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安倍峠   山梨県から峠を越えて梅ヶ島温泉でひとっ風呂 (峠と旅 No.001)
(掲載 1997. 6.20)


 山梨県から静岡県静岡市に抜ける峠道としては大笹峠(山伏峠)越えが絶品であるが、もう一つこの安倍峠越えも見逃せない。山梨県身延町と静岡市の安倍川最奥の梅ヶ島温泉を結ぶ豊岡梅ヶ島林道である。

 安倍峠は昔、武田信玄が金を山梨に運んだと言われる峠だそうだ。

 豊岡梅ヶ島林道といっても梅ヶ島側は完全に舗装されている。峠には開通記念碑があり、律義にもその真ん前で静岡側の舗装は途切れている。打って変わって身延町側は林道の名に恥じない未舗装路となる。所により荒れ方もひどい。

 静岡から梅ヶ島の温泉に来た帰り、何も知らずに山梨県に抜ける道があるようだから行ってみようなどと、軽い気持ちで来る普通乗用車のドライバーが居る。すると峠を越えた瞬間、顔を引きつらせることとなる。 時々そうした車がでこぼこ道に車体を大きく揺らされて、のろのろ走っているのを見かける。

安倍峠
安倍峠
   

 ある時山梨側から登り、もうすぐ峠という所で例の類の乗用車がこわごわ下りて来た。道の端に除けて止まって待っていると、すれ違いに相手の車も止まり、運転席の窓から一人のご婦人が不安そうな面持ちで聞いてくる。 「この道はまだ続くんですか?」。私は正直に「ず〜っと続く」と教えてあげる。

   

豊岡梅ヶ島林道
豊岡梅ヶ島林道の山梨側  未舗装

 身延町側の道は楽しい。ただ未舗装ということだけでなく、如何にも険しそうな山岳道路といったロケーションがいい。眺めもよい。途中何個所か富士山がよく見える所もある。

 また大城川の河原などが、よい遊び場にもなる。

 ただ残念なことに舗装工事の魔の手は徐々に伸びつつある。ところどころ舗装に侵食されている。

富士山
富士山の眺め
   

 身延町側からの林道入口は大城である。国道52号から入り、大城集落を抜けると間もなく未舗装路となる。国道から数Kmですぐに未舗装になるのが嬉しい。しばらく大城川沿いを進むが、部分的に川の岸壁にへばり付いた狭い道を通る。思わず気が引き締まり、さらにこのあと続く林道の険しさを想像させる。未舗装林道と知らずに来た者なら、先に進むのをためらわずにはいられない。 

 当然ながら冬期通行止である。12月1日から翌年5月中旬までと標識にはある。梅ヶ島温泉から少し登った所にしっかりしたゲートが掛けられ、どうやっても通れない。 

林道入り口
林道入口
   

 峠を越えて梅ヶ島温泉側に下ると、完全舗装で拍子抜けする。温泉に来たついでにのんびり散策している人たちも見掛ける。温泉まであっという間に辿り着く。

 梅ヶ島温泉で安倍川沿いの道に突き当たり、その道を右折して川沿いに少し溯ると、川の反対側に2階建ての建物がある。共同浴場の静岡市梅ヶ島温泉浴場である。 市営なのにやや料金が高い(1995年10月現在大人430円)が、ここまで来たついでに入っていくといい。駐車場もある。ただ静岡市街までは安倍川沿いの長い下りがまだ残っている。

梅ヶ島温泉
梅ヶ島温泉
   

 安倍峠の道をまだ山梨県側の舗装が進む前に通れたのは幸運だった。しかしその後訪れる度に様子が変わっている。最後には観光道路になってしまうのではないだろうか。いつまでもおばさんが顔を引きつらせる様な道であって欲しいものだが。
   

安倍峠Part2

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