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入山峠  (前編)
 
いりやま とうげ
 
東京都にある近場の未舗装林道の峠
 
入山峠 (撮影 2002. 2. 9)
手前が東京都あきる野市戸倉盆掘
奥を右に曲がって同じく八王子市上恩方町(かみおんがたまち)森久保
道は盆掘林道(一部未舗装区間を残す)
峠の標高は約600m
 
 ホームページ「峠と旅」で勝手に決めている「三大峠」というのがある。日本の数ある峠の中から、例えば「絶景三大峠」とか「珍名三大峠」とか、趣向別に三つの峠を選んでいるのだ。その中にある「東京三大峠」の一つとして、この入山峠がノミネートされている(されていると言っても、自分ひとりでそう決めているだけのことだが・・・)。東京都の中にあるバイクや車で越えられる峠として、これはなかなかのものなのだ。「東京三大峠」としては他に和田峠とヤマビコ峠(仮称)を挙げているが、和田峠はずっと以前から、ヤマビコ峠も何年か前に舗装路の峠となってしまっている。それに対して入山峠の道は、近年舗装化が随分進んだと言えども、まだ僅かに未舗装区間を残す林道の峠道なのだ。その点も特筆すべき峠である。
 
 入山峠は東京都の八王子市とあきる野市(ちょっと前の五日市町)の境に位置する。個人的には自宅が近いということもあって、非常に身近な峠道である。週末などの休みにちょっと気が向けば、気軽に出掛けて行ける距離にある。それでいて未舗装林道の峠道で山の雰囲気も十分に味わえるときている。また峠付近は戸倉三山の登山道が通り、山歩きなどにも利用できる道だ。
 

八王子市の陣馬街道、力石付近
 喧騒の大都会八王子市の市街を抜ける国道20号・甲州街道を、追分より分かれて陣馬街道を西へ西へとやって来る。北浅川の直ぐ側に並んで道が走るようになると、「田舎だな〜」と思って心が休まる。車の交通量がグンと少なくなるのも嬉しい。
 
 途中、力石橋とう小さな橋を渡る。昔、私の父が東京都の役人をしていた頃、その橋の認可をする為に訪れたことがあると言っていた。しかし、今架かる橋は当時の物ではなく、橋は新しく作り変えられているようだ。
 
 この付近から人家の間を抜ける道は異常に狭い。対向車に注意だ。しかも時折路線バスが大きな巨体を狭っ苦しそうにしながらやって来る。カーブで見通しが利かない所もあるので、いつ通ってもヒヤヒヤさせられる区間だ。
 
 道はその先で、「夕やけ小やけの碑」の側を通る。碑は道路の右側、やや奥まった所にあり、駐車場がなかった。代わりに道を挟んで反対側に「夕やけ小やけふれあいの里」というのが数年前に建てられた。当初は駐車場が有料だったので入ったことはなかったが、この1年くらい前から無料になったので、早速入ってみる。広い駐車場の先を橋で渡って行くと地元の特産品を売る店やトイレがある。しかし、更にその先はゲートが設けられ、入場料が必要となる。中は花壇や温泉があるそうだが、勿論まだそのゲートを抜けたことはない。
 
 「夕やけ小やけふれあいの里」を過ぎると間もなく、陣馬街道は左折して醍醐川を渡って進み、その先バスの折り返し場がある陣馬高原下を通って和田峠を越える峠道になる。初めて来るとこの分岐はちょっと戸惑う。和田峠に行きたいのに直進しかかる。しかし、直進は狭い道なので、おかしいと気付く。入山峠へはこのおかしいと思う方を進む。
 
 道は直ぐ左に醐醍川を見て進む。沿線には人家がポツリポツリと立ち、こんな奥まで人家があるのだなと驚かされる。道は狭いが地元民の重要な生活路だ。やがて前方の小高い丘の上に龍泉禅寺が見えると道は川を渡って右岸を走るようになる。間もなく右に橋を渡って道が直角に分岐する。ここが入山峠を越える盆掘林道の八王子上恩方町側起点である。
 

上恩方側の林道起点 (撮影 1998. 6. 7)
醍醐川を渡る

林道起点にある道路標識 (撮影 1998. 6. 7)
林道 盆掘線 起点 東京都」とある
 
 林道が分岐する前の本線上には道路標識はないが、林道に入れば直ぐに標識が立っているので確認できる。自宅からはあきる野市側よりこちらの方が近いので、大抵ここから峠を目指すことになる。しかし、入り口には時々通行止の看板が出ていて、ガッカリさせられることもままあった。特に何年か前に峠のこちら側の舗装工事が進められている時は、通れないことが多かったように記憶する。
 
