成14年 3月31日
時間(下記時間のうち20分間実施)
   1回目  9:00〜10:00
   2回目 11:00〜12:00
   3回目 14:30〜15:30
   4回目 17:00〜18:00
  但し、日曜日は除く

 僅かな時間通行止だが、これからまだ2002年まで暫く不便するかもしれない。

 林道標識の看板を過ぎ、橋を渡って左側に、何やら鉱泉のような建物がある。その直ぐ先でゲートだ。これを過ぎると、もう人家はなくなる。

 
 真木小金沢林道と言っても、今はもう全線舗装の道である。それも先の電子メールで教えてもらっていた。発電所工事による通行止が解除され、また通れるようになったのはよかったが、そこはそれ、やはり無事では済まされなかったのだ。
 発電所工事と共に道も改修され、早くから真木側が舗装されてしまったのは知っていた。問題は小金沢側である。記憶では、小金沢側の方が険しい林道だった。それがどの様に変わってしまっか、気になるところである。
 以前の大峠の道を写した写真はないかと、アルバムをいろいろ探してみたが、なかなか見付からない。峠道というものは、こんなにどんどん変わっていくものだと知っていたら、もっと沢山撮っておいたのに。残念なことをした。
 それでもやっと一枚、1992年に撮ったパノラマ写真を押入れから見つけ出した(下の写真)。真木側より峠に登る途中の風景である。路面は今にも舗装される直前で、まだ泥に覆われている。真冬とあって山の斜面に雪が少し見られる。この時はこの先で土砂崩があり、残念ながら峠越えできずに引き返している。

以前の峠の標識 (撮影 1994. 8.14)
現在より背が高い
 
未舗装当時の真木小金沢林道 (撮影 1992. 2.10)
前方の山肌を右上に登る道は奈良子林道
 

下の道は奈良子林道
上に少し見えるのが大峠への道
 真木小金沢林道は、峠に着く前に幾つかの林道を分岐する。大きいもので、奈良子林道が右に、その先で焼山沢真木林道が左に分岐している。
 焼山沢真木林道は、いつ来ても入口のゲートが閉まっていて通行止だが、奈良子林道は、いつの頃からか入れる様になっていた。入口には林道標識も何もなく、行き先どころか、道の名前さえも分からない。ただの行止り林道かと思っていたら、何と通り抜け出来る道だった。
 ある時、松姫峠に通じる国道139号より分岐し、奈良子集落の脇を抜け、そのまま奈良子林道をのこのこやって来ると、ヒョコリそこに出た。以前の奈良子林道は、途中が未開通だった様だが、今は通り抜けられる林道として生まれ変わった。ちょっとした峠越えもあり、なかなか険しい未舗装林道である。ジムニーでさえも、通行を断念した時がある程だ。この奈良子林道は、いつかホームページ「峠と旅」でも取り上げてみたい。
 

振り返ると富士が望める
焼山沢真木林道の分岐を過ぎて直ぐのところ
写真は70mmの望遠

通り掛る車はちょっと止まって、
富士を眺めていく
 
 久しぶりに大峠の道を登ってみて、改めて気付いたことがある。富士が見えるのだ。こんなに綺麗に見えたのだろうか。空気が澄んだ初冬で天気もいいという、好条件が揃ったせいもあるだろうが、なかなかのものである。三脚を立てて望遠カメラで狙っている本格的な人もいるが、通りかかる車は大抵ちょっと止まって眺めていく。実は大峠からも富士は見えるのだが、林が邪魔をしてあまりよく見えない。富士を眺めるいいポイントは、道路上では1ヶ所だけである。焼山沢真木林道の分岐を過ぎて間もなくの所だ。右手に富士がすっくと立っている。
 ホームページで「日本三大峠」というのを勝手に決めているが、その中に「富士が見える三大峠」というのがある。そこに入れてもいくらいだ。しかし、やや富士が遠いい。肉眼で見るならいいが、普通の35mmのカメラでは、写った富士は全く物足りない。所持するバカちょんカメラで目いっぱいの70mm望遠でも、あの時の迫力が出てこないのが残念だ。
 
 富士が見えるのもいいが、この大峠の道は、思ったより峠道らしくて見直した。以前よりずっとたやすい道になってしまった筈なのに、登っていてこれがなかなか楽しいのだ。景色も広がるし、紅葉もいいし、登り坂もそこそこ
登るし、ヘアピンもまあまあ曲がる。これを峠道と言わずして何を峠道と言おうか、である。こんなに峠道らしい峠道だったっけ?
 以前は、ただただ車を走らせていただけだった様な気がしてきた。峠の小金沢側で通行止だったら、そのままとっとと走って帰ってきていた。あっと言う間に峠の登り下りを終えてしまい、こんなに長い道だったという感触が残っていない。だから写真も残っていないのだ。
 今はのんびり、分岐があったらいちいち入り込み、旧道が残っていればそちらを迂回し、看板があったらいちいち読んで、富士が綺麗なら写真に撮り、眺めが広がれば暫し休憩する、そんな峠の旅である。以前に比べて2〜3倍以上時間が掛かっているんじゃないだろうか。そこかわり、じっくり味わえるようになったということらしい。それで、この大峠の道も、改めて面白い峠道だと思えたのだ。それは、まさしく人間が成長したという証(あかし)なのである。歳をとったのではない(^o^)。
  
 大峠はちょっとした登山基地である。真木側が比較的幅の広い舗装路となったせいもあるのか、峠には登山客の車で賑わっていた。ジムニー1台を停める余裕もない程である。

 大峠は市町村境の峠ではなく、大月市内の峠である。東の雁ガ腹摺山(1,874m)と、西の黒岳(1987.5m)の鞍部に位置する。峠にある登山看板によると、山梨百名山である雁ガ腹摺山まで、峠から1時間である。また、山梨の森林百選、黒岳の広葉樹林の黒岳まで、赤岩ノ丸(1792m)経由で1時間30分だそうだ。

 雁ガ腹摺山は、500円札のスケッチ所と、ツーリングマップルにも記してある。車で峠の旅をするだけでなく、そんなことを確かめながら、自分の足で山旅などものんびりしたいものだ。しかし、時間の余裕がない。この大峠を越えたら、ついでにその先にある松姫峠も越えたいと、気が焦っている。歩いて旅をするまでには、もう少し人間が成長しなければならないのかもしれない。


大峠  小金沢側より見る
 

峠には多くの登山客の車が停まっていた

大峠の看板
標高1,560m(書き換えた跡がある)
山火」とは、どう読むのか?
 
 大峠の標高は、大月市消防本部の峠の看板によると、1,560mである。看板を立てた後、標高を書き換えた跡がある。これと同じ様な看板が松姫峠にもあり、松姫峠は1,249.6mだそうだ。松姫峠は小菅(こすげ)村との境の峠で、大峠の方がそれより低い峠とばかり思っていた。何度も訪れた峠であっても、若気の至りか、あちこち見落としていたものである。

 人間が成長したのか、歳をとったのか分からないが、話しがくどくどと長くなった。ここで一区切りにして、後編へ続けるとする。

 
大峠(後編)
<制作 2001. 1.27>

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