ホームページ★峠と旅
立丸峠
 
たちまるとうげ  (峠と旅 No.112)
 
峠を越えて民話の里、遠野へ
(今月の峠 2001年 4月、掲載 2001. 4.24)

 
新しいページです ⇒ 立丸峠(再訪) (掲載 2014.12. 8)
  

 
立丸峠 (撮影 1997. 1. 2)
手前が岩手県遠野市土淵町地区恩徳、奥が同県川井村小国
道は国道340号
 

峠の標柱
ここは立丸峠、ここより川井
 立丸峠を越えたのは、真冬の1月であった。東北の冬だから峠道はさぞかし雪深いかと思いきや、路面にも道の周囲にもあまり雪はなかった。東北と言えども太平洋岸にほど近いので、日本海側に比べれば、もとから雪は少ないのかもしれない。

 年末年始の休暇に、敢えて東北地方を旅するのは、このときで2回目だった。ただでさえ通行止になりやすい険しい峠道などを旅するのに、冬期は全く適さない時期だ。
 サラリーマンにとって、貴重な長期休暇を如何に有効に使うかは、最大の関心事である。もっと暖かい地方へ出掛けたほうが、峠道を越えられる可能性が高くなる。でも、冬の東北地方がどんなものか、見てみたかった。自分で車を走らせ、雪国東北の道を体験してみたかったのだ。

 立丸峠へは川井村から上った。いつもの峠道行きと違って、雪に注意しての低速走行である。幸い、通る車は全くなく、マイペースで走れるのがいい。しかし、路面ばかり見ていたせいか、後で考えると、峠道の周囲の景色などぜんぜん覚えていなかった。

 
 ただし、峠に立っていた標柱だけはよく覚えている。「ここは立丸峠」と「ここより川井」と書かれた、背の高い四角い木製の標識である。峠を示したこのような標識が立っているのは、峠道を旅する者にとって嬉しいことだ。

 当時使っていたツーリングマップ(昭文社東北編、1989年5月発行)には、「峠はダート」と書かれていた。路面はまるで未舗装路の様に雪で汚れてはいるが、良く見ると比較的新しい舗装路であった。
 峠からは遠野市側の眺めが広がった。どんよりとした雪ぐもりで、寒々しい景色だった。

 立丸峠は、古くは遠野盆地と三陸海岸の宮古 とを結ぶ小国街道が通じる峠であったそうだ。遠野から小鳥瀬川沿いに上り、峠を越え、小国川沿いに川井に下る。更に、川井で閉伊(へい)街道(現在の国道 106号)に出て宮古に至るというルートだ。立丸峠はかつての難所であった。
 尚、「小国」とは峠の川井村側の地名でもある。「隠れ里」の称がある程、外部と隔絶した山谷を指しているそうな。そうした土地を小さな国に例えて「小国」と呼んだものらしい。


峠より遠野市側を望む
 

遠野観光案内図(土淵)
「カッパ淵」などが載っている
 峠を遠野市側に下る。遠野は言わずと知れた民話の里である。詳しくは分からないが、この立丸峠が関わった伝説もあるそうだ。
 土淵と呼ばれるところまで来ると、早速、観光案内の看板が出てきた。見ると「カッパ淵」などと載っている。

 遠野は以前にも立ち寄ったことがあるが、観光地巡り をした記憶がない。どうもそうした名所を訪れる気がしないのだ。「カッパ淵」など多分どの観光ガイドにも掲載されているだろう。どうも観光地化されてし まっていて、ミーハーな人間が集まっていそうな予感がするのだ。誤解かもしれないが、今回も遠野は素通りとする。代わりに東北の冬を感じる峠道を求めて、 先を急ぐこととした。

<制作 2001. 4.24>
 
峠と旅        峠リスト