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大 峠  (後編)
 
おお とうげ
 
ここにも楽しい「大峠」がひとつ    大峠(前編)

 
大峠の小金沢側の景色 (撮影 2000.11.19)
峠を少し下った所より眺める
左に、何の目的だか、アスファルト敷きの広い広場ができていた。
 

みねばり隧道
こんな狭い隧道が2、3ある
 大峠を小金沢側に少し下る。チョット前までそこにゲートがあった筈だが、確かに今は跡形もなく、無事に通り抜けることができる。
 目の前に広々とした景色が広がる。道を更に下ると、深い谷に入り眺めはなくなるので、じっくり見ておくといい。
 道路の左側に、何の目的で造られたのか分からないが、アスファルト敷きで柵に囲われた、広い広場があった。但し、ゲートが掛けられていて、車は入れない。歩いて入り、柵越しに眺める景色がまたいい。柵の上にGPSが忘れて置かれていた。GARMINのeTrexだ。実は私も持っている。どうしたものかと思ったが、そのまま置いておくことにした。

 左に一般車両通行止の分岐が出てきた。水圧鉄管工区とある。これも発電所工事の一環なのであろうか。

 
 道は下るに従い、谷底深くに入っていく。視界が閉ざされると同時に、真木小金沢林道の難所が始まる。以前は未舗装区間も残り、狭く暗く、一人で走っていると、怖いほど寂しい林道だった。深い山の中に入ってしまったと感じさせられた。
 現在は全線舗装となっているものの、それでも古い舗装路面が残る箇所などは、急坂、急カーブで、以前の険しさを物語っている。狭い隧道も2、3ある。
 でもそんな道を、今は通る車も多い。先ほどから、1台のスクーターと1台のワゴン車とこちらのジムニーが、三つ巴で抜きつ抜かれつしている。3台とも、少し走っては路肩に停めて、キョロキョロ景色など眺めている。ちょうど紅葉が綺麗な時期なので、休日をのんびり過ごしに来たのだろう。
 しかし、お互いに目触りである。あまり広くもなく、数も少ない良い駐車場所を、先に取られてしまう。今回はワゴンにいい場所を取られたとか、今度はこっちが綺麗な紅葉が見れる所を占拠したと、競争である。

小金沢側の景色
視界は段々狭まっていく
 
 ほぼ北を向いていた道が、途中より東に走る谷間に沿って東に進む様になる。葛野川が流れる谷である。

 その谷を下る前に、確か左に分岐する1本の林道があった筈だ。一つの小さな隧道を抜ける直前だったと思う。一度その林道に入り込んだ覚えがある。
 それは、いつもの欲張ったワンデイドライブで、あっちこっし走り回った末、最後に真木側から大峠を越えて帰る積もりだった。帰宅までの残り時間もあまりなく、日の暮れを気にしながら、ちょっと焦っていた。それで、ほとんど本線を見誤り、間違って脇道林道に入り込んだも同然だった。
 マズッたと思いながらも、こうなれば、行けるとこまで行ってやれと先へ進んだ。着いた所は、崖崩れの跡もあるような急斜面に、へばりつく様に造られた道が、ついに行き場もなく途切れたといった感じの所だった。北斜面の暗い谷の中である。一人でいると薄気味悪い。慌ててUターンして、引き返したのだった。

 ところが、その行止り林道の分岐が見付からないのである。まるで、忽然と消えてしまったかのようだ。ツーリングマップルなどの道路地図には、そんな脇道林道はもとから記されていないので、確認のしようがない。何か大きな記憶違いをしているのだろうか。もともとそんな林道はなかったのかもしれない。幻でも見たのだろうか。

 

小金沢側の暗く狭い道
 道を下っていると、道路沿いに工事個所が幾つか現れる。フェンスで囲われ、中に入ることはできないが、これらも発電所建設の一部なのだろうか。フェンス越しに覗いてみると、トンネルが掘られてあったりする。「上葛野川トンネル」などと書かれていた。
 東京電力株式会社の「葛野川発電所野外開閉設備」という建物もあった。敷地内に異様な鉄塔が3本立っている。設備を囲むフェンスの上には、野ザル除けに、高圧電流が流れているとのこと。

 ところで、林道の名前になっている「小金沢」という地名が、道路地図などには見当たらない。あるとすれば、この近辺なのだろう。地名の代わりに「小金沢渓谷」という文字は見られる。
 道はどんどん下っているのだが、谷も一緒に下っているので、道と谷底との高低差は一向に縮まらない。いつまで経っても視界は中途半端なままで、葛野川の流れも見えてこない。やや欲求不満を感じる。

 
 左手に川の流れが見える様になり、道の傾斜も穏やかになる頃、右上に並走して新道が建設されているのに気付く。。間もなく、国道139号に合流する深城である。真木小金沢林道の中でも、この深城附近が一番変わっていく所ではないだろうか。今は通れない新道も、その内通れる様になるだろう。
 深城ダム建設によって一番変わったのは、国道139号・松姫峠の道である。峠の大月市側はほとんど跡形もなく道が付け替えられていく。以前は、松姫峠から降りてきて、葛野川に架かる橋を渡った後、深城集落の狭い石垣の間を通る道に左折しなければならなかった。間違って直進すると、真木小金沢林道に入ってしまう仕掛けだったのだ。知っていて直進すると、後続車が誤って一緒に付いて来ることもあった。
 その深城集落の高く狭い石垣の切り通しが、今はコンクリートの壁で塞がっている。見上げるとその上を新道が通過していた。何となくショックであった。最初見た時それと気付かず、あの石垣の切り通しを求めて、辺りをうろうろ探し歩いてしまった。
 深城集落には、もとは数軒の民家があった。それも、1996年頃にはどこかへ移住し、無人となっていった。今は、僅かに残る石垣の一部が、深城集落の跡を留めるばかりである。
 

以前の深城附近の様子 (撮影 1997. 7.27)
手前が国道を松姫峠方面へ、道を左が国道の続き
前方は真木小金沢林道
この時はまだ、通行止

最近の深城附近の様子 (撮影 2000.11.19)
左に曲がる以前の国道は塞がれている
その上を真木小金沢林道の新道が通る
 
 こうして大峠の道を思い返している今は、真冬の1月ということもあり、折りしも外は雪が降っている。今回の冬は例年になく雪が降る回数が多い。林道看板にもあったが、大峠の道は冬期通行止でゲートが閉められているかもしれない。それでなくとも、この雪では通行は困難であろう。もう暫くして春になったら、また出掛けてみようと思う。近場にいい峠道があるというのは嬉しいことだ。ちょっと気が向いたら直ぐに行って来れる。今度こそ幻の脇道林道を探し出そうと思う。
  
大峠(前編)
<制作 2001. 1.27>

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