|
サラリーマン野宿旅 |
西への長い旅 (Part 1)
王滝村をさまよう
もう5年以上も前のこと・・・ |
厚生年金を国民年金に切り替え、情けないことに健康保険を子供の頃と同じ様に父親の扶養家族にしてもらうよう手続きし、ハローワーク(職安)に行って雇用保険の保険金を申請した。
自己都合退職のため、退職後3ヶ月経たなければ保険金はもらえないのだが、今はそれが唯一の収入源となるのである。余談だがサラリーマンなら誰でも給料明細書で毎月きっちり雇用保険料を月給から天引きされているのを知っている。
僅かな金額とはいえ何ら自分の為にならないので気に食わなく思うだろうが、私は十分元を取ることが出来た。 |
旅の相棒
甲州街道に乗り、西へ走る。諏訪市より有賀峠を越えて辰野町、さらに牛首峠を越えて楢川村で中山道に入る。鳥居峠の旧道が通れるかと探したが無駄で、新鳥居トンネルを抜けて中山道を木曽福島まで来た。
そこより国道を離れ西へ王滝村を目指して進む。長野県王滝村は木曽の御嶽山の南麓一帯に広がる森林地帯を持ち、野宿旅には極めてふさわしいところだ。 |
この旅最初の野宿は王滝村で
焚き火をしつらえて夜を待つ。辺りに人気はない。一番近い集落までも10Km近い道程がある。ただただ静かだ。時折薪が弾ける音が闇夜に響く。焚き火の揺らめく炎を眺めていると、否応なくこれからのことを考えさせられてしまう。
どうやって収入を得ようかということよりも、いったい自分は何をしたいのかが問題だ。こうやって旅をするのは好きだが、年中やっている訳にはいかない。
まあ、まだ旅は始まったばかりで、余計な事を考えるよりもまずこの旅を楽しまなくては意味が無い。ひとしきり焚き火で遊んだ後はテントに入り、ローソクの明かりで地図を眺め、明日の道程をあれこれ思い描いて眠りについた。 |
翌朝いよいよ王滝村の奥深くに車を進める。
王滝村は昭和59年9月14日8時48分、長野県西部に起こったマグニチュード6.8の大地震で御岳崩れの大崩落が発生し、多大な被害を受け、その時土石流という言葉も一般に知られることとなった。 |
王滝村の土石流の爪痕
林道は被害のひどかった伝上川や濁沢の流域一帯に差し掛かった。荒廃地の復旧工事は進んではいたが、その荒涼とした眺めには不気味な恐怖を覚える。
土石流が通過したであろう個所を車で横切る間も、今にも上から土砂が押し寄せてくるのではないかと不安に駆られる。 |
その先下黒沢を渡り、道はさらに三浦貯水池まで通じている様に地図にはあったが、敢え無くゲートで通行止となった。ゲートが無くても入り込む気には到底なれないほど荒れた、ほとんど廃道状態である。
代わりに滝越併用林道というのが左に分岐していた。その名からすると下の王滝川沿いの滝越に通じているようだ。手持ちの地図には無いが、どこかに貯水池まで行ける道が他にあるはずだ。滝越に下りる。案の定王滝川沿いに道が上流に伸びていた。 |
道は支流の上黒沢に掛かる橋を渡り、そこに関係者以外進入禁止とある。ここよりさらに上流の地域は岐阜県との県境を成す森林地帯で、その中心に一般人にはほとんど目に触れることがない三浦貯水池がひっそり佇んでいる。
私の西への旅はその貯水地を眺め、さらにその先の県境の峠、鞍掛を越えて行く予定なのだ。失礼して結界を破らさせてもらう。 |
三浦貯水池遠望
林道は直ぐに川沿いをそのまま真っ直ぐ進む道と、右に急登する林道(上黒沢線?)に分かれた。これからは地図は何の役にも立たない。何しろ貯水池の周りにはほとんど道が記されていないのだ。
自分の感だけが頼りである。もとの御岳御厩野林道に戻ることを考え、右の道を行くこととした。 |
目指すは鞍掛峠。今度は複雑な分岐もなく、途中に看板もあり難なく峠に着いた。ところがそこに待っていたのは丈夫なゲートであった。王滝村に入れないようにするゲートの為に今は王滝村から出ることが出来ない。
峠の先にはすばらしい眺めと楽しそうな林道があるのに残念だ。ところで林道御岳御厩野線の名の御厩野とは鞍掛峠を岐阜県下呂町に下ったところの地名である。するとこの林道名は鞍掛峠を挟む峠道全線を指したものということになる。
しかし林道途中の看板には五味沢林道という名が見られ、また下呂町側は県道何々公園線と名付けられている。御岳御厩野線とはもともとあった古い名なのであろう。
また途中寸断されてしまったこともあり、現在ではこの名は使われないのかも知れない。 |
泣く泣く来た道を滝越まで戻る。その後も往生際悪く真弓峠などを調べて回るがどうしても県境を越えては王滝村を脱出することは出来ず、結局牧尾ダムまで引き返す羽目となった。
昨日から続けて思う存分林道走行を楽しめたのはいいのだが、やや疲れた。王滝村を出たところで食堂に入り、遅い昼食を取る。 |
午後は岐阜県をうろつく内に雨が降り出し、野宿地を見つけるタイミングを失ったまま日が暮れた。
夜の道を何処を走っているかも分からなくなり、途中にあった路肩の工事現場の一画に車を止め、車内泊となった。夕食を取る元気もなく、着の身着のままリクライニングシートを倒しシュラフにくるまる。
軽自動車は狭いので足を伸ばせず寝苦しい。寂しい道を選んだはずだったが、それでも時たま車が傍らを通過し、そのたびにヘッドライトが眩しく気が休まらない。深夜雨足は強くなり、車の鉄板の屋根を叩いてうるさい。
旅の疲れか腹痛に襲われ下痢をする。これから先、旅が続けられるのだろうかと、浅い眠りで夜明けを待った。 |
| (長くなりそうなので、Part2に続きます) |
|
☆サラリーマン野宿旅 トップページへ ☆サラリーマン野宿旅の目次 トップページの目次へ |