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車で登って来られて、これだけ雄大な眺めが見られる峠は、他にそうそうあるもんじゃない。
ホームページ「峠と旅」では、「日本三大峠」というのを勝手にやっている。いろいろな三大峠があるのだが、その中に「絶景三大峠」というのがある。車やバイクで行ける峠の中から、絶景が眺められるものを三つ選んでいるのだ。 そこに挙げたのが、北海道の美幌峠とこのしらびそ峠である。美幌峠からは屈斜路湖が一望の元に眺められ、しらびそ峠と共に、絶景三大峠と呼ぶにふさわしい峠であるのは間違いない。(問題は三番目の絶景峠で、これがどれにしたらいいか迷っている。) |
![]() 直進は国道 152号通行不能 右へ 大鹿、しらびそ高原 |
![]() 右へ 15Km しらびそ高原 5Km 大平高原 左の国道152号の方が狭い道だ |
しらびそ峠へは、長野県の上村の中心を通る国道152号の程野というところより、東に分岐する遠山併用林道を登る。林道といっても現在は立派な舗装路である。
国道152号は、上村と北隣の大鹿村との境である地蔵峠の上村側で未開通となっていて、この遠山林道の一部が、国道未開通区間のバイパスにもなっている。 しらびそ峠への登りの半分くらい来た所で、左に地蔵峠へ続く蛇洞沢林道が分岐する。飯田営林署の手によって昭和43年に開設された遠山林道に対し、この蛇洞沢林道は昭和50年代以降に遅れて開削されたようだ。国道を繋ぐ林道にしては歴史が浅く、10年くらい前に通った時は、まだ地蔵峠までずっと未舗装だった。しかし、現在はこの林道も全線舗装である。 |
![]() 左は地蔵峠を経て 大鹿村 21Km 右は しらびそ高原 7.5Km 右手前は国道152号へ下る |
![]() 地蔵峠への分岐を過ぎて、少し登ってきた所 |
![]() しらびそ山荘が見えてきた |
![]() 国立公園南アルプス登山口 しらびそ峠 標高、1833米 長野県下伊那郡上村 |
国道からの分岐より十数キロで峠に着く。そこに来て初めて南アルプスの眺望がドーンと広がり、それを目にした時の感動は大きい。峠の標高も1,833mと高く、谷を一つ隔てて雪を頂いた赤石山脈が、本当に目の高さに手が届くように望める。
ただ、下の国道から峠までの距離がなかなかある割には、峠までの道の味わいがあまり感じられない。峠道としての記憶もほとんど残ってないのだ。 道がよく整備されていて、走りやすく、時間的にも短くて済むことが理由だろうか。それと、着いた峠からの景色が強烈過ぎる分だけ、それ以外の印象が薄くなるのかもしれない。 |
峠を越えた東側には、北又沢の上流、大沢岳の山麓まで未舗装林道が下っているが、そこで道は行止りである。車ではどこにも抜けることはできない。
しらびそ峠を越える林道(しらびそ峠線とも呼ばれるようだ)は、当初、木材搬出の道として切り開かれた。開削当時、峠周辺はしらびそ(マツ科の常緑樹)の原生林に覆われていたので、この名がついたようだ。 |
![]() 峠を越えた東側 未舗装林道が谷へ下っているが この先通行止まり |
![]() 手前は国道方面 左へ峠 直進は南アルプスエコーラインで山荘へ |
峠からは南に向かって更に舗装路が登っている。そして峠から数キロ先の道の頂上附近には、村営の山荘やキャンプ場がある。この周辺一帯はしらびそ高原と呼ばれ、林道開削に続いて、村が観光誘致に乗り出したものである。
営林署も観光誘致に協力し、しらびそ山荘までの道は、蛇洞沢林道そっちのけで、観光バスも通れるように急ピッチで拡張された。 これにより、上村には南アルプス・赤石連峰への登山客が数多く訪れることとなった。登山愛好家にとって、「しらびそ山荘」とか「しらびそ峠」というのは、もうお馴染みなのである。 |
古いツーリングマップ(中部編、発行1988年5月)では、しらびそ山荘から先(南)の道は、記されていなかった。しかし、そのツーリングマップの発行より早いうちから、遠山谷に下る道は完成していたようだ。その名も「南アルプスエコーライン」。
それを知らないものだから、しらびそ峠へは、なかなか行く気にはなれなかった。通り抜けできない峠は詰まらないのである。登山が趣味ではないので、しらびそ山荘までわざわざ往復しても仕方がない。 それが、ツーリングマップルを買い換え、国道152号まで抜けられる周遊道路があることが分かり、やっと昨年(2000年)初めて訪れたのだった。 ただし、「エコーライン」などといっても狭くるしい道で、少し前までは未舗装区間も残していたようだ。ツーリングマップルも恥ずかしくて「エコーライン」とは記載できないでいるようである。もっぱら地元の観光案内図でしか見られない名称だ。 しかし、道からの眺めは良く、交通量も少ないので探訪向きである。また国道に出る手前で通過する、遠山郷の下栗(しもぐり)集落も、なかなか味わいがあっていい。秘境の山里といった雰囲気である。その里の「霜月祭」(本祭12月13日)は重要無形民族文化財だそうだ。 下栗の集落に入ると、道はやや複雑だ。どっちに行っていいか分からない分岐もある。でもとにかく下って行けば、その内国道152号へ出られるだろう。 しらびそ峠からの眺めは、雪をかぶった山並みもいいが、紅葉の季節も素晴らしいと聞く。また是非訪れてみたい峠である。 <制作 2001.
3.13>
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