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峠の標柱 ここは立丸峠、ここより川井 |
立丸峠を越えたのは、真冬の1月であった。東北の冬だから峠道はさぞかし雪深いかと思いきや、路面にも道の周囲にもあまり雪はなかった。東北と言えども太平洋岸にほど近いので、日本海側に比べれば、もとから雪は少ないのかもしれない。
年末年始の休暇に、敢えて東北地方を旅するのは、このときで2回目だった。ただでさえ通行止になりやすい険しい峠道などを旅するのに、冬期は全く適さない時期だ。
立丸峠へは川井村から上った。いつもの峠道行きと違って、雪に注意しての低速走行である。幸い、通る車は全くなく、マイペースで走れるのがいい。しかし、路面ばかり見ていたせいか、後で考えると、峠道の周囲の景色などぜんぜん覚えていなかった。 |
ただし、峠に立っていた標柱だけはよく覚えている。「ここは立丸峠」と「ここより川井」と書かれた、背の高い四角い木製の標識である。峠を示したこのような標識が立っているのは、峠道を旅する者にとって嬉しいことだ。
当時使っていたツーリングマップ(昭文社東北編、1989年5月発行)には、「峠はダート」と書かれていた。路面はまるで未舗装路の様に雪で汚れてはいるが、良く見ると比較的新しい舗装路であった。
立丸峠は、古くは遠野盆地と三陸海岸の宮古
とを結ぶ小国街道が通じる峠であったそうだ。遠野から小鳥瀬川沿いに上り、峠を越え、小国川沿いに川井に下る。更に、川井で閉伊(へい)街道(現在の国道
106号)に出て宮古に至るというルートだ。立丸峠はかつての難所であった。
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峠より遠野市側を望む |
遠野観光案内図(土淵) 「カッパ淵」などが載っている |
峠を遠野市側に下る。遠野は言わずと知れた民話の里である。詳しくは分からないが、この立丸峠が関わった伝説もあるそうだ。
土淵と呼ばれるところまで来ると、早速、観光案内の看板が出てきた。見ると「カッパ淵」などと載っている。 遠野は以前にも立ち寄ったことがあるが、観光地巡り をした記憶がない。どうもそうした名所を訪れる気がしないのだ。「カッパ淵」など多分どの観光ガイドにも掲載されているだろう。どうも観光地化されてし まっていて、ミーハーな人間が集まっていそうな予感がするのだ。誤解かもしれないが、今回も遠野は素通りとする。代わりに東北の冬を感じる峠道を求めて、 先を急ぐこととした。 <制作
2001. 4.24>
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