 林道入り口近くに森久保集落の人家が僅かに立つが、それを過ぎるともうひと気のない道となる。沢筋から直ぐに離れてどんどん登って行く。
 
 以前はあきる野市側に負けず劣らず、この八王子側ももっと険しい未舗装区間が多く残っていたような気がする。でも今は峠まで完全舗装済みである。所々狭い区間もあるが、それ程走り難い道ではなくなった。
 
 昔はオフロードバイクの通行が多かったように思う。何しろ東京都内という近場にあるのだから、ちょっと腕試しに未舗装林道を走りたいという若者が多く訪れたのだろう。最近はあきる野市側の舗装も進みつつあり、もうダート走行を楽しめるという峠道ではなくなった。そのせいかあまりバイクを見かけない。私も1、2回はバイクで越えたことがあるが、最近はもっぱら車である。車で越えるには静かで落ち着いた峠道になった。

八王子側は完全舗装の峠道
 

先の左カーブの右側より登山道分岐

トッキリ場への登山道入り口
 
 途中、道路の右脇より登山道が始まる。そこに立つ標識には、来た車道方向に「森久保0.8Km」とあるが、登山道方向に示す文字はほとんど読めない。辛うじて「鳥切場(分岐)0.6Km」とあるようだ。
 
 トッキリ場(鳥切場とか鳥屋切場とも書くようだ)は戸倉三山の中の市道(いちみち)山と刈寄(かりよせ)山の間にある分岐点である。多分その登山道はこの車道の先にある入山トンネルの上を越え、あきる野市との境になる稜線方向に出るのではないかと思う。
 

車道は大きく迂回してドンドン登る

入山トンネルが近い
 

入山トンネルを抜ける
 クネクネと右に左にと景色を広げながら、道はドンドン高度を上げる。峠までの中間くらいまで来ると、入山トンネルを抜ける。ここはまだ峠ではない。
 
 この峠道を訪れるようになったのは10数年前からだが、その時には既に林道は開通していた。しかし、当時買った道路地図には、まだこの入山トンネルが記されてなく、トンネルから峠までの区間は未開通を示していた。
 
 多分、入山トンネルとその先の峠までの車道は、比較的最近になって開通したものと思われる。入山トンネルも見た目にはそんなに古い物には見えない。
 
 入山トンネルを過ぎたくらいから道の勾配はゆるくなる。道の左手はもうあきる野市との境である稜線が近い。峠に着く前からこのように稜線に沿って進むのは、峠道としてはちょっと不自然である。
 
 一方、稜線とは反対側の東面方向に眺めが広がる。この林道中、一番の眺めだろう。都心方向を向いているのに、なかなかの山深さである。近くに車をとめるスペースがあまり十分ではないが、ちょっと立ち止まって楽しみたくなる眺めだ。
 
八王子方面の眺め
なかなかの山深さ
 
 ここでは林道の峠を入山峠と呼んでいるが、本来の入山峠は別にある。林道の峠と入山トンネルの間の、やや林道の峠よりの稜線上だ。そこより東方には入山川が流れ下り、その下流に八王子市小津町(おつまち)の入山とう集落がある。現在、入山より小津林道が伸びてきているが、途中より車の通れない山道になっているようだ。確認してみたいが、現在の小津林道は車の進入が禁止となっている。
 
 多分、本来の入山峠とはその名前からしても、小津町入山から登って来る山道の峠だったようだ。その後、上恩方町からの林道が開通し、車道は元の峠道を横切って、もう少し北に寄った所で峰を越えた。最近の道路地図や登山地図を見ると、車道の峠を入山峠、本来の峠を「旧入山峠」と呼んだりしている。元からあった入山峠に近いから、後からできた車道の峠も入山峠としたまでの話しのようだ。

小津町(おつまち)入山の小津林道入り口
進入禁止
 
 そう考えれば、八王子側の車道が稜線近くを長く走り、峠道としてはちょと変則的であるのも納得がいく。本来の入山峠の峠道とは、全く道筋が異なるのである。それにしても、入山集落を通らない車道の峠を入山峠というのは、ちょっと抵抗がある気もする。
 
 車道を通りながら本来の峠道はどこだろうかと、ときどき注意して走ったこともあるが、なかなかその場所がはっきりしない。林道開通に伴って、旧道はほとんどかき消されてしまったかのようだ。
<制作 2002. 7.17>
 
入山峠後編 へ続く
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